◆ Ⅸ - ⅵ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
思いっきり、青い眼を睨み付ける。「……それでも、オレはこっちを選ぶ」
ごめん、としか言いようがない。
「しろ……っ!!」
「ごめん……ごめんなさい」
「……もし、オレを殺した後に、兄さん達を殺したら、呪い殺す、かも」
「……君は本当にこちらを選ぶのか?」
「……そうだよ。こっちを選ぶんだよ」
「……どうして?」
「わがままだよ」
「綺麗だった……本当に、綺麗な世界だった。みんな、優しいし、暖かいし、全然『紙』じゃなかった。そりゃ……一部しか見れてないかもしれないけど、あんなに青臭く生きたって、オレの世界じゃ笑われて終わるだけだろうに、だけどここだと、あんなにきらきら輝けるんだ」
それがどんなに凄い事か分からないだろう?
「『誰かの為に死ぬ』……なんてヒーローみたいで格好良くない?」
「だから、ここで、死ぬのか、君は」
「そう……なる、のか」
「そうか……そうなのか」
「……っ! しろい!!」
「――――ありがとう」
「――――時っ!!」
今度は聞きなれた声と、自分の名前だ。「ワタシは君に感謝するよ。どれだけしてもしきれない。けれども、きっと、その感謝を君は蹴落とすんだろうな。当たり前だ。こちらの世界に閉じ込めるのだから。恨んで、当然。憎んで、当然。それが、当然」
ヤツがオレの方へと靴音を響かせながらに光の中を進んでくる。「別に、好かれようだなんて、都合の良い事は考えていないんだがね……私も焼きが回ったのかな。少しだけ……寂しいし、申し訳ないから、せめて、全力で君に力は貸すよ」
光が、うんと強くなる。「――――君の存在はここに確定される」
――――刻まれるモノは君の存在。賭けるべき代償は君の記憶。要求される機能は強さ。与えたらん魂は秩序。君は、この世界の英雄になる。これは君が選んで、掴んだ未来だ。選んだからこそ、与えよう。選んだからこそ、ワタシは願おう――――「どうか君に――――」
――――神の祝福を。
そこでオレの意識は、すとん、と落ちた。