ⅩⅠ - 人皆旅人

◆ Ⅰ - ⅵ ◆ Ⅹ ◆

「昨日の深夜に強姦未遂があったらしいぞ。犯人はまだ捕まってねぇみたいだ。なんなら今から捕まえに行くか? いい修行になるぞ」

 突然背後に現れたリボーン、もとい、パオパオ老師に皆驚愕。

 て言うか、そのコスプレってあれですよね。ボクシング=インド=象ですよね……ってあれ? インドってキックボクシング? ……いや、ただのボクシングか。しかし、リボーンの生コスプレは、かなり、によによ。いい歳した、おじさ(自重)がコスプレしまくりやが――――

 銃撃。

「なんか言ったか」
「本当すんませんした」
「強姦、と言うとあの強姦か? 老師」
「そうだぞ。この近くにある高校の女子学生が襲われたらしい。まあ未遂だけどな。何にしても趣味のいい事件じゃねぇな」
「う、うん、京子ちゃんとか、大丈夫かな……っ」
「心配ありません! 大丈夫ですよ十代目! そんなふしだらな馬鹿野郎は、十代目の右腕である、このオレが、ぶっ飛ばしてみせます!!」
「そうだぜツナ! いざとなったらオレだって何とかすっからさ! 坊主に貰ったバッドでコテンパンに伸してやるよ!!」

 だから、大丈夫だって!

 山さんが言うと本当にどうにかなりそうな気がする。
 たぶんコレが山本マジック。

(オレも山さんみたいな人間に生まれてたらなあ……)

 皆の意見にうんうん頷いたり、たそがれたりしてたら、いつの間にかオレの足元にまで来ていた老師と、目ががっつり合ってしまった。そんなつぶらな瞳で見られると時さんドキドキしちゃう。

「馬鹿な事考えてねーで、とりあえず俺の言う事しっかり聞いとけ」
「へ? うん……うん? あれ? オレに用事?」
「そうだぞ」

 老師の言葉に、オレを含めるその場の全員が首を傾げる。なんだろう? と、老師の言葉を待てば、その内容はちょっと不思議なものだった。

「暫く身辺に気を付けろ。俺は手を出せねぇ上に口も出せねぇ。お前が何とかしねぇ事には現状は動かねぇんだ」

 ……はあ。
 ……はあ?

「この事件に関係あるんすか??」
「そうだぞ」
「オレが?」
「そうだって言ってんだろ」
「……はあ?」

 バキューン――――って。


 すんません! マジですんません!!
 て言うか老師なんだから飛び道具禁止!!

 突如ご乱心の老師に兄さんプチパニック!
 て言うかオレが一番パニック!

「何すんだよ!」

 いきなり撃ち抜かれたもんだから、その場に尻もち付いて腰に来た。
 なもんだから、当然の文句を言えば、また銃撃。
 しかも「真面目に聞きやがれ」と、もの凄く真剣な声と顔を返された。

「いいか、絶対に油断するんじゃねぇぞ。何かあったらすぐに言え。何も出来ねぇが、お前さえ動けば、オレも手だって口だって出してやる。だから、しっかり考えろ。これはお前がどうにかしなきゃならねぇ問題だ」

 そう言い連ねるリボーンの言葉を聞いて、オレだけでなく、その場の全員が呆ける訳だが、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴リ響いてしまったので、話は中断。何やら、胸中もやもやとせずにはおれなんだが、とりあえずリボーンとは屋上で別れ、教室に帰還。その後の授業は眠る事はなかったものの、やはり、もやもや……リボーンの顔がちらついてどうにも集中できなかった。

 リボーンの真剣な顔ってやつは、あの一見締まらない顔だけに、どうも危機迫るものだある。でも、だからって、あまりにも内容が省かれすぎだと思うんだ。『気を付けろ』って言ったって、何に対して気をつけたらいいのか。


 そもそも、オレ如きに一体何があるというのか。


 これが『ツナ達に何かある』とか言うのだったら、またか、で終了できる。だって彼らはこの世界の人間だ。この世界の主人公たちなのだ。なんやかんやあって、なんやかんや強くなる。この世界は、そういう世界だろう。

 でもオレは、この世界の人間じゃない。非現実的な事は、大方、作り物の中でしか起きないような普通の世界で生きてきた人間だ。それをリボーンは『油断するな』なんて言う『オレの問題だ』なんて言う。

 ……この世界の何処にオレの問題が転がっていると言うのか。

 窓の外に広がる青い空。
 オレの世界のそれとなんら変わりのない、空。
 その空を怖いと思うのは、オレがこの世界の人間じゃないから……で。

 恐らく、間違いないだろう――――

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