ⅩⅦ - 人皆旅人

[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

◆ Ⅶ - ⅳ ◆ Ⅹ ◆

 目の前の人物の笑顔に、オレの魂が凍りついた。


 ライトで照らされたその顔に、オレは立ち尽くし。自分の目の前で微笑うその顔に、あの閣下の目すらも、驚愕の色に染まっている。ソイツ――押さえ込まれていると言うのに、オレ達二人を嘲笑うソイツの顔は、オレ達が良く見知った。“オレ”が良く見知った――――

「――――やあ、ハジメマシテ白井時……ああ、いや、この場合は『はじめましてオレ』……と言った方が、表現としては分かり易いのかな?」

 押さえ込まれて決して優勢ではないというのに、オレ達二人を嘲笑うソイツは、オレが良く見知った、彼も確かに知っている。


“オレ”……白井時、だった。


 閣下に首元を押さえ付けられて、塀へと身を密着させる“ソイツ”。

 オレと同じ色と形をした黒い双眸。
 オレと同じ髪型の黒い髪。
 オレと同じ様に笑う唇。
 オレと同じ輪郭の顔。
 オレとは少し違う声。
 でも、自分の骨格を伝わらずに聞こえてくる時の、オレの声と同じ声。

 見た目、背丈、格好の、どれを取っても、今の“オレ”と“ソイツ”は全くと言っていい程に同じだった。けれど、“同じ”と言うには余りにも違っていて……オレと同じ顔で笑っていると言うのに、その目は全く感情を宿していない。その表情も、人間が作っているとは思えない様な張り付いたもの。


“オレ”ですら“オレ”とは思えない“オレ”。


 余りにも人間離れした表情を作っている“オレ”じゃない“オレ”に恐怖を覚える。そんなオレを目に捉えてか、今尚、閣下に押さえ込まれたソイツは、瞳に感情を移さないまま、楽しそうに、至極楽しそうに言葉を紡ぎ始めた。

「……くく、思いの他早く会えたな。でもまさか“コレ”が一緒に付いてくるとは思わなかった。てっきり“あの連中”のどれかだと思っていたんだけれど……」

『コレ』、と言ったソイツの目は、自分よりも幾分か高い位置にある閣下――雲雀恭弥の目に向けられた。その言葉に時さんは勿論、恐怖。自分で言った訳ではないけど、言ったのは目の前のオレで、だからオレが言った様な事になっていて、で。

 オレはオレに、プチパニック。

 そして、そんなソイツの言葉に閣下が憤慨したらしく、ソイツの首に更に深く、トンファーを押し付ける……ってああああ、怖い怖い怖い怖い、見てられない! オレじゃないオレ、ヤバイ!

「君……いや、お前は一体、何? この僕を“コレ”扱いだなんて……その顔だから余計癇に障る。答えによっては情報を聞きだす前に咬み殺す」

 ひ、酷いっ。そして落ち着け閣下っ。

「くく、雲雀恭弥……ねぇ……確かに強いけれど……所詮知れてる」

 やめてオレ!

「質問の答えになっていないよっ。“お前”は“何”?」

 自分の目の前で自分を卑下するソイツに、閣下はマジで切れてしまったらしい。目が尋常じゃなく煌いたかと思ったら、ソイツの首に食い込んでいるトンファーを更に押し付けて、先程より随分低い声で目の前の対象に言葉を吐きかけた。そして彼の言葉に、まるでその言葉を自分の中で反復しているかの様に、ソイツは数秒沈黙し。

 次いで放たれた言葉に、閣下のその眼は更に鈍く光る。

「“オレ”は“白井時”だよ。雲雀恭弥君」

****************************** Next Page.

BACK   NEXT
TOP    SITE TOP