◇ Ⅱ - ⅴ ◇ ⅩⅩ ◇
「――――ははははははははっ! 温い! 温いぞ! その程度のファンネルがこの白い(白井)奴に当たると思うなよ!!」
「ちっくしょぉぉぉぉ! なんで当たんねぇんだよぉ!!」
「おい白井ー、避けてばっかじゃないでちゃんとボールに触らんかー!」
避けてばかりの時に、審判をしていた先生も流石に呆れて声を掛ける。「そういやドッヂとか何年ぶりだろ。高校くらいからもう体力死に始めたからなあ……ゲームばっかやってたなあ……スポーツゲームとかやってねえなあ……」
ぶつぶつ、と。「殺気……っ!!」
『なんだそれ』――とオレが突っ込んでる間に、飛んできたボールを振り向きざま手の中へと収めた時すげえ。オレのチームの外野が『何で取るんだ』とか不条理な事を叫んでる気がするけど『それがルールじゃないか』と、今度は味方へオレの心が嘆きながらに叫ぶ。「てらよわす! っうぇっうぇ!!」
取ったボールを指の上で器用に回しながら、謎の言葉を発した時に、敵だからこそなんか感じ取ったんだろう、敵チームの顔が見る見る怒りに染まって……あの言葉理解できるのかよすげえっ。
「くっそお! ぜってー泣かす! ぜってー泣かす!!」
「時君がんばってー!!」
「私のボールは君の為に! オレ頑張ります京子ちゃん!」
「オレのこの手が光って唸るっ!!」
……な、なんだってっ?「お前を倒せと、輝き叫ぶっ!!」
光りっぱなしだっ!「必殺……っ!!」
時の目が煌いた気がした。「シャァァァイニングゥゥ!! フィンガァァァァァー!!」
振りかぶって投げられた、特に輝いていないそれは、オレのチームの内野中央に立つ、ずっと時を狙っていた人物に凄い速さで当てられた。その人のお腹に当たったボールは、くしくも地面に落ちて、時は実質華麗にアウトを取ってしまった事になる。ずっと逃げてたのに突然攻撃に入った時に、内野だけじゃなく外野も、先生までも呆然。「やっぱなあ、ルールがなあ、邪魔だよなあ。こう……敵を倒すなら顔面直下にビシっと決めた方がカッコイイよなあ。うーん……やっぱ、シャイニングよりゴッドだったかなあ……」
にや、って音が付きそうなくらい幸せそうに笑う時は気持ち悪い。にやついてなけりゃ結構いい顔なんだからモテそうなのに……もったいない。
「さて先生アウト取ったよ! 文句無いでしょ! 次は滅殺だぜ! 撲滅だぜ! シェルブリットバーストだぜひゃっはああああっ!」
「……ん? んんああ、そうだな。でももうちょっと手加減してやれな。撲滅は駄目だな、中学生居なくなるだろ? それからせめて、滅殺と言わずタコ殴りな? ……おーい、誰かーそいつ外野持ってけー」
「……で、だ。タコ殴りっうぇっうぇ!」
ひゃはひゃは、言ってたかと思えば、うえうえ、言い出した時が、オレの方見て『タコ』がどうのこうの……オレが馬鹿にされてるのかと思ったけど、なんか隣から殺気が漂ってきているので、たぶん現役イタリアンマフィアを挑発していたんだろう。「じょ……とうじゃねぇか……強姦魔があ……っ!」
多分きっと今の獄寺君の顔は、口角がひくひくして、目が尋常じゃないくらいギラギラしてて、タバコとか銜えて、ダイナマイトとか取り出しててて、間違いなく殺す気だっ。「あっ! やばい! 獄寺さんマジ切れっ! 心狭いっ!」
時と一緒に怯えながらも、耳に届いた『獄寺さん』に思考が強張る。『馴れ馴れしくするな』
あの日からすぐ、山本達にそう言われた時は、オレ達の事は『さん』付けの苗字で呼ぶようになった。
「歯あ食いしばれや強姦魔野郎っ!!」
「かわしてみせる! 僕が一番ボールを上手く回避できるんだっ!」
(戻れたら……いいのに)
目の前のみんなを見ながら、切実にそう思う。