◆ Ⅴ - ⅲ ◆ ⅩⅩ ◆
――――多分時は、ずっと時計を探していたんだと思う。
川の中へと投げ捨てられた時計を、必死になって探した。水の冷たさなんて感じなくなるぐらい潜って、どんどん色んな物が磨り減って、体は言う事聞かなくなってきてただろう、心は今にも挫けそうだったろう。それでも立ち上がって、それでも諦めないで……。
何でそこまで?
……なんて聞くだけ無駄だ。大事だから、に決まってる、大切だから、に決まってる。人間ってそう言うもんだ。大事なモンが目の前で消えそうになると、必死で鷲掴みにする。無くしたくないモンが目の前で落ちていくと、がむしゃらに拾おうとする。
その感覚をオレは知ってる。
――――オレは野球を無くしたくなかった。
だから、思い通りにならない自分の体を、無理やり行使させた。
何で、なんて聞かれても、困る。
無くしたくないから、としか答えようがない。
オレは野球が好きだから、オレには野球しかないから。
だから、努力しようと思った、だから、必死になった。
必死になって、から回って、腕がイカれて、絶望した。
そして時は多分、そんなオレと同じ。
大事な時計が無くなって。
取り返そうと必死になって。
消えちまったもん拾おうとして。
そんでも見つかんなくて。
一人で、突っ走って。
……こんなんなって。
体が冷たい、触れてる所が時の冷たさで痛くなる。声を掛けても返事がない、息がか細い、肌に色がない、目を開けてくれない。
なんでオレあの時、手を貸してやらなかったんだろう。どうして無茶してる時の事、止めてやらなかったんだろう。ツナがオレにそうした様に、どうしてオレは時にしてやれなかったんだろう。ただ手を差し出すだけで良かったのに、ただ声を掛けるだけで良かったのに、オレも探す、って、無理すんな、って。難しい事なんてない、もの凄く簡単な事な筈なのに。
……なぁ時。
まだ間に合うか?
まだオレの声は届くか?
まだオレの言葉聞いてくれるか?
今更って思うかもしれねーけどさ。
こんなガキじゃ頼りになんねーかもだけどさ。
ツナみたいには無理かもだけどさ。
小さいお前を、背中に担ぐくらい。
冷たくなったお前を、また暖かくするくらい。
そんなお前を、背負って走るくらい、オレにだって出来るんだからさ。
少しくらい寄り掛かられたって、オレ達は倒れたりしねーから。
だから……。
「ゼッテー助けっから……! 今くらいは、ガキに頼れよ二十歳っ!!」
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