ⅩⅩⅦ - 人皆旅人

◆ Ⅶ - ⅲ ◆ ⅩⅩ ◆

「……何でトキはあんな事になってんだ、ツナ」


 痛い。

 声も言葉も、オレの心臓を直に突かれてるみたいに痛い。
 聞かれて当然なのに、聞かれるのは分かってた筈なのに。
 まだ逃げようとしてるオレが居る……。


「放って置いたらアイツあのまま死んでたぜ? なんだってあんな事を黙ってさせてたんだ?」


 いつもより低く響く声に、自然と姿勢が正される。
 でも、顔が見れない。
 見たら、そのまま射殺されそうな気がして、視線が自然と自分の足元に向いてしまう。そしてそれは、オレの隣の二人も同じらしくって、視界の端に二人の俯く横顔が微かに掠める。


「……なんで答えない……」


 何も言わないオレ達の頭上に、ディーノさんの怒気を含んだ声が降ってくる。


 『何で答えない』


 静かに言われる何気ない言葉なのに、今のディーノさんの口から言い放たれてるだけで、鋭い刃見たいになっている。

 答えなきゃ、答えなきゃって思うのに、口が震えて、声が上手く言葉にならない。手の平に嫌な汗を蓄えながら、何とか自分の口に言う事を聞かせようと深呼吸をする。そして、喉の奥に詰まった言葉を押し出そうとした所で……。

 オレの言葉は、獄寺君の言葉に遮られた。


「……アイツが何しようが、オレ達には関係ねぇだろうが……」
「……なんだと?」
「……アイツが勝手に、水浴びて、凍えて、それで……それで死のうが、何しようが、オレ達には関係ないっつってんだよっ!!」
「本気で言ってるのか……っ!?」
「…………っ! たり前だろうが! アイツは勝手に凍え死にそうになってんだよ! オレ達になんも言ってこねぇで! 自業自得以外のなんだってンだ!!」
「お前……っ!!」


 獄寺君の声は怒鳴ってる筈なのに、何処か苦しそうだった。
 オレの部屋で、獄寺君と話してた時の山本みたいに、何処か自嘲気味てて、何処か……泣いている様な……そんな声だった。


 そしてもう一人、そんな声をした人間が声を上げた。


 時を止めなかった理由じゃない。
 時がどうして、あんな自殺まがいの事をしていたのか、その理由。

 そんな事誰も知らないと思ってた。オレも、獄寺君も、そして山本も。知らないから何も出来ない、何もしない、何もしてやる事なんて出来ないと思ってた。

 でも、それは違ったんだ、……と。


 口を開いた山本の言葉で理解した。

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