ⅩⅡ - 人皆旅人

◇ Ⅱ - ⅵ ◇ Ⅹ ◇

 嗚呼、無残なり、我が机。


 視界に入れた机の状態は、中々可愛そうな事になっていた。表面には多分、二人が消そうとしてくれたんだろう。少しだけ掠れたオレを罵倒する言葉が、これでもかと言うくらいに、マジックで書き殴られていた。カッターか何かでだろう。思いの他硬い机に上手く付けられなかったらしい、薄い傷が無数に付けられている。

 これは、ドラマとかで良く見る“あれ”に状況が似ているな。

 自分の机を見て立ち尽くすオレに、クラスの皆が少しだけ嘲笑を向けて来た。オレと一緒にその机を見たツナも驚いている。オレの机を守る様に立っていた二人は、オレの後ろで顔を俯かせていた。

 でも、オレはそんな三人に気を取られている状態じゃない。
 だって――――

「ねえ……どうしよう……」

 オレの震えた言葉に三人が反応する。

「なんでこんな事になってるのか状況が理解できない、理由も気になる」

 でも……と、多分今、オレの言葉は教室中の皆が聞いている。

「でも……でもな……駄目なんだよ。確かにそっちも気にはなるんだ、でも、この……机に書かれた言葉がっ。なんでっ。なんでなんだよ……!」

 皆がオレの言葉を待つ。
 オレの苦しみの篭った、嘆きの言葉を。

「――――机に書かれた言葉が“馬鹿”と“アホ”だけってどうだよっ」

 今にも涙が溢れてきそうな目を左手で押さえながら、皆に主張。机を目にしてから、どうしようもない位に気になってた事。『死ね』とか『消えろ』とか『うぜえ』とか『キモオタ』とか『きちがい』とか『カス』とか全然無くて、見事に『バカ』とか『あほ』とか『馬鹿』とか『阿呆』とか『BAKA』とか『AHO』とか……ああ、なんて優しい子供達!

 って。

「他に罵倒する事はないのかあっ!!??」

 先に上げた様なのとか!
『マジキチウゼェwwww』とか!
『ちょw キモオタw まじきめえw』とか!
『オタクに人権なんてある分けないだろJK』とか!
『死んでCO2削減に貢献しろよ』とか!

 そう、涙ながらに教室へと文句言ってやったらば『ええ……っ?』って『いやそこまで……っ』って、顔された。何この子達。超いい子じゃん。どっちかって言ったら、オレの方が腐ってるじゃん。駄目な大人じゃん。

 ああ、いや、でもね!

「そもそも、こう言う事やるなら徹底してはくれないかな! オレってば一応クリエイターだからさ、こういう半端な事されると無性に腹が立つんだよね! いやだからって、本気出されて、体育倉庫に夜中中閉じ込められるとか、怖くて嫌なんだけどね!」

 だけどもさ! 分かるかな! 何事にも完成度ってやつはだな!

『オタクうぜえ』とは、この事かと言う程に、ぐちぐち言い始めたら、何やら山さんが盛大に笑い始めた。次いでごっ君の、幸せが盛大に逃げていく溜め息。

「あっはっはっは! さっすが時だな! まさかそう来るとは思わなかったぜ! ちょっと言ってる意味分かんねーとこもあったけど! 時らしくておもしれーや!」
「オタクうぜえ」
「……あれ? 今一番辛らつな言葉を頂いた気がしたぞ、おい、そこのでこっぱち。君だよ。目をそらすなよ。オレの耳は確かに、君の棘のある言葉を聞きとめたぞ。っていうかオレが悪いのか? 物申すぞこのやろ」

 て言うかさ。

「なんでオレこの歳になってこんな殺生な学園体験しなきゃいけない訳」

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