ⅩⅤ - 人皆旅人

◆ Ⅴ - ⅲ ◆ Ⅹ ◆

「…………………………………………………………何やってんだ白井」

 聞いただけで分かるほどに呆れた声は、オレの耳にはとても馴染みのあるもので。そしてその声は多分、この場に居るおじ様たちも知っている筈で。

 突然聞こえてきたその声に、その場の一同シンクロ。オレも、ロマーリオさんも、ディーノさんも、その他メン・イン・ブラックも、声のした方へと一緒になって視線を向けた。視線の行き先はオレの背後、ロマーリオさんの背後と言った方が分かり易いかもしれない。オレにいまだ銃を向けるロマーリオさんの肩越しに見えたのは、日本人では到底出ない銀色の毛髪に、何故だかタコと呼ばれるその髪型。

「ごっ君んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!!」

 銀色の髪をした少年――獄寺隼人の登場で周囲が沈黙に包まれた中、突然叫びだしたオレに、その場にいた全員が体を揺らす。そして、ごっ君に向かって駆け出すオレ。駆け出した瞬間、突きつけられていた銃口がオレの肩へとえぐり込むように当たったが気にしない。オレの思考回路は既に現状からエスケープ。駆け出した後は、ただひたすらに、ごっ君の足へと飛びついて、しがみついていた。

「助けてごっ君! 時さん死ぬ! 殺される! まだ死にたくないい! もっと生きていたい! マリオに踏まれて潰されるのだけは嫌だあっ!」

 どっかの栗みたい死ぬのだけは嫌だあ!

「ばっ!! 足に引っ付くな! うっぜぇ!」
「ひでえ! お前それでも友達か! それでも不良か! それでもマフィアか! それでもイタ公か! それでも右腕か! それでもタコヘッドかあ、くらあ!」
「最後関係ねぇだろがっ!」
「お友達がメン・イン・ブラックに殺されるか、ナニされるかなんだぞ! 何の関係もない一般市民がイタ公に、その一生を無下に銃弾で撃ち抜かれそうなんだぞ!!」
「知るか……っ!!」
「タコでなし!!!!!!!!!!!!!」
「ヒトだ!!!!!!!!!!!!!!!」

 助けてくれると期待して縋り付いたタコヒーローに、あえなく助けを蹴落とされ、時さん憤慨。この恨みはらさでか! と縋り付いていたごっ君の足を、思いっ切り自分の方へと引き寄せて、その後起こるであろう事にごっ君の目を見上げながらほくそ笑んでやった。そんなオレの目を背後へと倒れながら恨めしそうに見るごっ君。

 はっはー! ざまあ!

「白井てめ「ぐご!!」――ぬあ゛……っ!!」

 ……ん?

 倒れていくごっ君を、悪役よろしくな凶悪顔で見ていたら、ごっ君は倒れずに、その背後から奇声が上がった。次いで、体勢を立て直したごっ君が慌てふためき、自分の背後へと心配の目を向ける。どうやら彼の後ろに誰かが居るようなのだが、何分時さんはごっ君の足元にいるので、その人物の顔はごっ君の背中に隠れて見えない。しかし、その人物が何処の誰なのかを認識するのに、あまり時間は要さなかった。ごっ君が“そう”呼ぶ人物はこの世に一人しか居ない。

「すみません十代目!! お怪我はありませんか!?」
「だ……だい……大丈夫……っ」
「よ……良かった………………っオイ白井ぃ……!」
「きゃーーーーーーーーー! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ツナが君の後ろにいるなんて知らなかったんだよお!」

 鼻頭を押さえて、ごっ君の後ろから顔を見せたツナに驚きつつ、怒り狂うごっ君に恐怖。下にいるオレは必然的に見下される形になるので、普段から目つきの悪いごっ君は、更に目つきが悪くなって、それはまるで阿修羅の如く!


 今オレがすべき事は決まった。


 お怒りのごっ君を静める為と、オレの行動に思わぬ被害をこうむってしまったツナの為。地べたになんか這い蹲らずに、目線を合わせて気持ちを込めて、兎に角謝罪。

 日本人よ、礼を忘れる事無かれ!

「ごめんよツナ! ごめんよツナ! オレはごっ君が華麗にすっ転んでくれたらな、って、思っただけなんだよ! 決してツナに被害を与えるつもりなんてなかったんだよ!!」
「オレは良いのかよ」
「いいんだよ。とにかく不可抗力だったんだよっ! ごめんよツナ、時さんの事嫌いにならないで! 洗濯物一緒嫌、なんて言わないで! お風呂一緒嫌、なんて言わないで!!」
「言わないけどさ! て言うか風呂なんて一緒してないだろっ!!」
「やーー! お父さん拒絶された!!!!」
「いい加減に し ろ っ !!」

 暴走機関車を止めたのは、言わずもがなオレの相方、突っ込み獄さん。何時からなったのかは知らない。でもグーはやめて欲しい。グーで真上から殴らないで欲しい。痛い。

「スミマセンデシタ……ゴメンナサイ……ソーリー……」
「ご……獄寺君……今のは痛いんじゃないかな……?」
「いいえ十代目、こいつの頭はこれくらいしないと衝撃が脳内まで行き届きません。それに十代目の寛大な御慈悲をこんなのにくれてやるなんて恐れ多いです」
「ぐお……ごめんなさいっ! こんな大人でごめんなさいっ!」
「後で反省文書かせてやるから覚悟しろよな、白井」
「ぐおお……! ごご、ごめんなさ、それは、それだけは勘弁して下「んあ゛あ!?」了解しました局長。切腹の準備は出来ています」

 いざと言う時のごっ君の威厳は半端ない事が分かった。

 余りにも顔が怖かったので、逆らわずに敬礼したオレに、苦笑したツナの顔が視界に入った。学校から分かれて落ち着いたのか、ちょっとだけいつもの顔に戻っている気がして、その苦笑にオレも笑顔になる。

 ……なったらごっ君の怒りが降り注いできやがった。
 畜生、タコヘッドっ。

「……お、おいツナ? コイツお前の知り合いなのか?」

 殴られた痛みに、ごっ君へとぐちぐち言っていたら、背後から声。後ろを振り向いて目に飛び込んできたのは、黒服のおじさん達をバックに携えた金髪兄さん……ディーノさんがコチラに苦笑を向けていた。

 忘・れ・て・い・た。

****************************** Next Page.

BACK   NEXT
TOP    SITE TOP