ⅩⅩⅩⅢ - 人皆旅人

◆ Ⅲ - ⅳ ◆ ⅩⅩⅩ ◆

「ひゅー。随分いい女が出たな。是非お相手して欲しいもんだ」
「ボスも趣味が悪い。ああいう気の強そうな女はやめた方がいいぜ」
「中身が趣味じゃねぇな。ビアンキの方がいい女だ」
「んーオレにはちょっと分かんねーな。野球でいいや」
「そういう話じゃねぇんだよ野球馬鹿」
「……って、二人共、もう大丈夫なの!?」
「おう!」
「勿論っス十代目!」
「……で、でも、あの、オーバーニーのブーツのむっちり具合が萌え」
「死ね。咬み殺す」

 そんな、オレに吐いたのか、ヤツに吐いたのか分からない言葉。
 それを言い終えた瞬間にはもう、彼の体はヤツに向かって舞っていた。
 そして――轟音。

「――――っと! たく、あの中坊、短気っつーかなんつーか!」
「銃は効きそうにねぇな。ボス、オレは援護に回る」
「油断するなよロマーリオ! おい、トキ、ツナ、大丈夫か!?」
「ダメっぽい……です」
「もう嫌だあぁぁぁぁ」

 轟音……つまりは爆発が起こった訳なのだが、いやはや、もう駄目だ。

 キャバッローネ組も、野球少年も爆弾少年も、見事回避できたようなのだが、萌え萌え言ってたオレ。そして、そんなオレを叱咤していたツナは見事に反応が送れ爆風で飛ばされてしまい、一発撃沈。

 幸い、意識の無い了平兄さんは、ディーノさんの小脇に抱えられていたので、大事無いようだが、二人ばかりいるヘタレは、なんかもう色々ダメだった。

「ツナは死ぬ気になれるじゃあん、頑張れよぉ」
「死ぬ気疲れるんだぞ! もう二発も食らってんだぞ!」
「お前がやらねば誰がやる! 行けツナチュウ!」
「あのなあ……っ!!」
「まあ、何もないってのも不安だな……ほら、俺の銃貸してやる、イタリアで撃ち方教えただろ? あの通りやれば、まず問題はねぇはずだ。気張れよトキ坊。ボンゴレ十代目死なせたらスモーキン・ボムが黙ってねぇと思うぜ」

『それじゃあ、そいつ共々守ってやんな』キラッ。

 そんな事を言って颯爽と去っていくロマーリオさん。
 先に行ったディーノさんの後ろに付く様な形で、銃を構えていた。

 眼前で繰り広げられる、閣下や山さん、ごっ君リボーン、そこにディーノさん達も参戦と、ヤツとの攻防戦は、ぶっちゃけ凄まじい。響く爆音は小さいのがごっ君で、大きいのがヤツの放つ赤い閃光によるものだ。

 山さんと閣下は、主に接近して斬りつけ(何時の間に山さんってばマイバッド入手したのだ)殴りつけ……けれど、壁でもあるのか、ヤツの手前で弾かれては飛んでいる。

 と言うか……誰のどの攻撃も効いていないようだった。

 そんな中で、オレの手には、よく映画等で見る自動式拳銃。
 傍にはツナと了平兄さん……これで二人を守れとな。

「お……オレ、頑張っちゃうぜ……!」

 色んなものが空回っているのは重々承知だ。
 が、オレだって成人してる身。
 子供を守らずして何が社会人と言えようか!

「む、無茶するなよ時! こん中で一番普通なの時なんだからな!」
「だ、大丈夫、大丈夫……撃ち方教わったから……!」
「ならば、撃ってみたまえ逸脱者(イレギュラー)」

 視界が陰った。
 見上げれば、紺色の空を背景に浮かぶ、ヤツ。
 目を見開くのが定石な行動だろう。

「時――――!」
「ほら、撃つといい、至近距離だ。人間ならば、死ぬ」
「――――くそっ! 時! 十代目!」

 叫ぶごっ君やら山さんやらの声が間近で響くが、何故か遠い。

 これが恐怖というものなのか?

 薄く笑っている既にオレの顔とは似ても似つかない、ヤツの顔が怖い。
 銃を握る手が酷く小刻みに揺れる……震える。
 息をしているのかどうかすら分からない。
 意識から感覚が消える。
 意識から音が消える。

 ヤツの赤い眼が細められて――――

「刻まれるモノは君の『存在』、賭けるべき代償は君の『記憶』、要求される機能は『強さ』、与えたらん魂は『秩序』、生きるか死ぬか、これは君が選ぶ運命の先にあるものだ。選んだ場合は与えよう。選ばぬ場合は、得てして、死ね」

 ――――いずれ合うその時まで、精々、絆を磨くといい。

 認識するまでの間……五秒もなかったはずだ。

「………………消え……た」

 そう消えた。

 てっきり、殺されるだろうと思ったら、ヤツはただ何かを言っただけ。
 訳の分からない事を、長ったらしくダラダラと……それで終わり。

「お、オレ……生きてた」
「はあ……たく、びびらせやがって」
「時! 大丈夫か!?」

 山さんが駆けて来て、オレの肩を揺さぶった。
 そこでやっと緊張が解けたのか、はっと、意識が鮮明になる。

「ご、ごめん! オレ固まってた! ツナ達大丈夫か!?」

 振り返って、傍にいる二人を確認する。
 先の戦闘での傷等はあるが、そこ以外に変わりはない。良かった。

 まったく……なんという失態だ。銃を渡されたのはツナ達を守る為だ。だというのに、オレは動けずに固まっていた。ヤツが何もせず去ってくれたから良かったものの、もし攻撃されていたら……と思うとぞっとする。

「何謝ってんだよ! オレは平気だし……それに謝る事なんてないじゃないかっ? あいつが狙ってるのは時なんだからさっ!」
「いやでも、ツナ達を守る為にこの銃は渡されたのであって……!」
「自分の身を守る為もある、って事を忘れすぎだなトキは」
「あ……ツナんとこの小父さん」
「“お兄さん”なっ」
「オッサンだろうが、気どんな、跳ね馬」

 ツナと問答しかける所で、頭の上へと重さがかかった。
 振り向きながら見上げれば、金色の髪が目に入る。
 重さはディーノさんの手だったようだ。

 ちなみに獄寺氏は、さっそく一服吸っていた。
 爽やかな山さんとはえらい違いだ。

****************************** Next Page.

BACK   NEXT
TOP    SITE TOP