ⅩⅩⅩⅣ - 人皆旅人

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◇ Ⅳ - ⅳ ◇ ⅩⅩⅩ ◇

「……で、さ。結局の所オレ達はどうしたらいいんだよリボーン。お兄さんが、あの……なんか良く分からない奴の『駒』……に選ばれてるんだったら、いくら言い訳しても、証拠見つけてきても、また記憶弄られて全部ぱあになっちゃうんだろ?」

 オレの背中をはらい終えたらしいツナがリボーンに向かって言う。
 そんなリボーンは、胡坐かいているオレの足の上で偉そうに座ってる。
 何様だ。

「なんだ、ダメツナにしてはちゃんと考えてるじゃねぇか」
「う、うるさいなっ! オレだってたまには頭使うんだよっ!」

 たま、なんだ。

「でも、リボーンさん、十代目の言うとおり“ヤツ”が記憶弄るなんて事を容易に出来るのだとしたら、オレ達に出来る事なんて、そう多くないんじゃないっすか?」
「だよなあ、記憶弄る……つったって、良く分かんねーけど、もし『時が犯人じゃない』って、分かってもその事消されたら終わりだもんなあ……やりにくいよなあ」

 二人の言うとおりだ。

『記憶消す』なんて技能を、そうそう使われたんじゃ、こっちに勝ち目はない。「犯人はお前だ!」と、証拠突きつけても、その証拠が無かったように扱えるんだ。卑怯通り越して、いっそ清々しさすらある。

 そんな、相手に一体どう立ち向かえと言うのか……

「とりあえず、お前らは油断するな。向こうの目的が分からねぇ以上、下手には動けねぇ。絶対にこっちから手は出すな。いいな」

 ツナ達がうなずく。

 昨日の一件で、それなりに謎は解明された……と言っても、やっぱり相手方の目的ばかりは分からないらしい。そりゃあ、あんな存在自体が良く分からない奴の考えてる事なんて、いくら、はちゃめちゃなみんなだって分かろう筈がない……つまりは、みんなの方が、幾分、普通と言う事か。

 こりゃ吃驚だ。

「それから、分かってるとは思うが、向こうは誰それに化ける事を容易に出来る。時は勿論、ツナや了平、下手すりゃ京子やハルにだって化ける事も可能だ。少しでも、怪しい、と感じたら下手に相手をするな、とにかく逃げろ」

 うむ、逃げ足には自信がある。

「それから、時。お前は、何が、何でも、勝手に、動くな」

 ………………。

「いや、そんな、人をクラゲみたいに」
「勝手に動くな」
「……いやオレこれでも成人してんですよ? 幼稚園児じゃあるまいし」
「時は勝手にふらふらするだろっ!」

 ツナも加わった。

「……い、いや、そんな馬鹿なっ」
「するんだよっ!」
「してんだよ」

 獄寺氏も加わっただとっ?

「……お、オレはそんな持病持ちだったのかっ?」
「いやいや、ふらふらっつーかな。ちょっと注意力散漫っつーか、好奇心旺盛っつーか……んまあ! 気にすんなよ! 誰にでもあるって!」

 励まされているのに、一気に叩きのめされた……!

「とりあえずの行動はそんなもんだな。正直な話、向こう側が異常過ぎて俺もどうでりゃいいのか分かんねぇ状態だ。人に頼ってねぇで自分達で考えるのがベストだな」

 打ちひしがれてる、当事者であるオレを差し置いて、深刻な雰囲気を漂わせている四人。そんな四人を見ては『巻き込んでいいものか?』と、ネガティなオレが、よく首をもたげるのだが、そうなるとすぐ様リボーン先生が「死ぬか?」と、銃撃してくるので、暗い考えは許されない。色んな意味で。


 とにかく、オレが弱気になっては元も子もないのだ。


 かと言って、圧倒的な、訳の分からない力を持っている相手に、勝気で行くのもどうかと思うけれど、如何せんもう、気持ちでどうこうする以外の策なんて一般人のオレは持ち合わせていない。ネバーギブアップ。お前がやらねば誰がや……あ、違うか。間違えた。

 とにかく、やる気だ、やる気。
 死ぬ気、と平行して、やる気だ。

「やる気出して空回られても困る。低空飛行でいけ」
「イエス、ボス」
(心の声で会話するの止めてくんないかなぁ……)
「つーか、やる気しかねぇようなもんじゃねぇか」
「いいじゃねーか! やる気ねーと試合も何も出来ねーぜ?」
「野球じゃねぇんだよっ」

 始まってしまった山さんとごっ君の喧嘩をBGMに苦笑する。

 やっぱり、この世界には……みんなには“こういう雰囲気”が良く似合う。奇妙奇天烈、時々真面目で、阿呆で格好良くて、弱かったり強かったり、訳の分からない世界。

 でも、今起きている“これ”は違う。

 確実にオレ側の“何か”に巻き込んでいるとしか思えない。そりゃあオレの方が、みんなよりかは全然、普通な人間だと断言できるけど、狙われてるのは明らかにオレだもの。オレなんか狙う価値もない、と言いたいぐらいだけど、残念ながらオレなんだもの。

 本当なんでだ。

 元々、物事を考えて答えを出せるような、上等な脳みそは持ち合わせていないので、すぐに考えるのは諦めるけど……やっぱ、こんな状況に追い込まれている以上、分かりたいじゃないか。

 何でオレなのか……っていう、理由を。

(……あー………………無双やりたい。ガンダムの)

 喧嘩(一方的な)の声と、それを止めるツナの声。
 それから、少し遠い生徒達が遊ぶ声。
 そんな、日常的な声が響く、青い空。


 ああ……と思う。


 ああ、やっぱり。
 ここで死ぬと、本当に死ぬんだろうな、オレは……と。

「大丈夫だ。死なねぇさ」
「………………そうだね」

 呟くオレに、呟き返すこの世界の人。
 随分、馴染んでしまった。
 漫画だと意識していた、この世界に。

 ……馴染み過ぎちゃいないだろうか。
 自分の世界じゃない、この世界に――――

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