ⅩⅨ - 人皆旅人

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◆ Ⅸ - ⅲ ◆ Ⅹ ◆

「馬鹿にしてんのか? 分かるに決まってんだろ! つーかそんなの誰が見ても分かるっての! 花瓶に花が生けられてんだよ! お前馬鹿か?」
「うんYES、正解だ、正解なんだが……さあ再び山さん。この花はな~んだ? 花の名前を答えてみよう。ヒントはベルサイユ」

 と、自分の机にある花――真っ赤な花びらのそれを指差し質問。

「うん? 花? ……えっと……バラ……だよな?」
「うん薔薇。真っ赤な薔薇。真っ赤な薔薇が一輪」
「……? な……何が言いたいんだ??」
「うん」

 オレ吃驚しちゃったんだよ。花瓶に生けてあるのが、真っ赤っ赤な薔薇様なんだもの。オレ頑張ったよ? これは棘で怪我させようって魂胆なんだ、って。でも、花屋さんでワザワザ買って来て棘取って貰ったのか、この薔薇様つるんつるんでさ。

「オレさ……前にも言ったんだよね」
「????」
「やるなら徹底しろ……ってさ」
「あ……ああ、あれか」
「もう時さん吃驚しちゃってさ。何かなこの薔薇、オレどう反応したらいいんだろうか。もうやってらんねーよ。正解が見えない」
「…………?」
「……お、おい山本。そいつ大丈夫かよ」

 いじめっ子にまで心配されてしまった。
 だが仕方がない。この状況を招いた君が悪い。
 だが教えてあげよう。今後の為、この間違いは正さなければならない。

「……何で薔薇かな?」
「「…………は?」」
「ここは菊だろJK」
「……へ?」「じぇーけー?」
「葬儀の時の花は、菊だろ。そんならここでの花も菊だろうがよ」
「……え?」「……あ」
「『うっそ知らなかった』って顔すんなよ! それとも、凄いうっかりさんなのか! 嫌がらせされてるこっちの身にもなってくれ! どう反応したらいいのか分からない! て言うか、あのさ、知ってるかな? 真っ赤な薔薇の花言葉っ!!」
「い……いや……」「し、知らねえっ」

 ふ……決めてやるよ。オレの言葉をとくと聞け。

「『情熱的な愛』!」

「………………え」
「有名な花言葉だ。告白されて時さん困っちゃうのだぜ、いえっはー☆」

 オレの華麗な発言に教室フリーズ。
 そりゃあね、嫌がらせのつもりに置いた花がね、あれじゃね。

「これ置いた人をオレは振る事になるのか……君がせめて二次元だったなら、オレもきっと揺らいだろうによ。哀れな奴だぜ。だが気持ちを受け止めさせて頂こう」
「ちょ!!!!」
「ん~何かな~? どうしたのかな~かな? 時さんはこれを快く受け取るわけだけれど……何かな? クラスメイトA君はどうしたのかなあ?」

 オレの言葉にそこはかとなく動揺しだした、いじめっ子君。でもここで詳細を話すわけには行かない彼は、ばつが悪くなった様な顔をして教室を出て行った。

「ふふふふはははは(お腹の底から)ぬるい、ぬるいわ、このオレを屈しさせたかったら、ジオンの足なしMSを用意する事だな青二才め!」

 喧嘩売っていた少年を撃退出来た事に、満二十歳の成人時さんは満更でもなかったりする。こういうのを、駄目な大人と言うんだろうね。

 とりあえず、机に置かれた花瓶は邪魔なので教室の後ろにある棚へと移動させてから、山さんへと親指を立てる。その指の意味を汲み取った山本氏がやっと状況を理解したのか、盛大に噴出した後に、オレの頭をぐしゃぐしゃと掻き乱しに来やがった。

「ちょ、おま! 止めてくれるかな!?」
「はは! いいだろ少しくらい! それにしてもすげーな時、全然へこたれねーのな! お前って実はSなんじゃねーのか!」
「ははは、友達にはMと言われるけど、Sに近いノーマルだ」
「はは! わっけ分かんね!!」

 大暴露したのに、この仕打ち。

 天然テロリストが尚も笑い続けるので、オレは今切れていい。お返しとして、自分よりもちょっと高い位置にある山本氏の頭をゴッドハンドで勢い良く押さえつけてやった。

 したら、おのれ天然テロリスト、に逆襲された。

 ヘッドロックかまされて、もうどうしようも出来ないオレ。でも、何処か懐かしい学校での戯れに、ヘッドロックかまされても楽しんでる自分がいる。

 そう、本当に楽しくて、少しだけ忘れてた。
『あの時』オレの事を見つめていた、もう二人の事を。

 先程オレ達が入ってきた扉が開く。反射的にそちらへと振り向けば、重る、ある人物達と、オレと山さんの視線。

 ツナと、ごっ君だ――――

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