Ⅹ - 人皆旅人

◇ Ⅹ - ⅳ ◇

『――――それじゃぁ、始めようかの』

 一面が黒色の真っ暗な空間で、水音と、人――老人男性の声が響いた。

『コレは……そうじゃの、お前さんの紡ぐ物語じゃ』
『お前さんが、強くなる為の物語』
『彼等じゃなく、お前さんの物語』

 何処かで聞いた覚えがある声が、四方から反響する。
 複数人いる様に感じるが、声は一つだ。

『ツラーイ、辛い、物語になるやもしれん』

 ……辛い?

『じゃが』
『“辛い”を乗り越えんと、人は強くなれんのだろ?』
『なぁ、人の子よ』

 ……ああ、そうだ。
 傷ついた分だけ、みんな強くなる。
 綺麗なままじゃ、それで終わりだ。

『じゃったら、見せておくれ』
『お前さんの物語』
『お前さんの、紡ぐお話を』

 話……生き方、だろうか? 人生だろうか?
 はは、だったら、ちょっと変な話になる。
 オレはもう“ここ”で生きているじゃないか。

『……そうか』

 ……そうだ。

『ふぉふぉ、じゃあ、頑張っておくれ』
『楽しみにしておるよ、人の旅人……いや』
『“イレギュラー”の、旅人さん……ふぉ、ふぉ、ふぉ』

 黒い空間の中で、白い人影が、とんと跳ねて。
 緩く……笑った気がした。


 ああ……それにしても。


 辛くない人生なんて、ある訳ないじゃないか。
 変な話だ。

08/??/??Re:10/05/30 ************** Next Story.

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