◇ Ⅱ - ⅴ ◇ ⅩⅩⅩ ◇
「やあ雲雀恭弥。君には大概感心するね。呆れるほどに人間の域を超えている。ああ、だが、でも、いずれ会う“彼”ほどではないか」
「――――咬み殺すっ!!」
「くく、いいね。血の気が多いのは実にいい。人間元気がなんぼだよね。それにしても、ああ、楽しいな。凄く楽しい。“あの子”が来てから私の世界は変わった。大きく変わった」
僕の攻撃を避けた、部外者の顔をした、けれど部外者とは違う声のヤツが、至極楽しそうな声で言う。その明るい声が酷く耳障りだったが、次に続いた赤ん坊の声で意識が逸れた。「お前だな、並盛で女どもを意味もなく襲ってんのは」
やはり彼も気付いていたらしい。「そうだとも。君は早々に気付いていたようだねリボーン。付き纏われて鬱陶しかったよ。勿論楽しくもあったがね。また遊ぼう」
一々癇に障る物言いの奴を見れば本当に楽しいのだろう、以前に夜道で会った時の無感情な表情とは似ても似つかない顔を貼り付けていた。
「部外者に似ようともしていないのかい。声すら違いすぎる」
「ん? ああ、これか? これは私が一番気に入っている声だよ。“自分の声”なんて持ち合わせていないので決して私の声ではないのだがね。それにほら、君達に隠す必要性はもうないだろう? 既にあの子への信頼は確定しているようだし……そこの“彼”は除かれるね」
「どうでもいいよ、部外者の信頼どうのなんて」
「おやおや」
「僕はただ学校を破壊した、君と草食動物を咬み殺したいだけだ」
「オ、オレも!?」
「本当に血の気が多いな。しかし、どうしたものか……私は別段君達と遊ぼうがどうという事はないのだがね……ただ、さて、君達は私に逆らう事が可能かどうか……」
――――そこが大きな問題だ。
「………………っ!」
「え……ひ、雲雀さんっ!?」
「……っ赤ん坊。なんとか……出来そうかいっ?」
「……っさあ……な。ちょっと、まずいかもしれねぇ……なっ」
「くくくくく」
「……ふふ、ねえ赤ん坊。ゾクゾクしないかい?」
「趣味わりぃなお前……まあ、分かるけどな」
「お前、顔が凶悪になってんぞ」
「生まれつきだよ」
(ひ、ヒバリさんこえぇぇぇぇっ!)
「――――っ!」
「忘れてたか? あいつずっとピンピンしてるぜ」
「咬み殺す」
(なんでええええええええええええええええええええええええええ!?)
「……はは。じゃあ、君と遊ぶのは止めて彼と遊ぼうかな」
――――君では相手にならないしね。「……雲雀恭弥だ」
既に、僕や赤ん坊から意識を外した奴は、宣言どおり草食動物を追い回している。一方的だ。地に落ちる閃光を、すんでの所でかわす草食動物。『かわせている』とでも思っているのだろうが、『かわせる様に』奴がしている。恐らく草食動物には、それすらも分からない。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
「くくく、さっきまでは、あんなに強気だったのにね。とんだ茶番だ」
「う、うるさいな! オレだって――――ぐぎゃっ!」
「あはは! 変な…………おや」
「…………………………ぐげ!」
「僕に借りを押し付けた部外者が、一番気に入らない――――!」
「思わぬ火の粉!? い、いや、閣下を実質、動けるようにさせたのは、キャバッローネ・ファミリーのドンであるディーノさんであって、オレは全くもって関係ないって言うか……!」
「おいこら! 押し付けるな! オレは何もしてねぇだろう!?」
「あんな中学生にびびるなよボス……」
「はは、雲雀舐めてっと痛い目、見ます、よっ」
「あんな奴、潰しちまえ、跳ね馬……っ」
「あんな奴、蹴散らしちまえ、跳ね馬」
「リボーンお前、どさくさにまぎれて、何けしかけてんだよ……!」
「……み、みんなあ!」
「終わったら、全員咬み殺す……!」
まずは、目の前で余裕をひけらかしている、コイツから。