◆ Ⅶ - ⅷ ◆ Ⅹ ◆
「くあ! かかか、閣下!? 血っ! ち、ちち、血が!!」
閣下の状態にぞっとして、マジ焦り。彼に付いた血液は、血飛沫なんてもんじゃない。頭からは結構な量の血が顔を染めて、黒い学ランの中で映える白いシャツは、肩の辺りから血で染め抜かれて、真っ赤だ。
これは中々のホラー体験であるかもしれない。
「だ、だ、だ、大丈夫なんすか!? さっきの、あ、あれでしょ!? ああああ、シャツが! 白いシャツが真っ赤っかに! この染み絶対取れねえよ!」
「………………」
「どどど、どうしよ山さん! 閣下死ぬ!」
「いや落ち着け時! ヒバリはこの程度じゃ死なねーからっ、な!?」
「ででで、でも、オレの父さんこんなんなって一回死に掛けた事がっ!」
「…………ねえ」
「大丈夫だって、な!? そ、そうだよな、獄寺!?」
「オレかよ!!」
「ねぇ…………」
「なんだよ!!」
「君じゃないよ」
「ひひひヒバリー大丈夫かああああ! 死ぬなああああ!」
「煩いよ……それより」
『……それ』
と、いきなり落ち着きだした閣下が、いつの間にかツナを離した右手でオレの左頬を示した。何故指されたのか、自分の顔が見えないオレには、良く分からなかったが、みんなの反応から自分の頬の痛みを思い出す。
「ど、どうしたんだその顔!? すっげー血ー出てるぜ!?」
「え……あ、ああ、これはさっき」
「て……言うか、二人共どうしたの!? もの凄い格好だし……さっきもいきなり飛び出してきたし、なんか良く分からない事聞かれるし……!」
「……や、それは」
「痛いの? 腕は?」
「や、平気ですけど……」
むしろ心配されるのとても怖いから止めて欲しいですけど。
ていうか、そんな事よりも。
「女の人!」
みんなに心配されて、自分の左頬を触れた瞬間に思い出した、さっきまでいた路地での出来事と、偽オレがしたであろう“事”。あそこで偽オレが今までしたであろう“事”をしたのであれば、被害者である女の人がいる筈だ。現に閣下はあの場所で女性の声を耳にしている。
その事を思い出したオレは心配するみんなそっちのけで、元来た道へと引き返そうと身を翻して、路地へと視線を向けた。
そしてオレの目の飛び込んでくる、女の子。
その目は空ろに、オレを捉えていて、口元は少し血が滲んでいる。綺麗なショートの黒髪は乱れ、前髪を飾る為のヘアピンが本来あるべき場所で無い所に移動していた。そして服――並盛中に通う生徒である証の制服は所々が破れて、見るに無残な状態だった。
いきなり路地から現れたその子に、オレを含める全員が固まった。そして、固まって数秒の後。真っ先に反応を示したのはオレ。路地で閣下が聞いた声と、さっきの偽オレの言葉。そして、目の前のこの子と、この町で起きている事件。
動くには十分過ぎる内容だろう。
恐らくこの子は、閣下が聞いた声の主だ。そしてきっと、誰かに助けを求めようと明かりのある方まで、ボロボロの体を引きずってまで歩いて来たんだ。
強姦『未遂』とはいえ女の子にとったら、とんでもない恐怖なのだから『放置』だなんて、助けて欲しいこの子にはあまりにも非情だ。だからオレは『大丈夫だよ』と、女の子を安心させようと思い、手を伸ばした。
でも、オレは肝心な事を忘れていた。
――――女の子は一体誰に襲われていたのか?
そう、それは。
「……っいやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
“オレ”ではない“オレ”だ。
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