ⅩⅢ - 人皆旅人

◆ Ⅲ - ⅶ ◆ Ⅹ ◆

「うるさい」
「……………」

 思わず割って入ってしまった。

 彼が畳み掛けるようにして、ツナを追い詰める言葉を吐いたから、だからオレも黙っていられなかった。彼が最後の言葉を吐いた瞬間、ツナの顔が変わったから。

 傷ついた顔だった。

 別にオレは彼の言葉は気にしていない。
 ちょっとぐらい疑われて当然なんだから。
 でもその事で、オレの事で誰かを傷つけるのはいくら君でも許さない。

「ねぇ……今僕に言ったの部外者。何時からそんな口を」
「年上だからね、少しくらいはいいはずじゃないか」

 オレの言葉に彼は眉間へ皺を寄せる。

「雲雀さんはオレに用があって来たんだろう? さっさと用件を済ませてくれよ。ツナ達は事件とは関係ないんだから、話す必要ないだろう」
「…………人格、変わってるよ」
「気のせいだと思う。早く用事済ませてくれると助かる」

 そして早くここから去ってくれると、なおいい。

「……そんなに僕を追いやりたいの? 生意気だね。咬み殺す」
「後で思う存分咬み殺されてあげるから、だから用件」

 早く。

「…………ふん、もう用事は済んだよ。君から話は聞けたしね」

 後は。

「後は昨日の仕事。草壁に渡しといて。今日の分も草壁が持ってるから」

 明日は放課後に自分から持ってくるように。

 そう、廊下へと振り向きながら言う彼の言葉に、少し疑問を抱く。
 明日……放課後?

「ちょ、ちょっと待って。何? オレ明日、ここ……並中来ていいの?」
「……何言ってるの。学業が学生の仕事だよ、当然でしょう」

 その言葉に少し気が抜けた。てっきり停学でも食らうのかと思ってたから。だって一応強姦未遂の容疑者な訳だし……のさばらせる訳にはいかないだろう、風紀の長としては。

 けれど、そう思ったのもあながち間違っていなかったらしい。
 続けられた言葉で、オレが学校に通える理由を理解した。

「勘違いしないように“泳がせる”って言葉知ってる? そう言う事だ」

 …………。
 なるほど。

 オレはさながら、発信機付けられて空に放たれた保護動物みたいなものなんだろう。全く、抜かりがなくて、いやんなるけど、その手腕は大したものと、言わざるおえんぜ畜生。

『性格しか欠点がないだなんて、不公平だ』……との感じの、尊敬と畏怖の念を込めた視線で、睨みすえてみたが、彼の顔が廊下側を向いているので、伝わったかは分からない。

「………………はあ、疲れた」

 ……溜息と、ある種の弱音だった。
 あの、雲雀恭弥様が……だ。

「……それじゃあ……またね部外者。精々頑張る事だ」

 廊下を振り向いたまま、こちらを見ずに去っていくヒバリー。その背中には、普段見られない若干の疲れが見えるので、本当に疲れが溜まっているのかもしれない。

 ヒバリーの背中に靡く学ランの裾を見送ってから残された草壁さんへと顔を向ける。草壁さんはオレと目が合った事に驚いたのか、一瞬だけ目を見開いてから何時もの様に顔を引き締めてヒバリーが言っていた内容を話し出す。そして今日の分の仕事とオレが昨日終わらせた仕事を交換する。

 ……今日も多い。

 仕事の量に唸っていたら、草壁さんが「それでは、委員長が心配なので先に」と、閣下の後を追って行った。少し焦りが見えた。閣下はそんなに疲れていたのだろうか。

 ……雰囲気だけだけど、確かに疲れていたような気はする。
 さっきのあれは、ちょっと言い過ぎただろうか。
 追いやったみたいな形になったし。

 先ほど行った自分の言葉に、少し良心が痛む。
 でも後悔はしない、後悔するような言葉を吐かないのがオレの主義。


 なのでとりあえず思考を切り替えて、ツナ達の方へと振り向く。

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