◆ Ⅰ - ⅴ ◆ ⅩⅩ ◆
「……あ、りがとうっ! ありがとうお父様っ!!」
草壁さんの優しさが身に染みて、挫けそうだった心が温まる。
嬉しくて、嬉しくて、ありきたりな言葉しか出てこないのが悔やまれるが……良いんだ。きっと、これでいい。わざわざ無理をする事はない。
オレはきっと……これでいい。
「……とりあえず元気には、なったようだな。これぐらいの事で役に立てるのなら何時でもオレのこの手を貸してやるさ。だから泣くな」
「涙じゃありません! オイル漏れです!!」
「そうかそうか」
「ぶわああああ! 父さああああん!!」
「――――っぐ!!」
オレの奇怪な言葉を笑顔でスルーしたのが、またなんとも、父さんに似ていて、もう駄目だった。色んなものが決壊して、気が付いたら、草壁さんの胸部だか腹部だかに全身ダイブしていた。
瞬間、彼が呻いたような気がしたけど、シラナイ。
「……母さんが欲しい」
「……っ止めてくれ」
……子供の頃、父さんの上で遊んでたのを思い出す。
(……あったかいなあ)
「……で、何時頃、養子縁組になるんだい」
オレ、プギャー。
不穏な声を耳に留めたオレ達は、当然、声のした方へと目を……っていうか顔を凄い勢いで向けた。そして、目に映りこんでしまったのは、開かれた扉の前で、腕を組みつつ立っている学ランの男――雲雀恭弥様々。
オレ、プギャー……
「で、いつ?」
言われつつ、そろりと草壁さんから離れるオレを見ている奴の目が見下しているとしか思えないのは、きっとデフォルト。
「オ……オレは何も見られていない……」
「見たよ」
「い、委員長、何時からそこに……」
「母親を求められた辺りだよ。部外者も大概、乳臭いね」
恥ずかしい!
なんとも恥ずかしい所を見られてしまった羞恥に、頬が熱くなり、自分の顔を手で隠しながら「お嫁に行けない!」って照れ隠しでボケたら嘲笑が返ってくるのもまたデフォルトだった。
草壁さんの苦笑だけが、オレの心のよりどころだ……
「……まあ、冗談は置いといて、それより――――」
冗談の意味絶対この人知らないに決まってる――と、オレのもの凄く恥ずかしい状況を、彼なりの冗談で混ぜっ返した男は、恥に耐えるオレを無視して言葉を、つらつらと言葉を並べ始めた。
とりあえず、怒っても無視されるに決まってるので、姿勢を正して歩く彼の姿を目で追いつつ、話に耳を傾ける……て言うかここ応接室だったんだね。
「――――それより、さっきの件についてだけど。草食動物達はもう駄目だね。“アレ”に毒されて、本当に部外者の事を犯人だと思っているよ」
“アレ”と言いながら椅子に座る彼は、至って冷静に口上する。
オレが強姦未遂事件の犯人だ、と言う噂が既に校内中に広がっている事も、オレへ対する風当たりが今までの非で無い事も、今並中で起こっている事を、まるで他所で起きた事の様に淡々と話していった。
……いったは、いいが。
さて彼は、どうするんだろう?
「オレは……どうなるんですか?」
“犯人”の処分について。
まさか、みんながみんな犯人だと思っている強姦魔を、校内に放置する訳には行くまい。そんな事をしたら、校内の女子生徒達はオレの存在に怯え、男子生徒はなんか……なんかしてくるだろう。
とにかく、今のオレの存在は並中に混乱を招き、閣下の嫌う所の“風紀を乱す”事になる。しかも“オレ”は、何でか知らないが“ヤツ”に、はめられている。だったら、状況はもっと悪くなって、もっと風紀を乱すかもしれない。
だけど、オレとしては、そんな“ヤツ”の思い通りな展開は正直嫌だ。でも、学校側……閣下としては、そんなオレの感情なんて迷惑この上ないだろう。例え閣下がオレの無実を知っているにしても、やっぱ、風紀を乱されるのなんて、気分のいいもんではないと思う。
ツナ達だって、オレの顔なんて見たくないかもしれない。
女の子達だって男の子達だって、きっとそうだ。
でもオレは……と、ループしてしまう。
だからこそ、彼に尋ねたのだ。
オレはどうなるのか……“どうすべき”なのか。
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