◇ Ⅳ - ⅵ ◇ Ⅹ ◇
ディーノさんの声じゃない、低い声が聞こえたかと思ったら『カチリ』と何処となく懐かしい鉄の音と、懐かしい米神への冷たい感触。
んー、デンジャー、なんでじゃー。
自分の顔の左側に視線をずらせば、黒光りする、日本では珍しいナニが見えてしまった。そのナニに添えられている手を辿れば、眼鏡を掛けた黒髪短髪の、ダンディな髭が素敵なおじさん。
ロマーリオさんを怖いと思ったのは初めてかもしれない。
いや、ディーノさんの部下の皆さんを怖いと思ったのは初めてだ。こんな住宅地のど真ん中で、そんな殺気垂れ流さないで欲しい。怖い。ものっ凄い怖い。顔も懐に忍ばせている手も、もう全部怖い。
「ど……どうしてこうなったっ」
ガクブルしながら痛みを堪えて質問。それに答えてくれたのは、今尚、オレの米神に銃を突きつけている、いい仕事しているロマーリオさん。
「どうしてもこうしてもないよなあ、坊主。うちのボスを知ってるって事は、坊主もこっちの人間なんだろう? 今更とぼけるのはなしだぜ」
「…………え」
「何処のファミリーの人間だ? それとも何処かの中小マフィアに雇われたヒットマンか? さあ早く言え。そうすれば楽になれるぜ?」
「…………え」
「どうした? まさかマゾヒストだから肩に風穴開けてくれってか?」
…………え。
鉄同士がぶつかり合う小さな音。
それが聞こえたかと思ったら、米神の銃は左肩へと移動。
ロマーリオさんがマジだ。本気と書いてマジだ。どうしよう。どうしてこうなった? ファミリー? ヒットマン? え? え? え? 分からない。オレ馬鹿だから分からな……ああああ! 肩に銃口押し付けてきたよ、この人! 肩痛い! 銃口が! オレの命が!
……落ち着け、オレ。冷静になるんだ。クールに行こうぜクールに。何がいけなかったのか考えるんだ……ヒットマン。マフィア。ファミリー。こっち。ボス。うちのボス。
……ボス、だと。
『――――仮にもディーノさんは、キャバッローネファミリーのボスなんだから、そんな偉い人の手を、こんな何処のオタの骨ともしれない奴の為に煩わせる訳には』
これかあっ!
そういえばディーノさんってば、自己紹介なんて一言もしてないじゃないか! しかも『マフィア』だなんて事も言ってない! やっちまった、遠慮心がとんだ惨劇を生もうとしているよ! そう言えば似たような失態を、こっち来てすぐやったような気がしないでもないけど、もう忘れた!
どうしようオレ死んだ。
自分の顔が青くなっているのが分かってしまう。
これが俗に言う血の気が引くというヤツか。凄いぞ人間。
「やっと分かったみたいだな坊主。さあ吐け。お前は何もんだ?」
「……な……ナマモノ………かな?」
「……ほお、日本人はこんな時でもジョークを忘れないのか、大したもんだなあ……で? 俺はそんなに気が長くねえんだが? そのジョークは何時終わるんだ?」
「ぐお! ごめんなさい! でもオレ只の中学生だしっ!」
年齢偽ってるけど。
「只の中学生が何でうちのボスの名前を知ってるんだ? ん?」
「だ……だって……ゆ……有名だし」
人気あったし。
「そうかそうか、ウチのボスはそんなに有名かそりゃ嬉しいなあ……で? 何処に雇われた? 今のうちに言えば……ガキだしな。爪はがすくらいですませてやるぜ?」
ロマーリオさんが怖いよ!
銃のハンマー弾いたよお!
撃つ気まんまんだ! 狙い撃っちゃう気だなんだ!
オレの肩にイタリアのスナイパーロックオンしちゃったんだ!
どうしよオレ!
どうするオレ!
がんばれオレ!
マリオがなんぼのもんじゃいいっ!!
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