Ⅶ - 人皆旅人

◆ Ⅶ - ⅲ ◆

 ――――う〜ん……無いな。
 なんか特殊な仕掛けでもあるのか、あのアジト。

 職員室を後にしてから、飽きもせず、リボーンの居所を探して早数分。もうすぐ授業が終わろうかと言うのに、さっぱり、見つからない暗殺者。こいつはひょっとすると、メガネの旅人より手強いかもしれんぞ。

 ちなみに今は、窓枠から腕を垂らして、だらしなく休憩中だ。外に見える校門を見ながらに、昔懐かしいメガネの旅人と愉快な仲間達に思いをはせながら、ぐーたらしていると若い頃……学生時代を思い出す。


 しかし、ここまでくると、あの赤ん坊がここにいるのか怪しく思う。
 ……まあ、校内を探索出来たから、よしとするけれど。


 歩き回って感じた並盛中学校は、ありふれた、本当にありふれた学校のそれだった。特別な雰囲気をかもし出している訳でもなく、かと言って、なんの雰囲気もない訳でもない。

 学生の生活があって、教師の生活があって。創立何年なのか分からないけど、柱や壁に傷があって、廊下や天井に汚れがあって。長い事この場所に存在し続けた空気……と言うか、証、がある場所。


“そこにあるのが当たり前”の、そんな学校だ。


 それでいいのか? なんて、思うかもしれないけど。オレに、それがいいんじゃないか、と思う。在るのが当たり前になるのは結構、難しい事なんじゃないかと思うし、空気みたいに、在って当たり前で、無いと困るような……この学校はそんな感じの、オレが好きな……そうだな。



 オレが、今、なりたい雰囲気。



 何せオレは、この世界にとって“異質な存在”だから。
 この世界にいて“当たり前”。
 そんな風になりたいな、なんて、思っちゃうのは当り前で。

「……オレは、ここにいていいものか」

 ちょっとした心の不安を風に乗せてみた。
 誰に届く訳でもないけれど、一人の時くらい弱音は吐きたい。


 ……けど。


 そんなオレの、届く筈のない。
 届ける気のなかった言葉に、返事が返ってきた。

「――――駄目だよ。教師共の許可を取ったって、僕の許可を取なきゃ、意味は無い。そして僕は許可を出す気はない。だから、居ては駄目だ」

 オレの死亡フラグ、エッフェル塔の様に、でかでかと立っています。
 それはそれで中々、芸術的なフラグではあるが、嬉しくない。

 声のした方向に、え? なんて、のん気に振り向けば、当然もう一言。

 ……何で振り向いちゃったかな、オレ。

「君、この学校の生徒じゃないよね。なんでここにいるの。不法侵入者かい。それとも、わざわざ僕の遊び相手になりに来てくれたのかな」

 リボーンの様に疑問符を浮かべすに突き付けてくる、問い掛け。そんな言葉をオレの目の前で発する、威圧的な男。その容貌はオレが良く見知った“彼”のソレに似ている……いや“彼”そのものだ。

 漆黒の髪に、漆黒の双眸、漆黒の学ランを背になびかせ、腕には“風紀委員”の腕章。その身に纏う雰囲気は生まれながらのモノなのか。はたまた、オレの心がそう捉えさせるのか――――

「……無言は肯定と取るよ、部外者」

 彼――雲雀恭弥の言葉には、皇帝たらしめる威厳と力が備わっていた。

 ……いたが、オレには関係ない!

 リボーンファンの仲間が『雲雀さんカッコイイ!』とか『雲雀強ぇ!』とか、そんな風に盛り上がっていようが、ああ、関係なかったさ。どれだけ人気のある人間だろうと、どれだけ顔が小綺麗な(イケメン設定じゃなかったのに畜生)人間であろうと、オレにとっての“彼”は――――

「ぎやあっ! 出たあぁっ! ゴットファーザーぁぁぁぁっ! 寄るなやケダモノっ! アマゾンの奥地で先住民とでも遊んでろバカヤローっ!」

 ――――オレにとって雲雀恭弥は、苦手な事この上ないのだ。

「……ああ、気が変わったよ。部外者だろうが、それ以外だろうが」

 はあっ! 言う気だ!!
 呪いの言葉を、呪詛を言い放つ気だあっ!!

「咬み殺す」

 脱兎、もといダッシュ。我が命を繋ぎ止める我が俊足は、雲雀恭弥の言葉を引き金に、銃弾の如く、戦闘機の如く、光の如く、彼の居る方と逆の方向へと走り出した。

「ワオ。逃げられると思ってるの」

 わお、逃げ切るのがオレの使命だ。
 オレよ、メロスになれ――――

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