ⅩⅤ - 人皆旅人

◆ Ⅴ - ⅴ ◆ Ⅹ ◆

 ――――ロマーリオさんに背負われて沢田家に帰還したオレは、奈々ママに少しだけ驚きを与えた後に、すぐさま手当てを施された。キッチンの椅子に座らされて、奈々ママが救急箱を持ってきてくれて、ロマーリオさんがテキパキ、テキパキと手当てをしてくれて。しかし、例えテキパキなれど、傷を拭く時の痛みとか、消毒の染み具合とか、その辺は如何せんどうしようもない。治療の際の呻き声は、ご愛嬌だ。

 そして包帯を巻き終えた訳だけれど。

「器用なんだか、不器用なんだか……」

 椅子に座りながら左足を掲げて苦笑。

 傷を手当てする際の手際は、流石と言うかなんと言うか、場数を踏んでいると言う感じだったのだが、いざ包帯を巻きに掛かるとあっちゃ行ったり、こっちゃ行ったり、いや勿論包帯がね。そして結果、オレの左足はピラミッドから発掘されたミイラの様な風体になってしまった。

 そんなオレの言葉に対して「ほっといてくれ」と自覚でもあるらしく、顔を赤くして居間の方へと去っていくロマーリオ氏、によによ……していたら、居間からロマーリオさんと入れ替わるようにして、ディーノさんとツナ達が現れた。

 ので、まざまざと先ほどの報復をしてやるのである!

「見ろ! これが男の荒療治!!」
「うっ! そ、そう言ってやらないでくれっ。あいつ結構気にしてるんだよ。それに、そんな見た目でも、結構治りが早いって評判なんだぜ?」
「一般ピーポーは銃が怖いって評判なんだぜ!」

 両方とも満面の笑みで言ってやった。
 ふはははは(お腹の底から)思い知れ!

「……いや……うん……悪かった」
「謝んじゃねぇよ、跳ね馬! このバカが付け上がるだろうが!」
「な! 失敬な! オレはそこまで人でなしじゃねぇよ、タコでなし!」
「ヒトだ!!!!」
「ま、まあまあ獄寺君、時だって悪気がある訳じゃ……ないはずだから」
「ふはは! ツナ今、間が空いた! バロス!(小文字のダブリュー)」

 ちょっと前までは会話すらまともに出来ない状態だったオレ達なのに、今ではもうなんかすっかり元通り。ボケと突っ込みのハーモニーが、何時もの感じに戻ってきた気がする……自分で言ってても、ちょっと意味が分からない。

 しかしまだ、何かがぎこちないので、もう少し時間が必要な様だ。

「……で、だ」

 オレ達学生ズの会話が盛り上がっている所へ、遠慮がちにディーノさんが声と左手を上げた。視線を自分の左にいるツナの方へ向けながら、己の正面にいるオレの方をちら見。

 逆じゃないかね。普通は主人公を基点に……て言うか、大人ならもう少しばかり落ち着きをだね。うむ、オレが言えた義理では、大いにないのだけれど。

「……その、さっきから気になってたんだがな、ツナ」
「はあ、どううしたんですか?」
「うん……結局コイツ何者なの?」
「旅人です」
「は?」

 何だそんな事かと思い、すかさずディーノさんの疑問に答えてあげた。
 そんなオレに続いて、ごっ君とツナも証言。
 ディーノさんが、わたわた、している気がするけど気のせいだ。

「旅人だな」
「……は?」
「……旅人、かなあ」
「…………は?」
「旅人です」
「………………は?」
「ファミリーだぞ」
「「「「え????」」」」

 一同、突然聞こえてきた、その場のリズムを乱す言葉に、反射的に声のした方へと視線を向けた。みんなが視線を集中させたのはオレの右手側にある、よく食事を取る机の上だ。そしてその上にいる、ダンディな黒スーツに、ダンディーな黒帽子の、何故かカメレオンを帽子の上に乗せた、つぶらな黒目のベイビィ。

「「「リボーン(さん)!!??」」」
「ちゃおっす」
「ちゃおっす旦那」

 平然と挨拶してきやがったよこの赤ん坊。

「所で旦那、ファミリーって何かな」
「なんだ、そんなもんも知らねぇのか?」
「知ってるけれどもが! 聞き捨てならんですよ。オレはファミリーに入るなんて一言も言ってないし、旦那と相談しあった覚えもないっす」
「もう決定事項だ。ほら」

 そう言った後に、小さな右手で何かが書かれた紙を持つリボーン。
 あれデジャブ。何この嫌な予感。

「旦那……何かな、これ」
「契約書だぞ」
「……何のかな」
「お前がボンゴレに入ったって言う契約書だ」
「え〜でも時さんこんな所に自分の名前書いた覚えないんだけどな」

 あれえ?

「………………………………ふ」
「………………………………ふ」

 リボーンの手に持たれた紙には、今まさに話したとおりの内容が書かれていた。がしかし、今、まさに話したとおり、オレはこんな紙っぺら今見たばっかりだし、触れた事も無ければ、その紙の上に筆を走らせた覚えも無い。

 つまりこれは、あれである。
 何日か前に恐怖の大魔王に実行された、あれである。

「オレの筆跡返せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 筆跡偽造である。

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