◇ Ⅱ - ⅶ ◇ Ⅹ ◇
そうだ、そうだった。雑念が邪魔して忘れていた。
オレが今現在一番気になっている事は、オレが置かれている状況だ。
朝の通学から現在に至るまでの周りの反応で、みんながオレの事を良く思っていないのは分かった。けど、その理由がまだ分からない。『オタクだから』なんていう理由なら、簡単でいいけれど、まだ学校二日目だ。オタクだなんて、そう広まっていないだろう。
謎だ。
「おはよう、みんな。こんな所に立ってどうしたの?」
「――――あ」
京子ちゃん、萌え。
「えぇっと」
ぼさっと、つっ立っていたら京子ちゃんに声をかけられ、どうしたのかと、訊かれたもんだから、どう説明しようかと、口篭ったら先に京子ちゃんに話し出されて、っほ。しかも、なんと、京子ちゃん。オレが今一番知りたい真相を話してくれるじゃないか。
「そういえば時君、今朝のニュース見た? 私びっくりしちゃってね」
『時君の携帯電話が、どうしてなのか分からないけど、強姦未遂の犯人のものだ、って流されててね。時君、携帯電話に名前入りのシール貼ってたでしょ? それを番組のスタッフさんが隠し忘れたみたいで、結構騒ぎになってるみたいだよ?』
ああ、ありがとう京子ちゃん!
なるほど、そうか、そう言う事だったのか。
そうなると今朝のツナの反応も、周りの皆の反応も頷ける。オレが強姦魔だと思い込んでいやがるな。失敬な。ツナは、多分に言い出しにくかったんだろうな。
真相が分かって、なるほどうんうん。
「それでね、時君に会ったら話そうと思ってたんだけど、お兄ちゃんったらそのテレビ番組見て『抗議してやるー!』って言って、飛び出して行っちゃったの。何とか止めたけど、もう本当お兄ちゃんせっかちだよね。あんなの誰も信じるわけないのにね」
……ああ、エアリスっ。
京子ちゃんの神々しい笑顔は、大いなる福音に引けを取らないと思う。まあ、その時間は京子ちゃんが花ちゃんに呼ばれて、呆気なく終わったのだけれど。
でもそうか、良い事聞いた。
お兄さんはオレの味方かあ。
「勿論、オレ達だってあんなの信じちゃいないぜ時。そうだよな?」
「当たり前だ、こんのチンチクリンにそんな根性ある訳がねぇ」
「チンチンクリンって……あ、お、オレもだよ! ……で、でも、ゴメンな、時には言わない方がいいと思って……でも結局、言っちゃった方が良かったみたいだ……はは……」
くあー!
なんて良い奴等なんでしょう。ああ、目から目薬がっ。
「くっ……サンキュ! 皆に信じて貰えればオレはそれで良いよ。他の誰に何言われようが皆がオレの事信じてくれればそれで良いよ! ヒーローが味方なんだもんっ、イタリアンマフィアに苛められても大丈夫だよ!」
それに。
「皆なら何があったって、オレの事信じてくれるだろうしさ!」
オレにはそれだけで十分だ。
そう、ちょっと『ヒーロー』とか、漫画の事ばれそうな単語を言ってしまい、焦りながらに三人を伺えば、三人が三人、固まってしまっていた。愛い奴等め……いや、今のはちょっと寒かったか。いやでも、結構、恥ずかしかったかもしれない。いやいや、恥ずかしいと思うから、恥ずかしいのであって……うむ。
「やーい、やーい、照れてるー」
開き直る。
だが、殴られた。選択のケアレスミスだった。
「っち、ツンデレめ」
「誰がツンドラだ」
「ははは! すげーな獄寺ツンドラって……寒いとこだったよな?」
「ツンドラ地帯って良く聞くけど……なんでツンドラ?」
(もう嫌だ! ツンデレが通じないなんて、もう嫌だっ!)
なんやかんやとあってからの、面白おかしい、この世界の日常。
オレがボケて、ごっ君が突っ込んで、山さんは笑って、ツナは焦って。遠くの方からは京子ちゃんの優しい視線と笑い声。申し分の無い日常。ああ、やっぱり、この世界はこういう雰囲気が一番和むな、なんて思いながらに、オレの意識は悲しいかな先ほどの件で悶々としていた。
テレビに映ってたって言う、オレの携帯電話。
昨日の夜、寝る前には確かに、オレの枕元に在ったはずの携帯電話。
記憶が飛んでるだけだ、とも思ったけど、違うと言い切れる。何せオレは、あの携帯電話の電卓機能を使用して、渡された風紀の仕事をしていたのだ。
一体全体の何の金を計算しているのか分からなかったが、深く気にしないまま記された数字を打ち込んで、黙々と計算していた。だったら、何処かに落として犯人が利用した? とも思ったが、ありえない。風紀の仕事の後は外になんて出ていない。携帯はオレの枕元に鎮座していた。
そして朝だ。
閉めたはずなのに開いていた窓。
鳴らなかった、目覚まし代わりの携帯アラーム。
この時にはもう、携帯電話は無かったんだろう。
そして極め付けが京子ちゃんの話。
全てをまとめて出る結論は、もの凄く異常で、もの凄くおかしい話だった。だからオレは頑張って否定する。でも、オレの頭がその否定を受け付けないで、代わりと言う様に、昨日の昼にリボーンに言われた言葉が、オレの頭で反復される。
『――――暫く身辺に気を付けろ』
まるで、こうなる事が分かって居たかの様な言葉。
“気を付ける事”なんて、オレには起こる訳がないと思っていた。
“被害者”になんて、なろう筈もないって。
でも。
この気を付けろは、多分、今のオレの現状を指していたんだ。
『“犯人”にされない様“気を付けろ”』……と。
ああ、もう、畜生、頭が痛いなあ。
オレが一体何をしたって言うんだ。
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