Ⅳ - 人皆旅人

◇ Ⅳ - ⅰ ◇

 オレ――白井時は『REBORN!』のコスプレしている人を発見し、お友達になろうとスマイルよろしく笑顔で話していた所、いきなり『獄寺隼人』のコスした『獄寺隼人』のそっくりさんに爆発物を投げられ逃走を開始。道中ごっ君似のタコヘッドに、ジェイソンとタコヘッドをかけた、“タコソン”と言うあだ名を付けるという余裕を見せた。んがしかし、タコソンは予想以上の力を見せつけ、その余裕も掻き消える。

 と、その時、運命のイタズラか、はたまた神様のイタズラか。

 曲がり角で女の子とバッタリぶつかっちまったよ☆ なんて少女漫画顔負けのハプニングがあり、退路を立たれたオレは今まさに長年の宿敵タコソンと対峙していたのであった……続く――――

「――――って違うっ! 色々違うっ! タコソンてなんだっ!」

 君の突っ込み好きだぜツナ似さん。

 色々と脚色してはいるが対峙してるのは間違っていない。ただ目の前にいるのが、タコソンではなく、タコソンの投げたダイナマイトと言うだけだ。……ちょっと怖さが増すのは気にしない。

「こんな住宅地で、ダイナマイトを投げちゃいけませんって――――」

 肩から書けていたバッグを手に持ち替える。

「――――先生に言われなかったかぁっ!!」

 爆発物にフルスイングをかましました白井選手。

 放物線を描いて、オレ目掛けて飛んできた爆発物は、オレの見事なスイングで空高く飛んで行き、大きな音を立てて砕け散った。オレの後ろにいた女の子二人が小さな悲鳴を上げて、ボンゴレ似三人は口開けて空を仰いでいる。

 オレ、英雄になれました。

 と言う訳で、とんずらいかせて貰います。

「待て」

 皆さんが呆けている間に、ずらかろうと踵を返すと右肩に重みを感じ、物騒なアレの引き金を引く音と、物騒なアレの冷たい感触が米神に触れるのを感じた。そして振り向くのが気配で分かる程こちらを見る五人の皆さん。

 絶体絶命の大ピンチって奴ですかこれ。

「……オレハマダ死ニタクナイデス、ヘルプミー……」

 この状況でこれ以外に、オレの言うべき言葉が思い浮かばない。

「お前何モンだ。この辺りじゃ見かけねぇな」

 ポケットにって言おうとしたら米神に冷たい物が押し付けられました。
 はい、すみません。

「たぶん、この辺で見かけないのは当たり前かと……オレ電車に乗ってこの辺に来たので……」

「電車?」とオレの右肩に乗ってる何かが言う。それについでオレの後ろにいるタコソンが「何処から来たんだよ」と威圧的に物申す。付け加えるように右肩の何かが「駅は何処で降りた?」と更に問う。

「あー……オレが乗った駅は色咲(いろさき)駅って所で、降りたのは、並盛南(なみもりみなみ)とか言う所です……ちなみにここへ来た意図は特にないです。旅をするのが好きなので……」

 聞かれた事に加え、聞かれるであろうここにいる理由も言ってみる。すると後ろの方から「色咲?」と疑問符を浮かべた声が聞こえて来た。多分この声は山さん似の彼だ。

「そんな駅あそこの路線にあったか?」
「え? あー……いや、無かったと思うけど……」

 そんな筈はないのだけれど……現にオレここにいるし。

「あの、たぶん結構遠くから来たはずなんで……探せば在るかと……」

 窮地に立っているので少々弱々しげな声になってしまう……畜生。

「無いぞ」

 肩にいる何かが言う。
 ……いや、だから。

「じゃあ、オレは一体どうやって“ここ”に来たんですか。確かに電車に乗ってここまで来ましたよ。切符だってあるし……」

 旅で買った切符は記念に取って置くようにしてあるので今現在きちんとオレの手元にある。財布に入れたので右腰に鎖で繋いである財布を手に取り、中を開けて摘み出す。

「ほら――――」

 取り出した切符。
 それを見たオレは、言葉を失った。
 代わりに肩にいる何かが、口を開く。

「こっちの駅も知らねぇな……」

 切符に記されている、二つの駅名。

『色咲―転乃谷(てんのたに)』

 オレが買ったのは確かに路線の一番端までの切符。
 並盛南もちゃんと線路が終わっていた……。


 じゃあ、これはなんだ?


 乗ってる最中に誰かに移動させられたのか? そんな馬鹿な。
 だったら、切符を間違えて? ずっと財布に入れていたのに?

 オレの頭が混乱する。

 自分で乗り換えた覚えなんて……ない。ずっと……そうずっと、窓辺で外の景色を眺めて、その後はその場で眠っていた。じゃぁ今のこの現状は何だ? オレはどうして“並盛”にいる?“転乃谷”でなく、どうやってここにいる?

 ――――そうだ、この切符が使えたのは何でだ?

 オレは切符を取っておく為に自動改札機は使わない、中に取り込まれてしまうから。降りる時は必ず駅員さんに切符を切って貰う。だから、あそこでも、あのお爺さんに……。

 そう、あのお爺さんは確かに――――

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