ⅩⅡ - 人皆旅人

◇ Ⅱ - ⅲ ◇ Ⅹ ◇

 顔を洗い終えたオレは、全く冴えない頭のままに居間へ。


 足を向ければ馴染みの声が聞こえてきて、顔を洗っても冴えない頭も冴えて、気落ちした気持ちも浮上する。声の中にはツナの声もするので、今回はオレの方が起きるのは遅かったらしい。朝から元気に怒鳴るツナの声を聞いてると、その若さをひしひしと感じるが、今日はなんだか雰囲気が違う。

 なんと言うか……何時ものギャグな感じが漂ってこない。
 ギャグな雰囲気っていうのも、なんちゅうか、あれだけど。

 ツナも窓閉め忘れて脳みそやられたかな? と、勝手に同士を増やす考えを巡らせながら、騒がしい居間の方へと向かう。いやいや、それにしても、腹減った。そして、油断した。

「――――絶対にありえないって! 時がこんな事するわけないじゃないか! 一体なんなんだよこれっ! 言い掛かりにもほどがあるだろっ!」

 空腹に響いた。
 オレがどうかしたのだろうか?
 ……て言うか、オレはツナに怒られる様な何かを仕出かしたろうかっ?

 会話の内容がオレの様なので、ガクブルしながら少し歩を早めて居間に顔を出す。オレがどうかしたのか、と、少々青い顔になっているであろう表情で覗き込めば、魂に直撃する沈黙。


 黙殺、と言ってもいい。


 しかも、ものっ凄い、驚愕の顔つきだ。
 いらぬ、おまけだ。

 何にしても、みんなと一緒にだんまり、という訳にもいかないので、重たい沈黙を打破するべく、口を開いて言葉を紡ぐ。多少、もごもご、していたかもしれない。だってチキンなんだもの。

「な……何かあったのですかな? み、皆さん、ど偉い顔ですよ?」

 そう言ったら、ツナがものっ凄い反応で動いてテレビの電源を切った。
 す、凄い! 凄い瞬発力だった! 何処にそんな才能あったのか!

「ななななんでもないよ、なんでもないっ! はっ、早く学校行こう!」
「え? ちょっツナっ! ご飯は!? ご飯食べないと、死んじゃうよ! オレ死んじゃうよ!? スタミナ回復させてくれないと困る!」

 大喰らいだから!!

「え!? あ、ああ、そっかっ! それじゃあこれ食べてっ!」
「え゛? って、ちょ待がご……っ!!」
「早く行こう時っ! 母さん、あんなニュース信じちゃ駄目だからな! 絶対だからな!? 絶対の絶対の絶対だからなっ!!」
「分かってるわよ〜、二人共いってらっしゃ〜い」
「ごぐぼふっ! ぐひっ、ひ、ひっべびまー!!」

 ツナに無理やり手を引かれ、ツナに無理やり突っ込まれたジャムパンを頬張りながら、後ろの奈々ママやビアンキ姉さんに挨拶をして、沢田家を後に……て言うか、ツナってやるときゃやる子だよね。まさか時さん、ツナからこんな仕打ちを受けるとは思わなかったよ。苦しいよ結構。パンって人の酸素を奪う凶器に成り下がれるって、身に染みて分かったよ。

 ツナに引っ張られるままに進んでたら、やっとツナが、オレの今の状況に気付いて、はっとしてくれるする。次いで、勢い良く謝罪してくれるけど、だいぶ遅いと思う。

「ってうわっ! ごっ、ごめん時っ! て言うかオレってば、時の口に無理やりパン突っ込むとかありえねぇっ!!」

 うん、ありえてるから心配するな青少年、げふっ。
 口に残ったパンを飲み込み、やっとツナと会話を出来る状況になった。

「――――ふ。て言うかツナどうした? 食事中に何かあったのか?」

 あの時から様子が変だったようだし。

「確か……オレがどうとか?」
「え!? いやっ、あ、あれはっ、な、な、なんでもない! なんでもないよ! 本当っ、なんでもないから! ききき、気にすんなよ!!」
「…………え〜」

 テラ怪しい。

 きょどるツナに、じと、じめ、っとした視線を送ったら、分かりやすく目を逸らされた。そりゃもう、ぐあば! って背後に効果音付きそうな勢いで。

 へへへん、なんでぇ、なんでぇ、秘密の多いお年頃ってか。
 ……仕方ないな。

「分かったよ。今は聞かないよ。でもでも、どうせその内ばれるぜ〜、綱吉君は嘘つくの下手だからにゃ〜、そしてオレは結構名探偵だからの〜」

 とりあえず、言いたくないのであれば深く追求しないのがオレである。
 しつこいオタクは嫌われるのだ。

 まさかこのオレが、こうもあっさり引くとはツナも思っていなかったのか、少しだけ目を見開いた。そんなツナの、なんとも言えない表情に苦笑を向けて「んじゃあ行くか!」と、話への区切りをきっちりつけてから歩き出す。ツナより先に前に進んだので、オレの後ろをツナがとぼとぼ歩いてくる状態だ。

「………………」

 気配に元気がないのは分かった。
 でも、見えない顔の表情まで察せるほど、万能じゃあない――――

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