◆ Ⅲ - ⅴ ◆ Ⅹ ◆
「――――で……大人しく来るの? それとも抵抗? どっち?」
閣下の声にはっとして、顔を上げる。
彼の端正な以下略と、ごっ君とツナの心配そうな顔が視界に入る。あまりにも唐突な事に思考回路が追いつかず、少しだけ放心していたらしい。
目の前の彼の言葉に、意識を呼び戻されたオレは、体中の嫌な気分を出すように息を吐く。オレへと視線を向けて返答を待つ彼は表情一つ変えていない。只黙々と、己のすべき事をしているだけの様子だ。
冷静すぎる閣下を見やってから、いやな汗の流れる額に手をやる。
緊張の所為で冷たい手が、今はとても心地良い。
その行動と先程の沈黙の所為か、少し落ち着いたので、とりあえず傍に立つ草壁さんへと先程の返答を返す。連行は嫌だけど、仕方がないさ。
「あっと……大人しく付いて行くんで締め上げるのは止して下さいね」
それから。
「一応言っておきますけど、オレ、やってませんからね。こればっかりは否定させて貰います。オレはやっていません。譲れない主張ですから」
そう言いながらに笑っては見たが、上手く笑えないので苦笑の様になってしまったのだろう。オレの顔を見た草壁さんが少しだけ顔を歪めた。次いで、申し訳なさそうに吐き出される謝罪の言葉。
謝る事なんてないんだけだどな。
草壁さんの目は父親に似ているから、謝られるとちょっと複雑。
そして、若いのに人生疲れたような顔をする草壁さんに苦笑だ。
「あ、あの雲雀さん! 時が犯人だなんて噂すぐになくなりますよねっ? 時がそんな事するわけないし! じ、実際にはやってないんだし!」
必死の形相で疑問を投げ掛けるツナ。でも、それに帰ってくる返答は無い。それ所か、答える気はない、と言わんばかりに、閣下の視線が廊下の方に逸らされてしまった。
そんな態度の彼に黙っていないのがごっ君。
若干切れ気味に言葉を投げた。
「おいヒバリてめぇ! 十代目がわざわざ尋ねていらっしゃるんだ! そっぽなんざ向かねぇで、ちゃんとこっち向いて答えやがれ!」
「………………」
尚も教室内へと視線を向けない閣下。
そんな状況に、傍に立つ草壁さんが割って入る。
「やめて頂けないか。委員長は今日一日の仕事で疲れていらっしゃる。あまり大きな声を出して貰っては体に障ってしまう。もう少し静かに」
「うるっせぇ! そもそもコイツが犯人の最有力候補だってのが気に入らねぇんだよ! こんなチンチクリンで、チキンで、オタクで、駄目で、バカで、アホで、ハゲで、生きてる価値もねぇような奴に、そんな大それた事出来ると思ってんのか!?」
……フォ、フォローになってねぇっ!
まだ、はげてもないし!
「ご、獄寺君、それフォローじゃないから! むしろけなしてるから!」
ごっ君のミスチョイスに気付いたツナが、すかさず静止に掛かってくれる。勿論、オレも傍観している訳には行かないので、とりあえず、今畜生に物を申させていただく。
「おい、そこのタコヘッド。貴様、それでもフォローのつもりか」
「お・ま・え・は・す・っ・こ・ん・で・ろ……!」
………………。
「何様だ貴様!!」
ごっ君のオレへの態度に、オレ憤慨。
が、そんな事に憤慨している場合でもないので、大人なオレは自分のすべき作業に取り掛かる。尚も閣下に食って掛かってるごっ君を、草壁さんとツナと一緒に落ち着ける作業だ。
けれど頭に血が上ったタコヘッド、全然言う事聞いてくれない。
十代目たるツナの言葉さえも無視して、今度は閣下に掴み掛かろうだなんて無謀な行為に出ている。そう、それはまるで怒りで我を忘れている虫の王様の様で、真っ赤な彼は怒りを静める様子が欠片ほども無い、まさにタコと化してしまった。ぷぷぷ。ぷぷぷ、じゃない。
流石にどうにも出来ないと思ってきたオレは、共にごっ君を抑えている二人に対して『ヘッドロックで一発絞めよう!』と物騒な事を推奨。何時もならこんな意見叩き落とされるだろうが、今は緊急事態、二人もオレの意見に賛同してくれた。そして、草壁さんがヘッドロックの体制に入った所で。
今まで沈黙を通していた人物が声を発した。
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