◇ Ⅳ - ⅲ ◇ Ⅹ ◇
――――学校でツナ達と別れたオレは、ふらふらと沢田家に向かった。
何処かに寄り道しようとも思ったけれど、悲しいかな、行く当てと言うものがオレにはない。これがもし元居た世界なら、オタク仲間とどっか行くとか、ネットカフェでネトゲするとか、ゲーセンでUFOキャッチャー荒らすとか、メイド喫茶で姉ちゃん達の愚痴聞くとか……まあ、内容はあれではあるけれど、いくらでも暇の潰しようはある。
でもここ『REBORN!』の世界では、何も出来ない。
遊びに行く金も無いし、オタク話で盛り上がれる友達も居ない。携帯に登録された友人達の電話番号やアドレスも、こちらへと来てすぐに連絡を試みたが駄目だったし……携帯無いから意味は無いのだけど。なんだか悲しい現実をどんどん掘り起こしているな自分。悲しいな自分。
嗚呼、暇すらも満足に消化出来ない満二十歳。
……嫌だな。どうせならもっとこう、神隠しに合った満二十歳とか。
いや、これもこれで間抜けだな、満二十歳がいけないのかな?
ドキ! 二十年生きてきて初めての体験! 世界はも一つ存在した?
……ああ、痛い。重体だ。
でも、これはこれで、まあ切ないが、中々の暇潰しだ。時さんはこれを続行しようと思う。頭の中にアホな単語を繰り広げるというのは、結構楽しめるものがある。ははは、自虐ネタ乙。でも、マジレスされたらマジ困る。
ふはは、そんなもん、してくれる奴いねえじゃねえか。
……はは、畜生、早く沢田家着かないかなっ!
「とき泣いてんの?」
「泣いてなんかないよ! 心の汗さ!」
「まじでか!?」
「おおよ! 時さんの心は今まさに青春真っ盛り」
「おおおお!」
……って、誰だ。
オレと会話してるのは誰だ。
誰かと会話している事に気付いたオレは、立ち止まり辺りを見渡す。でも目に入るのは、家と、それをを囲む塀と、天に向かって立つ電信柱ばかり。
どうしよう。ついに現実と虚構の境界が分からなくなったかオレ。脳内妖精生成とは、もう後に戻れないじゃないか。でもそれが、可愛い子だったら別に構わないな。もう、後に戻れなくてもいいかもしれない。脳内だからホムンクルスになるのかな。いや、これは違うか。どう転んでも、あれは可愛くないな。
軽いプチパニック。
ホムンクルスは確か、頭の中で働いている妖精さんだ。今オレが探しているのは、いたずらが好きな妖精さんであって……いや待て。それも違うだろう自分。そんなファンタジー起きないよ。願わくばいて欲しいけど、とりあえず、そうそう、そんな事は起きない訳であって……あれ、でも、声はすれども姿は見えずは、つまりそういう事であって……。
「猫耳黒髪和服美少女だったら絶対に契約する!」
「ねえねえ〜なにさがしてんのお?」
「赤髪赤眼和服長身男子でも可! ただしイケメンに限る!」
「……んあ?」
「妖精さんさ!」
「まじでか!?」
「こんな時に嘘ついてどうすんのさ!」
「おおおお! じゃあランボさんもさーがすっ! ガハハー! ぜったいトキよりさきに見つけてやるもんねー! まけた方はかった方にお菓子かうんだもんねー!」
「よし! 心得た――――って待てごらあっ!!」
何だ貴様!
何だ君は!
何時からオレの肩に乗っていたのだ!
つか、妖精は貴様か!!
声がどうやら自分の右肩から聞こえてきていたので、首をそちらに捻ればブロッコリーのお化け、もとい黒アフロ五歳のランボが、オレの肩に当然のように居やがるじゃありませんか。て言うかオレ、こんだけ近距離で話しといて、この存在に全く気付かなかったのか……別の意味で危うくないか、オレ。
……うん、もういいや、捨て置こう。
深くは触れちゃいけないと思う。
とりあえず、オレの言葉を本気にして、妖精探しにいざ行かんとしている右肩の五歳児を止める事が最優先事項であろうよ。ああ、この頃は夢があっても、笑われなくていいなあ。
「ねぇねぇ、ようせいさがさないの?」
「ふふ、もう見つけたよ」
「まじでか!? どこどこ!?」
「ふ……君の……心の中さ」
キラン。
「まじでか!?」
そう言う事にしときなさい、五歳児。
巧みかどうか怪しい言葉だが、所詮ちょっと阿呆な所が可愛い五歳児相手だ。目をキラキラさせながら自分の胸をわさわさ触るランボ君五歳は、はは、ちょろい。
「……所で、ランボ、こんな所で何してんの?」
そういえば、だ。
いつもなら、イーピンとかフゥ太とかと一緒になって遊んでいる筈。
「あーそーぼー」
……ああ、はいはい、暇なのね。
分かった。分かったから。耳引っ張るな。地味に痛い。
「じゃあ何して遊ぶ? ていうかイーピンはどうした? いつも一緒だったろ? あの二人の方がサイズ的に遊びやすいだろうに」
「んーっとねー……フゥ太はママンの手伝いでー、イーピンは、修行しててねー……いそがしいからー、って、ふたりともともあそんでくれなかったの! ねぇトキあーそーぼー! あーそーぼーおー!」
そういう事か、と苦笑しながらに、いじけ出したランボの頭を撫でてやる。そしたら、何でかぐずりだして、鼻水垂らしながら擦り寄ってきた。
ちょ、おま。
「分かったから擦り寄るな! じゃあ、何だ! 家まで競争でもする?」
「ランボさんのが早いもんねー!!」
「って、あ! ちょ、フライング!!」
オレの言葉を聞いて肩から飛び降りたランボは、そのままダッシュ。
見事なまでのフライングをかまして、沢田家へ逃走。
どうやら、遊びは帰路を追いかけっこで決まりらしい。
……が、ちょっとムカ。
手加減?
何それ、何のスキル。
「リーチの差を思い知れ、小童あっ!!」
オレの前を走るランボを追うようにして全力疾走!
牛が勝つか! 人が勝つか!
勝敗は沢田家前で決まる――――
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