Ⅸ - 人皆旅人

◆ Ⅸ - ⅱ ◆

 ――――そして、学校屋上。
 昼食をとりながら言葉を交わすには、絶好の場所だ。


 ツナ達に出会って閣下(雲雀恭弥)が去った後。ごっ君からここにいる理由を追求された訳だが「小生、お腹が空いた故ご飯を食しながら話そうではないか」と推奨し、屋上に至る。

 ちなみに、弁当の無いオレの昼食は、三人に案内してもらった購買の商品だ。結構品揃えの豊富な購買に感嘆しつつオレが買ったのは、桃の紅茶一ヶ。焼きそばパン、ツナマヨおにぎり、のそれぞれを二ヶずつ。結構食べるんだね、とか言われながら、ごっ君が買っていた素麺パンなる未知のものが大変気になったのは、当然だ。

 そんな過程を経て、生徒達で賑わう屋上にて、先ほどの質問に至る。

「ええと……ここにいる理由はさっき話したとおり、ツナにお箸届けに来た次第でございまして……まあ、他意はなきにしもあらずだけど……」

 並中にいる事情は、ツナに箸を渡すのと同時にしてある。
 だが、三人が知りたい疑問は恐らくこちらの方が大きいに違いない。

「……あー……そんで、閣下に追いかけられていた理由は……」
「「「理由は?」」」

 あはん、皆して言うなよ。

「……理由は」

 理由は……思案の間、約五秒。

「何ででございませうか……?」

『不審者だからか?』って言って、すぐに自分で訂正。ちゃんと職員室で許可とったし、不審者扱いされる筋合いはない……が、在校生たる彼ら曰く『雲雀恭弥にそんな理屈は関係ない』だそうだ。

「それに、ほら、雲雀さんって先生達のこと先生として見てないから。あと雲雀さん、実質上ここの頂点だし、最強だし……」
「ああ、うん、知ってた……っていうか、忘れてた……嫌になるほど知ってたはずなのに、油断してた……多分、追っかけてきた理由はオレの存在が癇に障ったから滅殺しようと追いかけて来たんだろうね。害虫駆除ののりでさ」

 嗚呼、生きてる事のなんと素晴らしきかな。

 ちぅ――――と、遠い目で桃紅茶を吸いながら言えば、ツナからも同意を得て、更にはオレのアンニュイが、ツナにも連鎖。ツナとはいい関係が気付けそうな気がしてならない。

「しっかし、あのヒバリが他人を見逃すなんてありえねぇ。明日辺り槍でも降ってくんじゃねぇか? もしくは、もっと凄いもん……笑えねぇが」
「はは、ホントにな! ……あ、そういや、時」

 なんだい山さん。今から二個目のおにぎり貪り食う所なんですけど。

「お前、学校――並中通うってあの話、どうするんだ?」

 いくらなんでも、ちょっといきなり過ぎるだろ?

 ああくそう! ……心配してくれる少年の心に時さん感涙っ!

「う、うん。そうだけど、オレ、命かかってるからね」

 行くこうと思う――そう言いかけて、口を噤む。
 なんだ? どうした? と、山さんが首を傾げる。
 ツナ達もオレを見てる。


 行きたい。


『こんな別世界で何を悠長な』とか、またもオレの世界の友達郡に袋叩きにされそうな考えだろうが、よくよく考えてみて欲しい。がむしゃらに帰る方法を探した所で、一体全体、こんな一般オタクに答えが導き出せようものだろうか? 

 答えは胸を張って、否だ。

 そんな青狸的次元の科学的根拠を、こんなオタクが出せるわけがない。学者にも無理なのに、無茶言うな、だ。だからオレは持っているポジティブシンキングをフル活動させて、こう思った訳なのだ。

 この滅多にないであろう状況を楽しんでおくに越した事はない。

 レッツポジティブシンキン。
 帰れる方法は、ながらで探せばいいと思う。
 行き当たりばったり、とか思った人は、帰り方を論文で出して下さい。

 兎に角、そんな感じではあるが、オレは学校に是非行きたい。

 勉強はそんなに好きじゃないので、実に苦しいけれど、ツナ達もいるしその辺は別にいい。むしろ、ファンとしては嬉しい限りだし、オレの命もかかってるので、もう一回ぐらい中学生エンジョイしてやる。

 ……がしかし、だ。

 学校に通う、と言う事で大きな問題点がある。その問題点は、現在未成年の姿で、この世界に戸籍もないオレには、どうしようも出来ない問題である。



 学費だ。



 世の中には、色々な事情を待った子供達が、義務教育を受けられるよう、そういった人々を支援するシステムがある。

 ある……が。

 オレは多分、受けられないだろう。オレは元々この世界にはいない人間だ。つまりは、戸籍がない。そんな得体の知れない人間を支援してやるほどこの国に――オレのいた日本と同じなら――そんな余裕はない筈だ。なら働いて払う、といった選択肢もあるんだろうが。さて今の時代、こんな戸籍も無い怪しい中学生を雇ってくれる所が何個あるのか。

 ……閣下が、学校に来い、と言ったのは明日。

 つまりは、この問題を明日までに解決しないとオレの命はない訳で。

「……ツナ」

 押し黙っていたオレがいきなり言葉を発したのに、三人が少し驚いて、三種三様の、どうした? を投げかける。

「オレの墓石はミクちゃんがいいな……供え物には漫画希望」

 霊体になっても気合でページめくるから。
 そんな一種の迷言、言ったら「何言ってんの!?」

「だって、オレ学校なんて行けない……無法者だから」

 学校行く金なんて無いもの、って言ったら、ツナが母さんに頼むよ、とか言い出しそうなので言わない。これ以上は、迷惑かけられない。

「……は……そうだ……オレ、旅に出る」
「「「は?」」」
「うん、そうしよう。 閣下の手の届かない所に行こう」

 外国がいい。
 きっと、いや多分、閣下も手は出せまい。
 ……うん多分。

「ちょっ落ち着いてよ時! 何をどうしたいのか分からないけど、旅って何言ってんだよ! そもそも中学生がそんなん出来るわけ――――」

 と、オレを心配するツナの言葉が途中で切れた。

 何故? 遮られたから。
 何に? 人間の言葉に。
 誰の?

「旅に出てもすぐに引きずり出してあげるよ。未開拓の亜熱帯奥地だろうが、破棄された坑道の底だろうが、隔離されたどこぞの施設の中枢部だろうが……ね。逃げようなんて考え、今すぐ抹消するのが賢い選択だ」

 雲雀恭弥閣下、御降臨。
 ああ、オレ死んだ……!

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