◇ Ⅱ - ⅰ ◇

 適当の末にその切符は選ばれた。

 いつものように昼食を食べ終えてから近くの駅まで行き、路線図を見上げながらに『どれにしようかな』なんて胸中で口ずさみつつ、ふと目に留まった一つの路線のその終着駅までの切符を購入し、そして改札を通りすぎだ。

 その路線を選んだ理由は一応あったけれど『今日のラッキーカラーがこれだったしこれにしよう』とか、路線図の色を目にしての適当なものだったので、およそ理由だなんて呼べるものではなかった。

 だから言ってしまうと、偶然、なのだ。

 手が勝手にとか、謎の勘が働いてとか、路線図が光っていたとか、買わなくてはいけない気がしたとか、そんなどこぞの主人公たちに降りかかりそうな、運命の歯車がどうのこうの、という話では決してない。

 たまたま選んだ路線で、たまたま異世界へ来てしまった。お手軽感がものすごくて友人たちにでも話せば、まず間違いなく『ねえよ(小文字のダブリュー)』とかなんとか馬鹿にされそうな話だけれど……

 ……うん、仕方がない。

 実際、二千円たらずで“異世界”へ来てしまったのだから……
 ……うん、そう、夢もロマンも、オレにはどうしようもないことだった。