◆ Ⅲ - ⅰ ◆
旅先で驚くことは間々あるけれど、そのほとんどは些細なものだ。
お祭りやってたのか驚いたーとか、こんな場所があったのか驚いたーとか、外人さんめちゃいる驚いたーとか、食べ物めちゃうま驚いたーとか……わざわざ驚くことではないのかもしれないけれど、まあ、旅先で驚くことと言えばそんなくらいだ。
あるいは旅先が国外であったなら、物騒なことに巻き込まれてとか、野生動物の勇猛さとか、大自然の雄大さとかに驚くことになるのだろうけれど、しかし旅先は全て国内なので大陸に転がっているような――想像だけれど――刺激的な驚きはほとんどない。
もっとも、それほど大きな刺激なんてものはそもそも求めていないので、それらは正直間に合っているのだけれど、興味がないのか、と言うと、そこはやはり“非日常”を求めて旅をしている身だ。興味がないわけではなかった。
ただ、ほら、世界というのは意外と無常なのだ。
なので、興味よりもまず、恐怖が先立ってしまう。
「いやー、だってさー、おっかないのはなー、ちょっとなー、はははー」
『お前、海外は行かないの?』
そんなことを聞かれたチキンは、そんな感じで適当に誤魔化した。
だって、仕方がない。おっかないのはさ、ちょっとさ、あれさ、だから。
でも、大丈夫だった。そんな心配をする必要なんてのは、どこにもなかった。
国内だってやる時はやるのだった。
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