Ⅹ - 人皆旅人

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◇ Ⅹ - ⅱ ◇

 学校にて大統領(雲雀恭弥様)の毒牙に殺られたオレは、暫く保険室で休んだ後、ツナ達に見送られるまま、帰路に付いた。帰路といっても公園へ向かった訳ですが。


 学校での出来事が、思いの他疲労になっていた為か、フゥ太達と遊んでいても、彼等にまで心配される始末。よほど顔色が悪かったのか「今日はもう帰ろう、時兄ぃすっごい顔だよ」と言われてしまい、もう駄目だ。


 そして、ふらふらの足で空が赤みを帯びる前に、沢田家へ帰宅。


 道中、ランボに喧嘩売られたり、イーピンが心配してくれたり(中国語でさっぱりだったけど)まあ、なんだかそれなりに気分も回復して、後は身体だけだ、と只今自室(仮)にて休憩中だ。

 部屋中に音楽を響かせたかったので、枕元に置いてある携帯に音楽プレイヤーを繋げれば、小さなスピーカーから部屋全体に緩やかな音楽が浸透して、オレの心も少し和らぐ。そういえば、外では下手に音楽かき鳴らすな、とリボーンに言われた。多分、他所の世界の音楽だからだろう。


 ああ、それにしても、今日は最悪だった。
 暫くプレジデントには会いたくないな。


 ……なんか呼び方が豪華すぎて、ムカ。……いや、オレが呼んでいるのだけれど。駄目だ。奴には、何をどうしても勝てる気がしない、負ける気しかしない。そもそも、学校て、貴様。

 と、音楽に包まれながら、うつ伏せになっていた体を反転させて、今日の不運に意識を向ける。見えるは天井、頭に浮かぶは偽造書類、もとい、入学手続きの紙。


 オレの筆跡以下略。


 じゃなくて、学校だ学校。

 二十歳にして二度目のスクールライフだなんて、なんだかとっても悲しい状況だが、某眼鏡探偵のように、黒尽くめの何たら、と戦う訳ではないし、何より、小学校じゃない、というのは大分とましだ。小学校は正直、無理だ。ジェネレーションギャップとか、心が汚れすぎたとか、でなんかもう無理。小学校に変態を投下するようなもんだ。止めてくれ。

 その辺りを鑑みれば、中学校だし、色んな意味まだ余裕だ。ボンゴレズいるし、京子ちゃんいるし、あ、花さんもいる。いいな、素晴らしい、二次元が三次元化……何か疑問が浮かんだけれど、深く突っ込むのは止めにしよう。

 後は、勉強の方だけれど、それはもういい。昔やったから、捨て置く。
 そう考えると、なんと素晴らしい学園生活だろうか。

 大統領から『並中へ通え』と言われた時は正直焦ったが、今となると以外に、良い話だったのかも知れないと思える。感謝の気持ちは、是非とも丑の刻参りに、藁人形を持参して、神社でたっぷりさせて貰おう。くはははは。覚悟しろ、大統領(米国のではなく)。


 ………………。


 あ、そういえば、明日からって、制服どうするんだ。ブレザー……洒落ててなんか、むず痒い。オレの柄ではない。教科書は……別にいいや。元の世界に帰るまで、の中学生活か。せめて……夏まで。


 そんな、夏の中学校の所で、オレの妄想は止められた。
 綱吉君の妨害だ。おのれ、中々やりおる。


 帰って来たツナに、気分はもう平気か、と優しさサプリメントを受け取りながら『お帰り』を言えば、先ほどずっと考えていた、制服等々、学校に通う為に必要な物が入った紙袋を渡された。浮かれながらに「何でツナが?」なんて、袋を覗き込んみながらに問えば。


 頼まれた……と、意気消沈。


 しまった地雷原フルマラソン。ごめんね、今日のデザート、オレの分上げるから。キッチンのテーブルに突っ伏すツナに、昼間とは逆の位置になる。それを言えば、本当だ、と、ツナが笑ったので、オレも笑った。


 やっぱ、和む、沢田家長男。


 その後、暫く学校の話題を続けて、そう言えば、オレのクラスは何処になったのか? それを聞けば、ツナ達と同じクラスとの事。まさか、閣下が気を利かせた訳もないだろうが、嬉しい限りなクラス割り。確か、ツナ達のクラスは一年A組、と学校の先生が言ってた。まだ一年なようだ。

 話のどの辺だっけ?

 とか考えながら「テスト見せ合いっこしような」なんて、果たして今の中学生がするのか分からない、中学生発言を一応してみる。それにまた、ツナ苦笑。「何時の時代だよ」さっそく、ジェネレーションギャップ、キタコレ。


 しかし、こんな風にツナと話していると、不思議な気分になる。


 元々、オレにとっては漫画の世界だったのだけど、そんな感じは全く無い。むしろ、本当にあの漫画と同じ人物達なのか、同じ世界なのか、と思うほどだ。それほどに、彼らは、彼らとして、そこにいるだけだった。

 どちらかと言えば、オレの存在の方が、いっそ怪しいかもしれない。

 この世界の人間じゃないから、と言うか、なんと言うか……『この世界に居る筈のない人間がこの世界に居る』……と言うのが、どうにも規約違反、と言ったら変な話になるけれど、つまりはそんな感じなのだ。


『違う世界に居ること自体が間違っているんじゃないか?』


 感覚的な問題だ。

 オレは、この世界で生まれた訳じゃない。
 オレは、ここで生きてきた訳じゃない。
 オレは、そもそも、この世界にはいない。

 不安ではない……訳がない。
 知らない土地なんてレベルじゃない。世界が違うのだ。
 そんな場所で、不安じゃない訳がない。言ってしまえば、怖い。

 だけど……彼らがいる。

 紙面上で活躍を見てきた、年下の癖に格好の良い彼らがいる。漫画の世界だからこその格好良さを見せていた彼らがいる。普通じゃ絶対に、交流が出来ない存在だったはずの彼らが、今、目の前にいる。

 ただそれだけが、ちっぽけだけど、嬉しくて。

 笑いかけてくれる、ただそれだけが、些細だけど。
 ちゃんと『オレは、ここにいるのだ』と……感じられた――――

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