◇ Ⅳ - ⅱ ◇
切符を取り出して黙りこくってしまったオレに、一同が不安げな目を向ける。その視線と、この嫌な空気を取り払いたくて、オレは混乱しながらも、言い訳染みた言葉を並べた。
「で……でも、この切符使えたんだ」
後ろを振り向いて三人に言い放つ。
米神の冷たい感触なんて今はどうでもいい。
「駅員のお爺さん何も言わずにこの切符切ってくれて――――」
そうだ、確かにあのお爺さんは、この切符を、眼で見て、手に持って、作業をこなしていた。駅名が違うのなら何か反応があってもいいはずだ。
「……お、い。ちょっと待てよ、あの駅に爺さんの駅員なんていねぇぞ」
少し遠慮気味に、でも的確に情報を伝える、タコソン氏。
でも、オレにはその的確な情報が、混乱要素にしかならない。
「……は? いるよ! いやいたよ! この位の背丈の――――」
手を自分のウエスト辺りにかざして背丈を示す。
混乱してる所為で声が少し大きくなる。
顔は優しい温かな笑顔が印象的で。
長い白髪を後ろで三つ編みにしていた。
眉毛も白い毛でふさふさの――――
……そこで、オレの言葉は切られた。
思い出す内に浮かんでくる、お爺さんとその回りの景色。
夕暮れ時の駅のホーム。
夜じゃない、まだ夕暮れ時だった。
駅の周りには、ショッピングモールが見えて――――
……夕暮れ時ならまだ賑わっている筈じゃないのか?
なんであの回りには人がいなかった、まだ夕暮れ時なのに。
いやそもそも人が一人もいないなんて可笑しいだろ。
何で気付かなかった。
何で気付けなかった。
どうして。
「――――おい、大丈夫か?」
右肩から声がして、はっと、そちらに顔を向ける。
思考回路が停止した。
目の前にいるのは黒スーツに黒い帽子、くりくりの黒目に揉み上げがくるんと巻いていて、帽子の上にはそこはかとなく愛らしいカメレオン。またか、またなのか。そっくりだ、またそっくりさんが出た。
今度は『リボーン』だ。
しかし待て、オレよ待て。
こればっかりは納得しちゃいかんだろ。
図体のでかいおじさんとか少年とか、そういうのがこのコスは分かる。
だが待て。
明らかにこの子、あのランボ似の少年より小さいぞ。
なのに何だ今の今まで話していた流暢な日本語は。
そもそも、その銃は何だ。銃口がいやにリアルなんですけれどもが。
「リ、ボーン……」
「……なんで俺の名前を知ってやがる」
決して疑問符を浮かべずに突きつけてくる問い。
戦場なんて物騒な所に出た事のないオレでも分かる程の殺気と威圧。
コレが子供?
「な、んで……って、それコスプレじゃ……」
目の前の人物と、自分の置かれている状況に全く付いていけない。
これ以上オレに、何を理解しろと言うのか。
「コスプレな訳ねぇだろ。これはオレ自前のスーツだぞ。そこらの奴が買える程安くねぇ」
目の前の人物に目をかっ開いて固まるオレ。
その状況を微妙な顔で見守る、ボンゴレズ。
そして、リボーン似の少年越しに見える少女二人の戸惑った顔。
少女二人。
オレの状況に追い討ちをかける要素がまだ残っていた。
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