◇ Ⅵ - ⅳ ◇ ⅩⅩⅩ ◇
「……何故?」
理由が必要なのだ、と言う。
けど、そんな事言われても、困る。
「知らん」
「………………」
たぶん……特に理由はないんじゃないかと思う。
例えば、凄く凄く大切にしているフィギュアがあったとして、もしそれが壊れたりしたら必死になって直すだろう。『新しいのを買えばいいじゃないか』なんて言われるかもしれない、でもそれじゃあ意味がない。そのフィギュアだから、大事なんだ。他の同じ形の物じゃ、何故だか意味がないのだ。
そこで『どうして?』なんて聞かれても困る。
『どうしても』だ。『どうしても』それじゃないと嫌なんだ。
今のこの気持ちは、それに似てる気がする。
そりゃあ『人間とフィギュア』に『命と直す』じゃ全く違うけれど。
『理屈じゃない』
そこだけは、確かに一緒だ。
「たぶん、アンタには分からないよ。この気持ちも感覚も」
「……そうか。そうなのだろうな。魂で動いているだろうから。しかし、そうか。君は、そう、答えてくれるのか……」
やっぱり、何かが変だ。
何が変なのかは、はっきりとは分からないけど、目の前の空中で停滞しているヤツが今日は妙に人間らしく見える。表情も、声も、何時もはもっと抑揚の無い、機械みたいなものなのに、今、オレの前にいるヤツは、ぎこちなさはあるけれど……やっぱり、何時もよりもずっと人間らしい。
……いや、だからって別に、手加減とかそんなん、してやんないけど。
「……くく、くくく!」
それ見た事か。油断してたら、ぶっ壊れた。
きっと今日は、オレがおかしいんだ。色々あって、調子悪いんだ。
「はっはっはっはっは! そうかそうか! その気概いっそ涙が出るな! ならばその大した気概にお答えして、先ほどの『もしも』の誓いを現実のものとしてやろう! さあ、希望の果てに苦しんで、言葉のとおりに、ここで死ね――――っ!!」
言葉を言い終えるやいなや、オレの目の前で赤い閃光が眩しく光った。
なんだかんだで、一度も当たった事のないそれだったので、ずっと雷の様なものだと思っていたのだが、どういう原理なのか、レーザー光線的なものなのか、参った事に、光速で繰り出される攻撃を避けられる筈もないオレは、見事にその閃光を食らってしまい、全身に斬られたような感覚が襲って、ふと腕なんかを見れば、大小様々な、まさに“斬り傷”から血が流れ出ている様子を目に留めてしまった。
『閃光なのになんで斬り傷なのだ』なんて、へたり込みながら、のん気に思ったりしたけど、目の前で光った閃光を思い出すに、あの閃光は、幾何学模様の、薄い無数の硝子板の様なもので出来ているらしかったので、雷食らって、びりびり、ではなく、針のむしろで、ずたずた、な効果の攻撃なんだろう。
……敵の手の内が見えても、残りHP一じゃあ。
……せめて銃が使えれば、良いのだけどな。
「……こ……の……っ」
「はっはっはっ! 容易いな! 人間はこんなにも容易い!」
全身にこさえてしまった、大小たくさんの斬り傷から血が流れ出ているのが良く分かる。痛みなんかは、ここまで来ると、痛いようで痛くないとでも言おうか、その感覚は麻痺してしまって正直助かる。
……この状況で助かるも何もないだろうけど。
目の前でヤツが笑っている時点で、この状況は感嘆するほどの絶望だ。
「時君!? どうしたの!? 時君!!」
「だ……だいじょぶ……だいじょぶだから、出てきちゃだめなんだぜっ」
「はひ! ダメです、出ます! 時さんとても苦しそうじゃないですか! 全然大丈夫じゃないです! お願いです! 開けてください!」
二人の声を受け止めながら、開いてしまいそうな扉に背中を預けて体重をかける。座った状態で寄りかかるようなさまだったので、ちょっと心許ない気がしたけれど、それでも足を踏ん張れば何とかなるものらしい。
ああ、オレ超格好悪いなあ。
「ツナみたいにはいかないけど……まだ銃があるんだぜっ」
手に握っている……と言うよりも、もう半ば引っ掛かっているような自動式拳銃を両手で握りなおして、目の前で、もう浮く事無く地面に足をついているヤツへと向けた。
そして引いた引き金は、乾いた音しか出さなかった。
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