◆ Ⅲ - ⅳ ◆
「あ……あの!」
「は……はい!」
「あ、あの! この子!」
「え……あ、ランボ!」
「……あ、ツナみっけ」
少年に不審に思われているのはもうどうしようもないので開き直り、声をかければやはり怯えられたので、とりあえずお近づきの印に少年が今なお探しており、かつ気づいていないだろう存在――アフロの子供を手渡してみることにした。
ちなみにその際、不良少年の意識がこちらへ戻ってしまいとても怖かった。
「え、な、なんでランボを君がっ?」
「ああ、そうか、テメェ……人攫いか!」
「違うの! ちょっと蹴っちゃっただけで!」
「蹴った!?」
あ、まずい――と思った時には既に遅く、言わなくていいことを口にしてしまったあとだったので、またも開き直り、とりあえずことの経緯を偽りなく正直にまくし立てることに……ようは、勢いで“不審”をねじ伏せる作戦を決行することにした。
――すると、正直に話したことが功を奏したのか、それとも単に茶髪の少年が心優しい子だったからか、分からないけれど、蹴ったこと、その経緯、その他諸々の話は――アフロの子供の言もあり――どうやら信じてくれるらしく、とりあえずほっとした。
「たく、ふらふらして歩くからそんな目に合うんだぞ。分かってんのか」
「は〜? ランボさんわるくないもんね〜。迷子のツナがわるいんだよ〜」
「おいアホ牛」
「……ぐぴゃっ」
「これ以上、十代目を煩わせたら、その立派なアフロむしり取るぞ」
「……ぐぴゃっ」
「……えと、あの、なんか、本当、ごめん。うるさかったろ? これ」
アフロを鷲掴み脅しをかける不良少年の様子に遠い目をしている茶髪の少年が、なぜだか非のあるこちらへと謝罪をしてきた。そんな少年の様子に不良少年が「十代目がこんなののために頭を下げる必要はありません!」と、アフロを鷲掴んだままにクオリティの高い助け舟を少年へ出している。やさしい。
「友達の言う通りだよ。その子を蹴っちゃったのは私の不注意でもあるし……」
「いやでも、あの、こいつ……見て分かる通り生意気で……迷惑かけたんじゃないかな」
「迷惑だなんて、そんな……子供なんだから、ちょっと元気なくらいがいいって、それに不可抗力とはいえ蹴っちゃったことを飴の一袋で許してくれるなんて中々男気に溢れてる子じゃないか――ね、大将」
性格なのだろう、やたら腰の低い少年は、子供がやんちゃしたのでは、と申し訳なさそうな顔をしている。どうやら『ランボ』に大変よく似ている子供は、常日頃の方も『ランボ』に似てやんちゃ坊主であるらしい。
しかし、幸い(?)なことに、こちらが迷惑をかけられたような覚えはない。
それどころか、飴の一袋で悪の所業を許してくれるという寛大な処置をしてもらった。
なので、少年へのフォローもかねて、今なお不良少年に鷲掴まれている子供へと『大丈夫だったよね』と、少し持ち上げるように同意を求めれば、やんちゃな子供らしい偉そうな同意が返ってきた。
どこかあっちらけな内容なのは、たぶんいつものことなのだろう。
「がははー! そうよー! ランボさんはちょうつよいのよー!」
「そうそう、ランボさんは心の広〜い、カッコいい男だよね」
「ん〜ふふ〜、もっとほめていいのよ。ゆるすよ」
叫びつつ、不良少年の手から華麗に抜け出した子供がこちらにどやる。
微笑ましい様子だったので、更にいくらか持ち上げてみれば満更でもないらしい子供が『もっと』と強請るようにこちらのズボンを引っ張ってきた。かわい……いや、そうじゃない。いや、かわいいが、そうじゃない。
子供を見てデレデレしている成人畜生というのは、お巡りさんが颯爽と登場してもおかしくない存在だ。なので『ほら、かわいい』……ではなく『ほら、いい子だ』となるべく平静を装ってから、お茶を濁すために少年へと視線を戻した。
しかし、ちょっと、戻すのが遅かった。
茶髪の少年だけでなく、もう二人の少年までもが驚いた様子でこちらを見ている。たぶん幼児相手にデレデレしている成人畜生を見てドン引きしてしまったのだろう。口を閉じることすら忘れてこちらをまじまじと観察しているお巡りさん呼ばれる。
「あ……あの、えっと……」
「……あ、いや! ごめん! ちょっとびっくりして……」
そりゃあ、幼児を見る変態に遭遇すれば誰しもそうなるお巡りさん呼ばれる。
……と、焦るが、けれど、少年の思っていることはそんなことではないらしかった。
「その……なんていうか、そいつってホントうるさいしわがままなんだよ。言うことだって全然聞かないし……だからっていうか、見たことないくらい素直だったから、なんかすごいなーって驚いて」
言いつつ申し訳なさそうに頭をかく少年は、つまり普段見ないこの子供の素直っぷりに驚いてしまっていたということか、なんだびっくりした。てっきりお巡りさん呼ばれると思って身構えてしまった焦った。
でも、言われてみれば確かに『やんちゃです!』と言わんばかりの物言いばかりしている子供だったように――今更だけれど――思う。きっと少年たちは普段から苦労しているのだろう。
そう、それこそ……
「ああ、なんだ、そういうことか……警察呼ばれると思った」
「…………え?」
「あ……いやいや、なんでもない、なんでもない――うん、でも、そうだね。すごくやんちゃそうな子だよねこの子。なんか見た目だけじゃなくて中身もあの『ランボ』にそっくりっていうか、瓜二つっていうか……まあ、さすがに手榴弾やらバズーカやらはアフロの中にはないんだろうけど、ホントそっくり――」
……それこそ、きっと“あの作品”に出てくる“彼ら”のように、この三人の少年たちは日々をこの子供に振り回されて過ごしているのだろう……そんなことを思いながら口にしたその言葉に、もちろん、深い意味なんてなかった。
ただ、ほんの少し“彼ら”と同じ格好――俗にいう“コスプレ”というものをしている少年たちだったから、そんな感じで“あの作品”を絡ませた話でも振れば、そのまま楽しく会話出来るんじゃないかとか……まあ、そんなくらいの他意は確かに含んでいたし、おそらくそれがばれたんだろうけど……
よもや、そんなくらいで、あんなことになろうとは、正直、予想できるはずもない。
「――ホントそっくり………………あれ?」
予想した返答は『そうかなあ』とかの謙遜の類だった。
そこから、そうですよー、クオリティー高いっすよー、という感じで会話に花を咲かせて仲良くなろう、というのが作戦の全容だった――だったのだけれど、やはり生身の対人コミュニケーションというのはゲームと違ってとても難しいものだった。
なぜだか少年三人は凍り付き、こちらへと先ほどとはまた違う視線を寄越している。
何がどうしてそうなってしまったのか、原因は分からないけれど、とりあえず、この微妙な空気はそれを作った本人が打破すべきだろうと思ったので、どうにか場を盛り上げるために“あの作品”の話を持ち出すことにした。
何せ、これほどの超クオリティなコスプレをするほどの三人だ。
『きっと、絶対“この作品”好きじゃん!』……って、普通思うじゃあん……
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