◇ Ⅵ - ⅱ ◇ ⅩⅩ ◇
――――汗がしきりに流れ出る、暑い夏の日。
一週間しか生きられない蝉が、その時間を惜しむ様にして暑い暑い陽の中にその声を響かせている。木々の多い田舎では、その蝉の数が半端ではないので、うるさいね、などの声を近所のおばさん達が呟いていたのを何度か耳にした。
だが、幼い子供にとっては、そんな言葉余り重要ではなく。
うるさい、と言う言葉も、蝉の鳴き声も、どちらも自分の傍で聞こえる音でしかなかったのを覚えている。何分、あの年の頃にとって“夏”と言うのは、如何にその日一日を楽しく過ごすか、が最大の課題だ。正直、大人達の愚痴になんて付き合っている暇があれば、夏の遊びに時間を費やす方がずっと有意義である。
山遊びに、虫取り。
川遊びに、魚釣り。
夏祭りに、射的の景品。
駄菓子屋で買ったラムネを飲む場所は、皆で探した涼しい竹やぶ。
毎日毎日、同じ場所で似たような遊びをするのだが。
日毎に違う楽しさがあって、不思議と飽きる事なんてなかった。
確かあの日も、近所の幼馴染と近くの川に釣りをしに来ていた筈だ。
何度となくして来た自給もかねての魚釣り。
裕福な家庭ではなかった為に、高い物は食べられなかったが、田舎であった事が幸いして、貧乏ながらもそれなりに美味い物にありつけた。遊びの延長である魚釣りの産物も、持って帰れば母さん達は喜んで、美味しいご飯も食べれて、一石二鳥。
だからオレは、一生懸命疑似餌を作って、魚釣りにいそんしんだ。
母さん達の笑顔を見る為の行動。
ただそれだけの行動。
何も悪い事は無い。
ただ喜んで貰おうと思っただけ。
だけど、世界は。
どんなに楽しい時間をくれていたって。
いつも唐突に無情になる――――
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