ⅩⅩⅦ - 人皆旅人

◆ Ⅶ - ⅰ ◆ ⅩⅩ ◆

 山本の背中を追って時の部屋に入った。


 時はもの凄く苦しそうに息をしていて。
 何故だか山本も、苦しそうに時が横たえるベッドにすがり付いていて。
 シーツを握る拳と、幅の広い肩が、少し震えていた気がする。


 オレと獄寺君、それからハルは、そんな山本の背中を目にしてしまって、時の部屋に入れないまま、扉の傍で立ち尽くした。


 あんな背中に掛ける言葉を、オレは知らない。
 なんて言えばいいのか、考える事すら許してくれない。

 時の苦しい呼吸音が静かに響いて。
 山本の押し殺してる嗚咽が耳を掠めて。


 ああ……、と思った。


 ああ、どうしてオレは、友達がこんなに苦しんでるのに何も出来ないんだ。友達が傷ついてるのに、友達が苦しめられてるのに、何でオレは何もしなかったんだ。何も難しい事なんてないじゃないか。何も悩む事なんてないじゃないか。

 言えば良かったんだ。

 『ちゃんと話合おう』、って。
 『時の話し聞こう』、って。
 『本当にやったのか?』、って。
 『何があったんだ?』、って。

 怯えないで、怖がらないで、ちゃんと言えば良かったんだ。


 なのにオレは……。


 ……ああ。
 やっぱりオレは、ダメツナだなんだ、って。
 今、ひしひしと思い知らされた――――

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