Ⅷ - 人皆旅人

◇ Ⅷ - ⅲ ◇

「ふうん……君、随分と奇妙だね。いいね、面白い。暇つぶしには最適な匂いがするよ。それに興味も少なからず沸いた。咬み殺すのは止めにしよう、何時でも出来そうだし……何より、叩いて出る埃の中に、本当に面白そうなのが交ざっている気がしてならない……」

 だから止めにしよう。

 との言葉に呆けるのはオレだけではない、その場にいた全員がそうなった。当たり前だ。あの、唯我独尊、傍若無人、傲岸不遜、国士無双、厚顔無恥(?)の雲雀恭弥様が、大方、彼の辞書には無いであろう、慈悲を情けを、提供してくれたのだ。

 驚かずして、何をどうしろっていうんだ。

「ああ、それに……何? 『並盛の皇帝』? そんな呼ばれ方されたのは初めてだったよ。国の王になんてなる気は、さらさらないけど……悪い気はしないね。中々いい響きだ」

 ……お、おや?
 ……閣下ご満悦?

「その言葉に免じて……という訳では勿論ないけど、僕に対して使った礼儀知らずの言葉も行動も、今回は目を瞑ってあげるよ……けど」

 グッジョブ、オレ! 自ら防衛ラインを作っていたとは!

 んが、しかし、そうは浮かれていられない。閣下のお言葉はまだ続いている。核が投下されるか、重火器が火を噴くか、しかと聞き届けろ!

「けど……君は僕を殴った訳だし、それだけで許す訳には行かないね」

 さあ来た! そうは問屋が卸さない世の中でした!

「な……何をすれば宜しいので御座いましょうか……?」

 ゴマすり、ガクブル。

 そうだね、と、顎に手を当てる様は、ヨーロッパの絵画か、と突っ込みたくなる完璧さ。ああ、どうしよう、イケメンなんて絶滅してしまえばいいのに。と、ちょっとムカ、っとしている所に閣下が「ああそうだ」と声をあげた。

「君、こんな時間にここに来たって言う事は、学校、行ってないね?」
「へえ、まあ、しがない旅人は、そんな所に通っておりませんでござりまするが……いや、でも、一応義務教育とはおさらば御免しておるので」

 あれ日本語って何語?

「ふうん……それじゃあ、君が僕に許しを請う方法は“これ”で行こう」
「へえ、なんで御座いませう、旦那様、なんなりとお申し付け下せえ」

 ああ、やっぱ、嘘。許容範囲内に収まるレベルのクエストがいいな。いや、まあ、オレの許容範囲内に収まったクエストが来た訳だが……。

「明日から君は“並盛中の学生”になること……いいね。これが君のすべき“償い”だ。二度は言わないよ。それじゃ、僕も暇じゃないからね」

「またね部外者」とか言いやがりながら。身を翻すその背中に飛び蹴りかましてやろうか、と思ったら、気配がばれて目があったので、舌打ちに留めておいた(っち)。そして、とりあえず生存確認。

「……見てツナ。オレ人生謳歌してていいって」

 凄い、生きてるって素晴らしい、呼吸してるって凄すぎる。そんな感動を抱きつつ、振り向きながらゆっくり言えば、彫刻が如く固まっていた野次馬勢が覚醒。もの凄い開放感に包まれてる。

「……って、っは! よよ、よ、良かったね時! いやホント、生きてて良かったっ! 死ぬかと思ったっ! オレも死ぬかと思ったっ!」

 ツナはオレの気持ちを言わずもがな理解してくれる同士らしい。
 思わず手を取り合って、意気投合。していれば、隣からごっ君。

「はあ……にしても、なんであんな事になってんだよ。そもそもなんで白井が並中にいるんだ? 雲雀に喧嘩売りにくる根性なんて持ってたのか、てめぇ」

 持ってませんが、何か?
 しかし、最初の疑問は的確だよ、タコソン君。
 んでも。

「それは話すと長くなる様な、ならない様な」

 どっちだよと突っ込む、ごっ君を尻目に、山さんの声に耳を向ける。

「でもホントー、オレも焦ったぜ! あの雲雀を殴るんだもんな、はは! 並中に武勇伝作ったな時! もしかして雲雀のこと倒せたりしてな!」

 はは、恐ろしい事を言う山さんに、ちょっと憤怒。
 でも、君の笑顔には癒されるので我慢。

「……で? な・ん・で、お前がここにいるんだ?」

 ……だから話すとだね、タコソン君。

「……ううむ」

 しかし、説明しない訳には行かない、何から話そう。
 ……ああ、まあ、とりあえず、いい運動もして、お腹が空いたので。

「……そうだ。ご飯にしよう」

 京都行くノリで。

 お腹を満たす選択肢が何よりも優先順位が高い。
 旅人たるもの行き倒れはしちゃ行けません。

08/??/??Re:10/05/20 ************** Next Story.

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