ⅩⅩⅣ - 人皆旅人

◇ Ⅳ - ⅵ ◇ ⅩⅩ ◇

「……あのぅ……」
「「「っ!!!」」」


 突然室内に響いた声に、体が跳ねる。

 声のした方に思いっきり顔を向ければドアから覗いてるハル。若干顔がこわばってるのは、オレ達三人が同時にそちらを振り向いたからだろう。


「「「「………………」」」」


 だ……誰か喋れよ。
 ……って、オレが喋りゃいいのか。


「ど……どうしたんだ……?」


 待てども誰も何も言わないんで、とりあえずオレがハルに話しかける。オレの声に飛んでた意識が戻ってきてか、ドアに体を貼り付けたまま変な声上げて、反応を示すハル。


「あ、はひ! そうでした! 時さん大分落ち着いたので、皆さんを呼びに来たんです! って、や、山本さ……っ!?」


 言い終わるが早いか、オレはハルを押しのけて廊下に出ていた。
 目指すは時の部屋だって聞いた、廊下奥の扉。


「時……っ!!??」


 思いっきりドアを開けて飛び込めば、聞こえてくる少し荒い吐息。
 それから目の前で上下する羽毛布団と……。


 ……苦しそうな時の顔。


「…………」


 時が眠っているベッドの脇までゆっくり近付けば、小さく聞こえてた荒い息のボリュームが大きくなる。顔の傍に身を屈めれば、目の前には血色が良くなった頬……いや違う、熱が篭って赤くなった頬。そこに指で触れれば、ありえないぐらいの熱がオレの指に進入してきた。

 ココに担ぎこんできた時はあんなに冷たかったのに、今度はこんなに熱い。その事に喜んでいいのか、また悲しむべきなのか、時の苦しそうな顔を見ていると分からなくなる。

 目を瞑ったままの瞳からは、余程苦しいのか涙が少しだけ滲んでる。
 酸素を求める呼吸は、聞いているだけで苦しくなる。
 真っ赤に上気した頬が、辛いんだってオレの眼に知らしめる。


 ――――そう言えばこの頬、怪我治ってたんだな……。


「――――ご……めんな……っ」


 床に膝を着いて教会で懺悔するみたいに、時の横たわるベッドの淵に拳と額をこすりつける。でもコレは懺悔じゃない、償いなんてもの気休めだとしか思えない。自分が楽になりたいが為の謝罪なんてオレは言わない。許して欲しいとかそんな言葉、オレは捨ててやる。


 オレがやるべき事は、もう決まってる。


「もう、絶対信じないなんてしねーから……っ!」


 目から何かが零れてくる。
 口から言葉が零れてくる。
 でもそれは、時のベッドが隠すみたいに消してくれた。


 今度はちゃんと話し聞くよ。
 時の声を耳に残すよ。
 そしたら、一緒に時計探そう。
 時が疲れたらオレ一人で探してやる。
 見つかるまで探してやる。
 罪滅ぼしみたいでムカつくかもしんねーけど。
 今更みたいで怒るかもしんねーけど。
 絶対見つけるから。

 だからさ。

 もう一回、もう一回だけでいいんだ。


「『山さん』……って、笑ってくれるか――――?」

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