ⅩⅣ - 人皆旅人

◇ Ⅳ - ⅴ ◇ Ⅹ ◇

 爆煙が晴れて眼にしたのは、オレの体を支えてくれている、黒服スキンヘッドのおじさん。そして、その人の肩に仰向けで米俵の様に乗っているオタク。

「……あ、えっと、も、申し訳アリマセンネ」
「気にするな」

 そう、男気溢れる返答と、眩しい笑顔をくれたおじさんは、肩に乗っているオレを、地面へと丁寧に降ろしてくれた……のは良かったが、足を地面に下ろした瞬間。

「――――――――――――――――っ!!!!」

 左足に走る、表現のしようがない激痛。

 その痛みの所為で体重なんぞ、まともに支える事も出来ずに、その場に尻餅をつく。無論、左足に再度痛みが走っては元も子もないので、地面に触れないよう、左足を持ち上げた体制だ。

 左足には何故か、切り傷だか痣だかが出来ている……だけど多分に、爆発した塀の破片か何かが、オレの足に当たってこうなってしまったんだろう。

 にしても酷い。
 おニューの制服血みどろのボロボロだ。

 つい先日貰ったばかりの制服の状態に、意気消沈せずにはおれない。でも足の痛みが悲しむ事も許してくれず、余りの痛さにまた呻いて身を丸める。そんなオレの状態を心配に思ってか、先程オレを助けてくれたおじさんが声を掛けてきた。

「……おい坊主、大丈夫か?」
「大丈夫だと言わせる日本人の根性舐めんなよ、と言いたいところなんですが、さっきの爆発で、その根性すらも吹っ飛んだと言いますか、イタリア製手榴弾も馬鹿に出来ないと言うか、これだから軍のある国は、と言うか……て言うか同盟国じゃなかったのか。訴えるぞ。国に訴えるぞ。『日本人をカモにしたら呪われるぞ』って訴える――――うお、いってっ!」

 ずっくんずっくんする! 傷口が脈打ってる! 超痛い!
 だってのに、笑うイタ公意味がわからん!

 ああ、そうか! 日本人嫌いか!

 何故だか、痛みに打ち震えるオレの姿を見て爆笑しだした、黒ずくめのイタリア人達。恨めしげな視線を向けるが、それでもなお、笑い続けるイタ公郡に、いい加減怒鳴り散らしてやろうかという、日本人にしては勇気ある考えに思い至った所で。

「おいお前ら! 笑ってる暇があるなら手当ての一つくらいしてやれ!」

 オレの代わりにどちらさんかが、おじさん達を叱ってくれた。

「悪ぃな、こいつ等も悪気が合った訳じゃないんだ。ただ、お前の……その……く……小気味いいバカみたいな、せ、台詞が……っはははは!」

 語尾がどんどん笑っていって、どう見ても喧嘩売ってるようにしか見えない、金髪の外人兄ちゃんが現れた。黒いおじさん達を押しやって沢田家玄関から現れたその人は、なんと言うか、軟派なのに格好いい雰囲気。イケメン爆発しろ。

 首の辺りまで伸びた金髪は毛先を綺麗に遊ばせていて、迷彩柄のカーゴパンツに、白地のタートルネック、襟元になんかのファーがついた黒のダウンジャケットと、結構誰でも着てそうな服だと言うのに、この人が着ているだけで格好いい品物に変わる。イケメン爆発しろ。

「そうか。これがイケメンマジックか」
「は?」
「ああ、すみません、イケメン」
「……は?」
「ああ、いえいえ、なんでもないです。すみませんイケメン……それより一つお聞きしたいんですが、イタ公は日本人嫌いですか? だからカモるのですか?」
「…………は?」
「痛みに堪える日本人を笑って楽しいかとお尋ねしたく思うのだが!!」

 どう思う!?

「あ! いやホント、悪気は……っ」
「無邪気な大人ほど邪気の塊はなっ――――いぃぃい!!!!」

 凄い痛みに思わず声が裏返るのは仕方がない。恥ずかしくない。

「お、おい大丈夫か!? とりあえず、ほら、掴まれっ」
「うっ……畜生っ、申し訳ない……っ!」

 畜生! イケメン格好いい!

 金髪兄ちゃんに差し出された手を掴み、それを支えにして立ち上がる。けれども、右足を支えにしようが左足にだって微量ながら力は入るので若干の痛みを伴う。そんなオレの呻きを聞いてか、今度こそ本気でオレの足を気遣う、金髪兄ちゃん。やっぱ優しいねお兄さん、漫画のまんまだね。涙出てくるよ。

「おい歩けそうか? なんなら俺が担いでいくぜ?」
「え…………っは! い、いえ! 仮にもディーノさんは、キャバッローネファミリーのボスなんだから、そんな偉い人の手を、こんな何処のオタの骨ともしれない奴の為に煩わせる訳にはいきませ――――!(体が凍る激痛が走った)い……いきませんっ」

 絶えずオレの左足を襲ってくる、激痛。それと格闘しながらに、金髪兄ちゃん――キャバッローネファミリー十代目ボスたる、ディーノさんの申し出を断る。

 一応周りのおじさん達にとっては、かなり、大切な人な訳だから、こんな、どこぞのオタの骨を担がせるなんて……そりゃ時さん的にはグッジョブだけども、担いでくれたらそのまま昇天しそうな勢いで嬉しいけども。

「いや、やっぱここは貴重な申し出を受けるべきか!」
「………………」
「いやしかし!」
「…………なあ」
「なれどもしかし!」
「…………なあ、おい」
「いや、オタクとしてここはやっぱ!!」

「……なあ、何で俺の事知ってるんだ、お前」
「いやだって有名だし!」
「何処の世界で有名なんだろうな坊主? 詳しく聞かせて頂こうか?」

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