ⅩⅠ - 人皆旅人

◆ Ⅰ - ⅲ ◆ Ⅹ ◆

「お前ら仲良いのなー」
「え゛っ!? ちょっ、山本良く見てっ! 時泣いてる!! 目から水分垂れ流してるっ! て言うか何やってんの時!? バカなのか!?」
「違うんだ! ごっ君の手刀が三倍早かったんだ……っ!」

 ツナの質問に痛み堪えながら応答。したらば「それは知ってる(見ていたようだ)! そういう意味じゃなくって!」と、突っ込まれた訳で、ああそうね、そうだよね、ごめんね、この体制だよね、この得も言えぬ体制についてだよね。

 先程の手刀攻防戦が終わった、オレとごっ君は、戦闘終了時の態勢のまま硬直中。オレは痛さに身を震わせつつ、椅子に座ったまま頭上で手を合わせ、さながら神に祈っているようだろう。

 ごっ君は、ごっ君で、オレが起き上がると思わなかったのか、見事にオレの頭部へとクリーンヒットした自分の手を凝視して硬直。こちらは瓦割りをやってのけた、武人のように見えるのではないだろうか。

 神に祈るオタクと、瓦割った武人マフィア。

 ははは、カオスだ。

「お、お前がいきなり起き上がったのが悪ぃんだろうがっ」
「む、むしろオレのスキルの低さが悪いのかもしれないぜっ」
「て……言うか固まってないでその微妙な体制早く何とかしようよっ」

 うん、もっともだ、もっともなんだが。

「……ごっ君、早く退きたまえよ」
「お前が先に退けよ」
「ホワイ、なぜ? オレが君より先に退いてあげる道理などな〜い」
「それは、こっちの台詞だ駄目人間っ。オレが、てめぇ如きより先に動いてやる道理は一ミクロンもねぇっ。さあ退けろ、その貧弱な手をさっさと退けろっ」
「ははは、一体何様かしらこの中坊っ。イタリアンマフィアだからって一体全体、何を粋がっちゃってんのかしらこの不良っ。偉いのはお前ではない、十代目だという事を忘れるな、このでこっぱち!」
「オレを巻き込むなあ!!」
「んなこたぁ、てめぇに言われるまでもなく重々承知してんだよ! 十代目を差し置いてオレなんざが粋がるわけねぇだろうが! 喧嘩売ってんのかてめぇ!!」
「はははん、その喧嘩をいとも容易く買っちゃってる堪え性なしのおバカさんは、どこのマフィアで、どこの中身入ってないタコヘッドかしら?」
「ん・だ・と・こ゛らあっ!!!! 黙って聞いてりゃあ好き放題言いやがって! 元はと言えば、てめぇが寝こけてんのが悪ぃんだろうが!!」
「寝ちゃいけないなんて校則在りませんー! 不良に言われても説得力ありませんー! て言うか起こしてくれなんて頼んでねーぞ、こらっ!!」
「十代目が、わ・ざ・わ・ざ、お前如きと昼食を一緒なさると仰ったんだよ!! オレだっててめぇなんざ起こしたくて起こしたんじゃねぇ!!」
「んだとこらあっ!!!!」

 はい、これが彫刻作ってた理由だ。
 阿呆だ。

 双方相手より先に退くのがなんだか癪らしく、この押し問答。
 馬鹿だ。馬鹿なんだ。もうどうしようもない馬鹿なんだ、この二人。

(どっちも、どっちだなあ……)

 ギャアギャア、と喚き散らすオレ達を、生暖かい苦笑顔で見守るツナ。
 その表情を察するに、このアホな現状の理由を察したらしい。
 更に、止める気を早々に破棄して、傍観を決め込んだらしい。

 このやろ。

 ……とは言っても、止めて貰おうにも、止められないほどに白熱し出した空しい言い争いなもんだから、中途半端に止められたら止められたで、不完全燃焼この上なかったりする。阿呆だ。

 しかし、流石に、と言うか。この不毛な状況を見かねた、ツナではないもう一人――山さんが仲裁を開始。オレとごっ君の間に入って、双方の手を引き剥がしてくれた。

「まあ、もういいじゃねーか。今日は引き分けっつー事で、な? それより、オレもう腹ペコでさあ、早く飯食いに行こうぜ! ツナも腹減ったよな?」
「あ! う、うん! そうだね! オレもすっげー腹減った!」

 山さんが割って入った事によって、オレとごっ君は静止。
 次いで、山さんの意見に賛同する、傍観決め込んでたツナ。

 二人の意見にオレとごっ君が顔を見合わせて、そう言えばなんだか腹が減ったな、ってな感じの以心伝心を行った。腹が減っては戦は出来ぬ、ってやつなのかどうかは、さて置いて、とりあえず――――

「一時休戦だぜ、ごっ君よ。 昼飯としようじゃないか」
「っけ、十代目の空腹に助けられたな白井」

 大型犬と中型犬よろしく、そんな感じで睨み合いながら、とりあえずオレ達は昼食を迎える事になった。これら一連の出来事を、クラス中がハラハラして見ていたのを、オレとごっ君は知らなかったり。

 危うくオレも、不良に区分される所だったかもしれない。

 オレは、人畜無害のオタクだ!

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