◇ Ⅵ - ⅱ ◇
はい、そうでした。
来ちゃってました。
一応、言い訳しておくが、決して忘れていた訳ではない。ちょっと物忘れが激しい年頃なだけで……うん、それには少し早い。まだ若い。大丈夫大丈夫。不健康な生活で疲れてるだけ。
しかし、あれだ。目を開けたら知らない天井、と言う、シチュエーションってやつは、中々どうして、恐ろしいものがあるというか、なんというか、自分如きを“そう”する奴なんていないだろうけど、不覚にも『誘拐か?』なんて、思ってしもうた自分が恥ずかしい。
けれどもまあ、昨日、自分の身に起きたらしい、衝撃的な出来事を忘れる、なんて、図太すぎる神経は持っていなかったようで、すぐさま、自分の置かれている状況を思い出しはできた。少しの抵抗で、『起きたら全部夢でした』なんてオチも、期待していたんだけど、参ったね。世の中甘くないね。
……あれ、そういえば、世界移動系のゲームなり漫画なりだと、ここら辺りで『きゃぁ〜堪忍して〜』な感じの、可愛い女の子が助けを求めたりするイベントが発生するんだけど。勿論、オレ勇者で。
………………。
痛い! 自分痛いっ!
脳内の余計な妄想を振り払い、ベッドにっ突っ伏していた体を無理やり起こす。今オレが居るのは、居候させて頂いている沢田家二階の奥にある使われていなかった部屋。ベッドが一つ在るだけで部屋の半分を占めてしまう程の広さだ。
奈々ママは、この部屋は狭いから、と『ツっ君の部屋で一緒に寝る?』なんて嬉々として言い出したが、オレとツナがそれを何とか阻止。がっかりする奈々ママには悪いけれど、それは流石に頂けない。何よりツナに悪いし、リボーンがいるだけで確実に手一杯のはずだ。そしてオレはまだ死にたくない。殺し屋のいる部屋になんて……はは、そうさチキンさ。
でも奈々ママ諦めなかった。
『兄弟みたいじゃなぁい?』
なるほど、コレが世に言う、天然テロリストか。
……と。
ツナに借りた水色の寝巻きを脱ぎながら、昨夜の出来事に苦笑する。
昨晩。オレが駅で諦め悪く足掻いた、その後。ツナのお誘い(リボーンの脅しでもいい)のままにツナの家へ。そして奈々ママ達へとツナに紹介してもらい、信じて貰えないかもしれないが、嘘は癪なので起きたままの事を話した。
それに、オレの中にはちょっとした確信があった。
きっと“彼等”なら、この世界の皆なら、信じてくれる、と。
不思議な確信。
結果奈々ママは、真面目に、疑いもせず、オレの話を信じてくれて、長髪の綺麗な女性――ビアンキ姉さんも『若いのに苦労するわね』なんて、熱い包容をくれた。その胸囲の柔らかさは我が魂を癒し(強制遮断)。
イーピンとランボは流石に良く分かっていない様子だったが、懐かれた様なので嬉しい限りだ。フゥ太も『時兄ぃ』って懐いてくれた。もうお父さんと呼んでくれても構わない。っていうか、この子達貰っていいでしょうか……大丈夫、犯罪には手を染めていない、癖なんだ癖。
そして、そんなこんなで、あれよあれよと、現在。
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