◆ Ⅲ - ⅴ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
「ていうか、あれほど言ったってのに、セ−フティ外してねぇってのはどういう意気込みだ馬鹿野郎」
「はが!」
リボーンの言葉と共に一蹴り頂きました。
「セーフティ……あ」
手元の銃の側面を見れば、確かに外れていない安全装置。
「……と、唐突だったのでっ」
「言い訳すんな」
「おいおい無茶言うなリボーン、素人がいきなりなんでも上手くこなせるわけねぇだろ? しかも、こんな惨状になるほ……ど………………お?」
オレの頭を掻き回しながらに、ディーノさんがフォローをくれるが、リボーン的には『オレが家庭教師なんだ。甘っちょろい事言ってんじゃねぇぞ』とかいう心境なのではないかと……そう思う。オレ的にもフルボッコ(修練)にあった以上『もう少し役に立てなければ駄目じゃないか』と自らを叱咤せずにはいられない。
ちなみにディーノさんの語尾が遅くなったのは、リボーンに眼飛ばされた訳でもなければ、オレの頭に角があった訳でもない。単に、不可思議現象を見た時の人間の反応を、体現した為である。
「か、閣下見て! 学校! 学校元に戻ってる! 良かったね!」
「うるさい。見れば分かる。咬み殺すよ」
空を仰ぐようにして校舎に視線を移せば、窓のある大きな白い壁面。
来た時にあった、ツナの攻撃や、ヤツの攻撃によるものだろう、抉られたり、崩れ落ちたりの破壊痕が見る影もなくなっている。割れて四散していた窓もひび一つ無く、白い壁の中で校内のライトを反射していた。
無論、ここまでくれば、校舎以外の方も無傷で当たり前だ。
実に変な話ではあるけれど。
無残に根元からなぎ倒されていた桜の木は、また花を咲かせる事が出来るだろう、地面にしっかりと根を生やしている。地面に走っていた、地震で割れたかのような亀裂も、綺麗に消えている。
良かったね閣下!
「何がどうなってんだ?」
「リボーンがなんかしたとかじゃないのかよ……いつもの如く」
「兄弟子も弟弟子も、てんで駄目な脳足りんだな。悲しくなるぜ」
「「………………」」
「じゅ、十代目っ、恐らくこれは時に化けてた“ヤツ”の仕業と考えるのが妥当だと思いますっ。空中に浮いたりしてた訳っすから……」
「壊したくせに直してったのか? そんな親切な奴とは思えねーけど……実はいい奴なのか? なあ、じゃあ、どうやって直したんだ獄寺」
「野球馬鹿はすっこんでろ……!」
「何にしても、悪童の言う通りで決まりじゃねぇですかボス。こんな非科学的な超常現象信じるのもアホらしいですがね……説明しようがねぇ」
どうやら、この奇怪な現象は“超常現象”で片付けるようだ。
でも、まあ、仕方ない事だろう。実際、そんな現象だ。ほぼ半壊と言っていいほどに崩壊していた目の前の景色が、元の通り、若干の年期を帯びた校舎や、地べたをさらしているのだ。この現実を疑ったところで特はないだろう。
ちなみに付け加えると“気配”と“喧騒”も元に戻っていた。
それを言えば、ツナ達は首を傾げる。どうやら空気の変化には、あまり意識を向けていなかったようだ。そりゃあ、あれだけの窮地だもの。そんなものに意識を奪われている暇はない。
疲労の見えるみんなには今度何か奢って、お金がありませんでした。
何か作ってあげよう。
「とりあえず、ツナ寒そうだから、ほい」
「あ……ありがとう時。忘れてた……はは」
とりあえず、下着一枚のツナは見てて寒いので、上着を貸してあげた。
イタリアでロマーリオさんが買ってくれたジャケットだ。高値だ。
「あ! そうだ! お兄さんは……あ、まだ気絶してる……か」
上着に腕を通しながら、隣にいる了兄さんを気遣うツナ。
まるで死んだように反応が無いが、息はしているので心配はない。
「……キーパーソン、そう言っていたよ」
「へ?」
閣下が、呟く。
それに答えたのは、リボーン。
「了平は、時に向けての『何か』なんだろ。自分の正体を“あえて見せなかった”みたいだしな。目的が、なんなのか、なんて分からねぇが“重要な布石”……『策』なのは間違いねぇ。用心するに越した事はねぇが……全く、やりにくい相手で燃えるぜ」
「もうリボーン、お前なあ……」
「………………」
『オレへの策』……と、リボーンの話を聞いて、ふと思う。
もしかしたら了兄さんは『壁』なんじゃないだろうか。
この世界の人間じゃないオレへの『壁』。
大きく言えば“防壁”の様な役割……とでも言えばいいのか。
結局オレは、この世界で生まれも育ちもしていない、この世界にはさして必要のない……いや、世界にとって何が必要か、なんて分からないけれど……とにかく、元々ここには居なかったんだ。居ても居なくても支障は無い。いっそ、存在している方が悪影響があるかもしれない。
そんな、白井時。
そして、了兄さん。
京子ちゃんを狙った意図も、これが狙いだったのかもしれない。世界に悪影響を与えるかもしれない人間を受け入れず、ひたすらに拒絶……防御に徹する『壁』を作る為の『策』。“それ”がオレを拒絶し続ける限り、オレが『この世界』に受け入れられる事はない……という事か。いや『防壁』である時点で、オレはこの世界からさっさと退場した方がいいのかもしれない。
でも、帰り方なんて……
「……何考えてるの」
「……マクスウェルの悪魔は、実は石ころ帽子をかぶったドラえもんなんではないか、と言う定説についてどう論文にまとめようかと思って」
「余計な事考えてんじゃねぇ、アニメや漫画の見すぎだ馬鹿野郎」
閣下の睨みと、リボーンの飛び蹴りを受けて、横に倒れる。
閣下は分からないけど、リボーンはどうやら、読心術、と言う名のプライバシー侵害により、オレの考えをさらったようだ。こんなに、心情だだ漏れじゃあ、おちおち妄想もやっていられない。
「ミクちゃん萌え……」
「うわ! 時が壊れた! リボーン何やってんだよ!」
「余計な事考えてたから元気付けてやっただけだぞ」
「意味わかんねぇよ……おいトキ大丈夫か?」
……オレは、どうやったら元の世界に帰れるのか。
そもそも、オレは、元の世界に帰れるのか。
オレは、ずっとこの世界で生きていくのか。
死ぬまでこの世界にいる事になるのか。
それは……結局どういう事になるのか。
ぐるぐると、考えは巡るばかりで、答えは出ない。
ただ、オレはどう足掻こうが“ここにいる”。
今は、それだけでしかない。
「あ、お腹空いたな」
『存在している』とは、つまりそういう事で。
うん、やっぱり、今は『生きている』それだけでいい気がする。
難しい事を考えるのは、元々性に合わないのだ。
「……おま……まあ、トキらしいっちゃ、らしいが」
「そういやオレも腹減ったなー……あ! なあ、みんなでどっか寄って帰らねぇか? ハンバーガーとかでいいからさ! な?」
「学校帰りの飲み食いは校則違反だ。それに――」
――――部外者はここで、咬み殺す。
そう言われ、閣下がオレに助けられたっぽい事にお怒りだったのを、その場の全員が思い出し、けれど、その瞬間にはもう、オレの首には閣下のトンファーが落ちていて、次に目が開いた時には、学校――な訳がなく、ツナの家の……こちらの世界での我がベッドの上で、空腹のまま横たわっていた。
なんとも嫌な帰還になってしまった。
だが、まあ、この世界らしいっちゃらしいので、苦笑ものだ。
せめて、帰れる方法が見つかるまでの間は、この世界のこういう感覚を楽しく満喫したい。帰らなければいけない……というのは、ちょっと……寂しいけれど、仕方がない。オレはこの世界の人間ではない、遅かれ早かれ絶対に帰る時は来るだろうし、帰らなくてはならないだろう。
ただ、その辺りの『答え』は次“ヤツ”に会った時に、はっきりとした明確なモノが得られそうな気がする。勿論、根拠もないし、欲しい答えかどうかも分からない。
けど、なんとなく、そんな気がする――――
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