◇ Ⅹ - ⅲ ◇ ⅩⅩⅩ ◇
「今日は起きてるかなあ……時」
片手に下げたコンビニ袋を、ぶらぶらとさせながら、呟く。「大丈夫っすよ十代目! その内、ふらっと起きてきますって!」
オレの呟きに返事をくれるのは、言わずもがな獄寺君だ。
「そういえば、獄寺君聞いた? その、あの……事件の話」
「へ? ああ、例の“あれ”っすか? なんかあったんすか?」
「うん、ディーノさんとリボーンが言ってたんだけどさ――」
「無かった事……っすか?」
「う、ん……オレも良く分からないんだけど、なんか……襲われた、って言う女生徒とか、事件現場で時を見た、とか言ってた人達が『そんなの知らない』なんて事を言い出してたんだって」
「は、あ、なんすかそいつら。都合いい事抜かしやがって……」
「やっ、そうなんだけど、さっ」
「え、ええっとっ、あの、ほんとオレも良く分かんないんだけどさっ、なんか、その人達だけじゃなくて、他の……事件に関係ない、事件にニュース流した報道とか、そのニュース見た人達とか――言っちゃえば、全部の人から、事件の記憶だけ消えちゃってる感じ、らしい……よ」
「……そいつは妙な……」
「ね、ねえっ、変、だよねえっ」
「――――あ、山本」
「お。よお、ツナ、獄寺! 昼飯食ったか?」
「どんな挨拶だ野球馬鹿」
「ははは! おもしれえなあ獄寺! 挨拶じゃねーよこれ! 親父が寿司たくさん握ってくれたっからさ。ついでにお前らも食うかな? ってな」
山本の言葉に、イライラし始めた獄寺君は、見なかった事にする。
「まっ、まあ、じゃあ、とりあえず中入ろうか? 時の顔も見たいし」
「お、そうだな。わりーな足止めしちまって」
「いいよ、いいよ」