ⅩⅩⅩⅩ - 人皆旅人

◇ Ⅹ - ⅱ ◇ ⅩⅩⅩ ◇

 あの日から、数日が過ぎた。
 短い日数な気がするけど、感覚的には結構長い。


 あの日――“アイツ”が時を、本格的に襲った、あの日。


 時達を探して探して、町外れの廃屋でやっと見つけた時は、背筋がぞっとする光景が目に飛び込んできた。血まみれでへたり込んでる時に、金色の飴細工みたいな奴に、首を締め上げられているお兄さん。

 助けようと、すぐに駆け出そうとしたけど、次の瞬間には、やたら眩しい白い光が、視界を覆ってしまって、反射的に動きが止まってしまった。目が開けられるようになった後に見た光景は、どう反応したらいいか分からないものだったけど、とにかく、身震いがしたのは確かだ。

 お兄さんは咳き込んでいて無事な様子だったけど、咳き込みながらも駆け寄った、その人物に、オレは絶望みたいな感覚に襲われた。


 力無く、血溜りの中でうな垂れる、時の姿。


 血まみれだから、っていうのもあるけど、何よりも、一瞬前までオレの目に映っていた時の姿は、確かに、生きているものだった。だるそうにへたり込んではいたけど、意識もあって、少しだけ視線も交わしたような気もする。


 だけど、あの時の時は本当に……死んだみたいに、ぐったりしていた。


 ぞっとした。

 心臓の辺りが、きりきりして、喉の奥に何かがつっかえて、立っているのも精一杯で、頭がくらくらして、まともに息も出来ない感じ。


 今にして思うと、あれは『怖い』って事だったんじゃないだろうか。


『誰かがいなくなった怖さ』……なんて、本気で味わった事がないから、良くは説明も出来ないし、確信を持って説明も出来ないけど……たぶん、あれは間違いなく“そう”……なんだと思う。

 息も脈もあったけど、シャマルのところに連れて行って処置してもらっても、息も脈も、両方ずっと弱いまま。傷は処置できて、輸血もしたっていうのに、今にも消えてしまいそうな、時の命。

 次の日になったら、きっと、すぐ目を覚ますと思った。
 二日経ったら、馬鹿っぽい台詞を吐きながら笑っている。

 三日経ったら。
 四日経ったら。
 五日経ったら。
 過ぎて、過ぎて、過ぎて……そして、今日――――

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