◆ Ⅶ - ⅰ ◆ ⅩⅩ ◆
山本の背中を追って時の部屋に入った。
時はもの凄く苦しそうに息をしていて。
何故だか山本も、苦しそうに時が横たえるベッドにすがり付いていて。
シーツを握る拳と、幅の広い肩が、少し震えていた気がする。
オレと獄寺君、それからハルは、そんな山本の背中を目にしてしまって、時の部屋に入れないまま、扉の傍で立ち尽くした。
あんな背中に掛ける言葉を、オレは知らない。
なんて言えばいいのか、考える事すら許してくれない。
時の苦しい呼吸音が静かに響いて。
山本の押し殺してる嗚咽が耳を掠めて。
ああ……、と思った。
ああ、どうしてオレは、友達がこんなに苦しんでるのに何も出来ないんだ。友達が傷ついてるのに、友達が苦しめられてるのに、何でオレは何もしなかったんだ。何も難しい事なんてないじゃないか。何も悩む事なんてないじゃないか。
言えば良かったんだ。
『ちゃんと話合おう』、って。
『時の話し聞こう』、って。
『本当にやったのか?』、って。
『何があったんだ?』、って。
怯えないで、怖がらないで、ちゃんと言えば良かったんだ。
なのにオレは……。
……ああ。
やっぱりオレは、ダメツナだなんだ、って。
今、ひしひしと思い知らされた――――
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