◆ Ⅴ - ⅵ ◆ Ⅹ ◆
筆跡偽造は文書偽造罪にあたる、刑法に定められた犯罪である。
「もう書かれちまったもんは、しょうがねぇだろ」
「なくない! しょがなくない!」
「だって……だって……時に、書け、って言ったって書いてくれないだろうから、代わりに書いただけだもん。俺は何も悪くねえもん……」
「ふ、ふふふふ……ツナの気持ちが今ひしひしと分かったよっ。このおっさんに一体全体、どう復讐してやればいいだろうか。やっぱ閣下とセットで呪ってやるのが妥当なんだろうかっ!」
「落ち着け、お前が言うと洒落にならねぇ」
「近くに神社はあったかな! なるべく人が来なさそうな!」
「「「………………」」」
「ランボさんも? ランボさんもキライになったからのろう?」
顔は、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになっていて、オレのズボンを引っ張っている左手には結構力が入っている。右手の先には心細くて一緒に来てもらったのか、イーピンが困った顔で立っていた。「どうしたランボ? 時さんがランボを嫌いになる訳な無いだろう?」
足元のランボをイーピンごと抱きかかえて、膝の上に置く。
「ううっ……だって、トキの足、ランボさんのせいでボロボロじゃんっ」
「……ん?」
「なんだー、大将ー、いつもなら『ランボさんは悪くないもんねー』って言うのに、今日はやけに素直だなー、何か悪いものでも食べたのかー?」
「……っう!」
「大丈夫だよーランボ。時さん怒ってないから」
「……う?」
「あれは、ランボが悪い訳じゃないって。不可抗力。不可抗力。世の中どんな力が作用して何が起こるか分からない、ってー事だな」
「……ランボさんわるくない?」
「悪くない、悪くない。強いて言うなら、あんなもん持たせたボヴィーノのボスが悪い。更に言うならあんなもん開発した、軍事バカが悪い」
「それにランボは、ちゃんとオレに謝ってくれただろう? それで良いんだよ。心配してくれてありがとうな、ランボ」
そう言ってアフロ頭をわしゃわしゃと掻き混ぜてやったら、やっと自分の状況を理解したようで、嬉しそうに顔を綻ばせた。そんなランボを見て安心したのか、イーピンも一緒になって笑顔で、わいのわいの。
「良カッタ、ランボ! 誠心誠意!」
「うぇへへ〜! ねぇトキー、もっかいなでて〜!!」
「お〜お〜、元気になったな〜」
「で、筆跡返せ」
「っち、忘れとけ」
「……入ったらどうだ?」
「「「え゛???」」」
「いや、今の……ボヴィーノん所の、ちっちゃいのとの会話見てて思ったんだけどな、結構いい要になるんじゃないかと思って……なんだが」
「……かなめ? ……お、オレが?」
「ああ、なんつーか……うーん、上手く言えないんだけどな、多分リボーンもそう思っての事だろう? こいつをファミリーに入れるってのは」
「それだけじゃねぇけどな、まあそんな所だ」
「嘘だ! 適当だ! 適当に決まってる!」
「分かった。ちょっと歯ぁ食いしばれ!」
「いや、ちょっと待て旦那! 主にその銃! それからディーノさんも! オレの弱さを甘く見るな! 逃げ足は速くても、強さが微塵もない!」
「雲雀に一発食らわしたじゃねぇか」
「いやいやいやいやいやいやっ! 思い出させるな! あれは運命のいたずらだ! 不可抗力だ! 運が悪かったんだ! アンラッキー!」
「獄寺の攻撃回避したじゃねぇか」
「コラコラコラコラコラコラっ! 本人の前で何を言うんだね! あれはオレの生きる事への執念でしかない! ゴキブリ並みの執念なだけだ!」
「尋常じゃねぇ逃げ足あって、尋常じゃねぇ運もあって、尋常じゃねぇ生きる事への執念もあって。ばっちりじゃねぇか」
「て言うか、尋常じゃねぇ、付けてるだけじゃないか!」
「はは! いいじゃねぇか! リボーンがここまで言うんだったら問題ねぇだろ! リボーンお墨付きの尋常のなさなんだよ、お前は!」
「おおおおいっ! 何気に酷い事言ったな今畜生! おいごっ君、君からも言ってやってくれ『こんなヘタレは盾にもなりゃしない』ってさ!」
「いや、盾にはなるだろ」
「分かったよ。なるよ。なればいいんだろ」
「ええ゛!? だ、大丈夫、時!?」
「大丈夫だよ。手からなんか『波』は出ないけどさ、空飛んだり、融合したり、スーパーなナニになったり……出来ない民間人だけどさ」
「十代目……こいつ、脳細胞が死滅しています」
「は……はは……」