◆ Ⅸ - ⅵ ◆ ⅩⅩ ◆
ぎゅっ、と、手の中に時計を握りこんで黙っていると、えぇっと、とツナが口ごもりながら、何やらを話しかけてきた。
「えぇっと……それで、と言うか、だからと言うかなんと言うか、なんで時計がココにあるのかは、実はオレ達も良くはも知らないんだけど……」
「…………?」
要領を得ないツナの言葉で、伏せていた顔をツナの方へと向ける。
左側へと視線を向ければ、眉間に皺を寄せて難しい顔をしているツナ。
「う〜ん……言っても……良いよな? どう思う山本?」
「オレは言った方が良いと思うぜ。別に言っちゃダメだなんて言われてねーし、本人がしらばっくれてんだからさ、問題ないって」
「そ、そう、だよな。あ! お、オレが言ってたとか内緒だからな!!」
「はは! オッケー!」
話が見えない二人の会話に、オレはボーっとする頭で困惑。
そんなもんだから、段々と、意識が遠くなりそうになる。
泣いたので疲れたのもあるが、ほっとしてしまったから、今実に眠い。
「えっとさ、五日前……丁度時が家に運ばれて来た日なんだけどさ」
運ばれてきた……だからオレはここにいるのか。
……何で、運ばれたんだろうか?
「その日にさ、獄寺君が途中でウチから居なくなってさ」
ごっ君がツナの傍離れるなんて、珍しい事もあるもんだ。
「で、日が暮れた頃に、いきなり……その、血、付けて帰ってきてっ」
ツナの声が裏返った。
ごっ君、怪我でもしてたんかな。
相変わらずだ。
「そのまま時の部屋に行っちゃって、したらまた何時の間にかいなくなってて、その後なんだよ、母さんが時の時計見つけたの」
………………。
「…………?」
「あー……って、時? 起きてるか?」
「…………? ……テラ……ねむ」
「はは! じゃぁ説明するけどな、つまり、あの時計を見つけてきたのは獄寺じゃねぇかな、って事なんだ」
…………え。
「……なんで……?」
「え゛? さ……さぁ……なんでだろう?」
「それは……ない。オレ……ごっ君に嫌われてる。怒られてばっか、だ」
ごっ君が、オレにそんな事してくれる理由が、悲しいかな、全く持って思い当たらない。寧ろ、オレは彼にどやされてばかりだ。何かしらに付けて、ごっ君に注意されて反省して、また怒られて。
……うん……情けない。
どうにも、ごっ君には嫌われているとしか思えなくて、気が滅入ったオレは背中を丸めて、コタツ布団へと顔をうずめた。
そう言えば、あの時もどやされた。
「あん時だって、オレ怒られたし……ごっ君オレの事嫌いだよ……」
「……あの時?」
「川で……ヘラヘラアホ面、とか。閣下ばっか頼るな、とか。独りは、平気か……とか」
「そ……う、なんだ」
「……んな事一言も」
「……独り……なんて、平気な訳……ない」
「……時?」
皆が頼りないなんて無い。
皆が信用出来ないなんて無い。
そんな事は、欠片ほども、ミジンコほども無い。
「でも、オレ、年上だし、しっかりしなきゃだし……皆に頼るとかカッコ悪いし……迷惑かかるし……」
「……ヒバリはいいのかよ」
返ってきた声に、体が跳ねた。
隣の二人も反応したのが諸に分かる。
声が聞こえてきたのは前方、恐らく廊下側の扉。
そしてその声は、今まさに、話に上がっていた人物の声。
「ごごごご獄寺君!!!!」
「お前いきなり!!」
「ヒバリは頼ってたじゃねぇかよ」
二人を無視して――いや、眼中に入っていないだけかもしれない――ごっ君は言葉を続けた。
「ヒバリだって、オレ等と同じ中坊じゃねぇか、オレとアイツの違いは何だってんだよ」
「……だって、ヒバリー……人間じゃないし……」
「いや、分かるけど一応人間だから……っ」
「っんな理由で誤魔化せると思ってんのかよ……っ」
「……だって……」
「だってナンなんだよっ!!」
「おい……っ」
いきなり声を張り上げたごっ君を、山さんが立ち上がって制止する。
が、ごっ君はそんな事に構いやしない。
「年上だからなんだっ! 迷惑掛かるからなんだ! そんなのどうでもいいだろうが!!」
「……だ……って……っ」
「信じてんなら……! 少しでも信じてんなら! 真正面から縋りついて来いよ……っ!!」
カッコ悪ぃとか思わねぇから。
年上だとか関係ねぇから。
迷惑だなんて、思う訳ねぇから……。
「お前の事、嫌いじゃねぇから、ダチだって、癪だが、思う、だからっ」
――――独りが嫌な時は、縋って来いよ、二十歳っ。
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