◆ Ⅲ - ⅲ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
「――――ていうか、時! 今までどこ行ってたんだよ! みんな心配したんだぞ! いなくなるならせめて一言ぐらい言ってからにしろよな!」
「へ……え? リボーンに聞いてない? オレ、リボーンに半ば強制的に連れてからたもんだからさ……イタリアに。だから言伝頼んだんだけど」
「イタリア……って、リボーン! またお前かよ!」
「知らねぇな」
「……酷い」
「黙れ咬み殺す」
「「え……?」」
イタリアでフルボッコ(修練)に合って、そこそこの護身術――運動神経と武才は違うらしい――を覚えて、並盛に帰ってくれば、なんとも異様な状況の並盛町があった。
実は、並盛に到着してすぐリボーンとディーノさんが『……なんだ?』なんて呟いていたのだが、一般人のオレに些細な変化なんて分かる筈もなく、スルー。そして、街中を歩いてやっと、少しずつだが、オレも街の異様さに気付きはじめた。
なんと言うか……有るべき筈の生き物の気配がなかったのだ。
『生き物の気配』なんて、一般人に分かろう筈もないのだけれど、一般人のオレにすら分かるほどに……とでも言おうか。本来感じるべき日常の雑音、人の出す音、生活の気配……その他、日常で出さずに過ごすには、不可能であろう“音”や“気配”が全く無かった。
しかも、時刻は夕暮れ時。夕飯の準備なりなんなり、人間であれば大方が何かをしているであろうが町の空気からはなんの動きも感じられなかった。
『これは何かあったな。』
と、オレとディーノさん、それからロマーリオ氏と共に『急いでツナ達の所に行くぞ』なんて事を話していれば『学校か』との、凄腕ヒットマンの呟きが耳に届いた。
勿論、我が道を行くリボーンだったので、オレ達なんて無視して、独り凄い速度でさっさか学校に向かってしまったのだが、一応、呟きを残してくれていたので、オレ達も学校には向かえた。
迎えたがしかし、まさかこんな有様になっていようとは、誰が思うか。
激しい轟音の応酬に肩を震わせて、いざ学校――並盛中学校に足を踏み入れれば、かなり酷い崩壊を遂げた校舎に、粉塵。そして“オレ”らしき人物に攻撃を食らっているツナと、様子のおかしな並盛ズ。カオスだ。
とりあえず、ツナは色んな意味で元気そうだったので、ディーノさんとの話し合いで、先に様子のおかしな並盛ズの傍に行こうと、そそくさ。しかし、山さんや、ごっ君に話し掛けても反応はゼロだし、倒れている了平兄さんに呼びかけても反応ゼロ。仕方なく嫌々、閣下(雲雀恭弥様)の肩に手を置けば、いきなりトンファー攻撃かまされるし、閣下怒ってるし、もう訳が分からん。
「あ、あの閣下なんで怒って」
「咬み殺す、全部」
「色々あってな、雲雀の奴かなり機嫌斜めなんだ」
「……よし、ディーノさん君に決めた!」
「何がだ!」
怒っている閣下にディーノさんけしかけて、怒数を下げようとしたら、閣下に睨まれたので、双方退場。閣下は今、オレ達よりも“偽オレ”の方を倒したいらしい。
それは、まあ、オレ的にも、負傷や疲労が著しいらしい、ツナ達的にも大助かりだろうが……その閣下のお相手たる“偽オレ”が何やら独り、瞑想中なようで――しかも空中でだ――相手にされていない、とでも思ってしまったのだろう、閣下の怒数が更に上昇。
今にもこちらに、いらぬ火の粉が飛んできそうで怖い。
「ねえ……馬鹿にしてるの君」
「……それとも遺伝子領域での基礎情報構築段階で秩序型と無秩序型の二つが形成されているのか、ワタシに対する抵抗力、いや考えようによっては世界に元来備わっていた防衛機能と取る事も可能な、だが彼らは刻まれた役割を演じている、ならばこちらへ干渉する力は極々微弱なもの……」
こっちも、こっちで訳が分からん。
何やらオレの顔には似合わない小難しい事を言っている偽オレ。
しかも何時の間にか、声が変わっている。セクシーボイス気色悪い。
「咬み殺す……!」
「……ふむ、もういい、答えは出そうにない」
ヤツの瞳が、赤く煌く。
次いで、左腕を軽く振ったかと思えば、ぐにゃり、とヤツの停滞していた空中――空間が、ヤツを飲み込むようにして歪んだ。常人なら体を保てそうに無いほどに、大きく歪んだのだが、常人ではないであろうヤツには関係ないのだろう。歪んだ空間……景色が元の輪郭を取り戻した頃には、何事もなかったかのように、ヤツは再びそこにいた。ただそれは、“オレを模した姿”ではなく“黒い皮服を纏った妖艶な女性”の姿で……だ。
「ぼん! きゅ! ぼん! 萌え!」
「違うだろ!」
その……恐らくは、先ほどまでオレの姿を模倣していたであろう、人物の姿を目にして、残念な事に空気の読めなかったオタクをツナがたしなめる。ツナは最近、オレへ手を上げるのが、問答無用になってきている気がしてならない。
「だ……だって、超セクシ……っ」
「うるさいよ! そんな事言ってる場合か! 空気読めよ!」
「くくく、存外元気だな、空の王は」
空中から地面へと降り立つ、ソイツ。
全身に黒い皮服を纏ったその姿は、恐らく、誰が見ても感嘆するだろうほどに妖艶だ。髪は漆黒。オレや閣下と同じだが、少し赤みがかっててオレより少し長い。瞳は赤色。血の色……と言うよりは、固まりかけた、黒さの滲む血の赤、と言う方がしっくりくる。
何にしても、黒い外套を翻す様がこうまで美しいと、つい気が怯む。
……オレだけなようだが。
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