ⅩⅩⅨ - 人皆旅人

◆ Ⅸ - ⅵ ◆ ⅩⅩ ◆

 ぎゅっ、と、手の中に時計を握りこんで黙っていると、えぇっと、とツナが口ごもりながら、何やらを話しかけてきた。


「えぇっと……それで、と言うか、だからと言うかなんと言うか、なんで時計がココにあるのかは、実はオレ達も良くはも知らないんだけど……」
「…………?」


 要領を得ないツナの言葉で、伏せていた顔をツナの方へと向ける。
 左側へと視線を向ければ、眉間に皺を寄せて難しい顔をしているツナ。


「う〜ん……言っても……良いよな? どう思う山本?」
「オレは言った方が良いと思うぜ。別に言っちゃダメだなんて言われてねーし、本人がしらばっくれてんだからさ、問題ないって」
「そ、そう、だよな。あ! お、オレが言ってたとか内緒だからな!!」
「はは! オッケー!」


 話が見えない二人の会話に、オレはボーっとする頭で困惑。
 そんなもんだから、段々と、意識が遠くなりそうになる。
 泣いたので疲れたのもあるが、ほっとしてしまったから、今実に眠い。


「えっとさ、五日前……丁度時が家に運ばれて来た日なんだけどさ」


 運ばれてきた……だからオレはここにいるのか。
 ……何で、運ばれたんだろうか?


「その日にさ、獄寺君が途中でウチから居なくなってさ」


 ごっ君がツナの傍離れるなんて、珍しい事もあるもんだ。


「で、日が暮れた頃に、いきなり……その、血、付けて帰ってきてっ」


 ツナの声が裏返った。
 ごっ君、怪我でもしてたんかな。
 相変わらずだ。


「そのまま時の部屋に行っちゃって、したらまた何時の間にかいなくなってて、その後なんだよ、母さんが時の時計見つけたの」


 ………………。


「…………?」
「あー……って、時? 起きてるか?」
「…………? ……テラ……ねむ」
「はは! じゃぁ説明するけどな、つまり、あの時計を見つけてきたのは獄寺じゃねぇかな、って事なんだ」


 …………え。


「……なんで……?」
「え゛? さ……さぁ……なんでだろう?」
「それは……ない。オレ……ごっ君に嫌われてる。怒られてばっか、だ」


 ごっ君が、オレにそんな事してくれる理由が、悲しいかな、全く持って思い当たらない。寧ろ、オレは彼にどやされてばかりだ。何かしらに付けて、ごっ君に注意されて反省して、また怒られて。

 ……うん……情けない。

 どうにも、ごっ君には嫌われているとしか思えなくて、気が滅入ったオレは背中を丸めて、コタツ布団へと顔をうずめた。

 そう言えば、あの時もどやされた。


「あん時だって、オレ怒られたし……ごっ君オレの事嫌いだよ……」
「……あの時?」
「川で……ヘラヘラアホ面、とか。閣下ばっか頼るな、とか。独りは、平気か……とか」
「そ……う、なんだ」
「……んな事一言も」
「……独り……なんて、平気な訳……ない」
「……時?」


 皆が頼りないなんて無い。
 皆が信用出来ないなんて無い。
 そんな事は、欠片ほども、ミジンコほども無い。


「でも、オレ、年上だし、しっかりしなきゃだし……皆に頼るとかカッコ悪いし……迷惑かかるし……」


「……ヒバリはいいのかよ」


 返ってきた声に、体が跳ねた。
 隣の二人も反応したのが諸に分かる。

 声が聞こえてきたのは前方、恐らく廊下側の扉。
 そしてその声は、今まさに、話に上がっていた人物の声。


「ごごごご獄寺君!!!!」
「お前いきなり!!」
「ヒバリは頼ってたじゃねぇかよ」


 二人を無視して――いや、眼中に入っていないだけかもしれない――ごっ君は言葉を続けた。


「ヒバリだって、オレ等と同じ中坊じゃねぇか、オレとアイツの違いは何だってんだよ」
「……だって、ヒバリー……人間じゃないし……」
「いや、分かるけど一応人間だから……っ」
「っんな理由で誤魔化せると思ってんのかよ……っ」
「……だって……」
「だってナンなんだよっ!!」
「おい……っ」


 いきなり声を張り上げたごっ君を、山さんが立ち上がって制止する。
 が、ごっ君はそんな事に構いやしない。


「年上だからなんだっ! 迷惑掛かるからなんだ! そんなのどうでもいいだろうが!!」
「……だ……って……っ」
「信じてんなら……! 少しでも信じてんなら! 真正面から縋りついて来いよ……っ!!」


 カッコ悪ぃとか思わねぇから。
 年上だとか関係ねぇから。
 迷惑だなんて、思う訳ねぇから……。


「お前の事、嫌いじゃねぇから、ダチだって、癪だが、思う、だからっ」


 ――――独りが嫌な時は、縋って来いよ、二十歳っ。

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