ⅩⅩⅩⅧ - 人皆旅人

◇ Ⅷ - ⅵ ◇ ⅩⅩⅩ ◇

 この世界に来れた時は、本当に嬉しかった。浮かれていた。


 こんなのは、そう簡単にありえる事じゃなかった。本当に夢見たいで、空想みたいで、現実じゃないみたいだけど、確かに現実で、事実で、本当に嬉しかった。

 でも結局オレは、この世界の人間じゃあなくて、この世界の人間になんかなれるはずもなくて、いない方が当たり前の正解な存在だから、やっぱりみんなと仲良くなんてしてはいけないのかな、と思いもした。でも、それでもみんなは、オレに言葉を返してくれる。行動を返してくれる。一緒に笑ってくれた。泣いてくれた。

 だから、いてもいいんだな、と思えた。
 もう少しくらい、ここにいてもいいんだと思っていた。


 だけど、やっぱり、オレはいちゃ駄目だった。


 この世界の人間ですらない、端役にすらなれないような畜生の所為で、憧れだったこの世界の人達が傷ついてしまっている。今まさに死んでしまいそうな状況になってしまっている。

 理由なんて分からない。
 分からないけど、確かな事は一つある。


“オレがいなければ”確実に、こんな事にはならなかったろう。

「……オレが」
「…………」
「……オレが死ねば……それで満足なのかっ」
「……っしろ、い!」

 もうほとんど動かない体を前のめりにさせて、ヤツを睨み付ける。
 兄さんは、オレに何か言いたそうだったけれど……もう、駄目だ。

 ヒーローじゃないオレがあがけるのは、ここまでなんだ。

「そうだね。“厳密には”違うけれど……そう、それしかないね」
「だめ! 時君だめ! そんな事考えないんで! そんな事止めて!」

 後ろにある扉が、どんどん、と叩かれるけど、その音も、彼女の声も聞こえない振りをする。聞こえない振りをしないと、きっと尻込みをしてしまう。

「……兄さん達を先に逃がしてからにしてくれ」
「しろ、いっ」
「ははは、そう急くなよ。言っただろう。ワタシが君に要求しているものは“厳密には”死ではない。簡単に言ってしまえば、命だ、なんだと……まあ、つまり君の存在そのものだ」
「…………は」

 それがつまりは『死ね』という事、なんではないのか?

「違う。全く違う。君は、君自身の重大さに気づいていないようだ。『世界を超えた』という現実が、一体どれほどの事なのかを理解していない。それが、どれだけ世界そのものに影響を与えているかを、君は一欠けらほども分かっていない」

 曰く、別の世界から来たオレはこの世界にとって重要なのだと語る。ヤツが望んでいるのは、オレの死ではなくて、オレの命――存在なのだと言う。

 何がどう重要なのか、オレには正直分からない。
 そもそも、何故コイツは、世界規模の話をしているのか。
 どうして、オレなんかと世界を、横に並べて話すのか……


 ……そうだ。


 そもそもコイツは――――

「お前は……」
「…………ん?」
「お前は…………なんだ?」

 ――――コイツは一体何者なんだ?

 根本的な問題を、何の疑問もなく流していた。
 コイツは一体何者で、どうしてオレに固執してくるのか、狙うのか。

 一体何を考えているのか……

「……ワタシはただ、願うだけの存在だよ」

 この世界の幸せを、彼らの幸せを、自由を、夢を。
 ただ、ただ、願うばかりの――――

「――――神様さ」

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