◆ Ⅶ - ⅳ ◆ ⅩⅩ ◆
「……もう止めろよ獄寺……」
言い争い――獄寺君が一方的に突っかかってただけだけど――をしていた二人の会話に、文字通り割って入った山本。
二人は突然声を発した人物にに一瞬怯んで、視線を互いから山本に移す。そして山本の言葉に反応したのは、名指しされた獄寺君。
「んだよ山本っ! テメェもなんか言いてぇ事でもあんのかっ!?」
獄寺君の声が、いつもより低い。
それに答える山本の声も。
「別にオレは、お前の言い分にケチ付ける気はない……オレだってお前と同じだったんだからな……」
「だったら口出しすんじゃ――――」
「でもな! オレは……違うんだ……っ」
「……あ……?」
山本の声が震えだす。
何かに怯えるみたいに。
逃げ出そうとする体を押し殺してるみたいに。
「おい、どういう事だ山本?」
ディーノさんの声に山本の肩が跳ねる。
何に怯えてるのか、山本の言おうとしてる事を聞かない事には、きっとオレ達には分からない。
だから言葉を待つ。
何かを知っている、何かを伝えようとしてる山本の言葉を……。
「……オレ、は、多分……こん中で、一番最初に、時があの川で泳いでる事を、知ってた……」
大きく深呼吸して、息を吐き出すのと一緒に言い放たれた言葉。
自分の顔を、オレ達の視線から隠すように、左の手の平で覆う山本。
隠しきれてない顔の下半分の頬に、何か光る物が伝った気がする。
「あの日……時が腕時計無くしたっつってたあの日。オレ、家に帰る途中で時がクラスメイトのヤツともめてンの見たのな――――」
――――そのクラスメイトは時に嫌がらせをしていた奴で。
多分、時の時計を奪ったのもそいつ。
最初は時だなんて気付かなくて、そいつ等が何してるのかも分からなかった。でもその内、時が橋から落ちて。その後にクラスの奴が川に何かキラキラする物を投げて。駆け寄って、時だって気付いて、投げられたのは時の時計だって気付いて――――
「――――オレ、助けようか悩んだんだ……っ。必死んなって、何度も潜ってる時見てっ。でもオレガキだからっ。馬鹿みたいな理由並べて、その内諦めるとか勝手に決めて……っ」
――――見捨てて……っ。
そこで山本の声が、言葉から嗚咽に変わる。
必死に声を押し殺そうとしてるのか、背中を丸めて、歯を食いしばって、顔を左手の平で押さえ込んで、右手には震える握り拳。
ディーノさんがそんな山本に、もういい、と一言呟く。
オレも何かを言おうと頭の中で模索する。
けど、結局はそれさえやめてしまった。
やっぱりオレは、こんな場合に何て言っていいのか知らない。語学力が足りないとか、知識不足だとか言われるかもしれないけど。あんなに苦しそうな山本に、どんな言葉を掛けたって気休めにしかならない気がした。山本ならきっとオレが何を言ったって、ありがとう、って返してくれるだろう。
でもそれじゃ、何かが違う気がする。
慰めて、ありがとうは、違う。
気遣って、ありがとうは、違う。
大丈夫とか、泣かないでとか、悪くないとか。
そういうんじゃない言葉が欲しいんだ。
オレは、何度もそういう状況に陥った事があるから分かる。
そんなんじゃ、言葉だけじゃ。
気持ちって言うのはどうにもならない……。
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