◆ Ⅸ - ⅱ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
『時が消えた』
そういう連絡が入ったと、ディーノさんは言った。
ディーノさんの部下の人の話によると、目の前で靴紐を結んでいた時がいきなり、ぱっと、消えたんだそうだ。しかも、目をそらしていた隙にとか、目を瞑っていた隙にとかじゃなくて、見ていたら、本当に突然、いきなり、だったらしい。
勿論、その話を聞いたオレ達も、その場所へと向かった。
だけど今度は、京子ちゃんとハルまで消えてしまった。
こんな状況だからこそ、二人だけにするのは余計に危ないからオレ達と一緒に来て貰うはずだったんだけど、移動する直前――ディーノさんの車に乗る直前に、二人はオレ達の目の前で突然、多分時と同じだろう消え方でいなくなってしまった。
正直もう、何をどうしたら良いか分からない状態だった。でも、何もせずにはいられない。とにかく、三人を探す事に専念しようと、オレと獄寺君にディーノさん、それからディーノさんの部下の人達や山本も呼んで、手分けして並盛町を探した。
探してから、もう大分時間が経つ。
探し始めた時は、夕暮れだった空がもう暗い。
だって言うのに、三人はまだ見つからない。
「……ちくしょう」
泣きそうになる。
でも、泣いても意味がないのは分かっているから堪えようとする。
それでも、言う事を聞かない涙は流れそうになる。
「……十代目。もう少し、町外れの方を探しましょう」
「……うん、そうだね」
並盛はもう、ほとんど探した。
あと探してないのは、獄寺君の言うとおり町外れくらいだろう。別行動をしている山本や、ディーノさん達が探した後だったら、もっと探す場所は少なくなる。
言ってしまえば、絶望に近い状況だった。
だけど、それでも、オレ達は諦めたくなかった。逃げたくなかった。
「行こう獄寺君。絶対三人を見つけよう」
「……はい!」
もしかしたら、もう泣いていたかもしれない。
でも、大丈夫だ。オレはまだ、大丈夫。
みんながいる。三人が待ってる。
だから、きっと、大丈夫。
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