◆ Ⅴ - ⅱ ◆
「――――あの、その。今からオレ、質問するから、冗談抜きで、真面目に答えてくれますか……?」
「え? あ……ああうん。オレ達で答えられる範囲なら……」
「ボンゴレの事は聞くんじゃねぇぞ」
目の前にいるボンゴレズ三人に問うオレ。その問いに答えたのは一番話が通じそうな綱吉さん似の少年で、続いて牽制をかけてきたのは、言わずもがな、先ほどオレとカーチェイス(?)を繰り広げた獄寺さん似の少年だ。ちなみにオレも、牽制を返すのは忘れずに眼をくれてやった。
それにしてもお前悠長だな。
とでも言われそうな、やり取りだが、考えても見て欲しい。さして異質な事のなかった人生を送ってきた人間に対して(人類の大多数がそうだろうが)この状況下で一体何をどうしろと言うのか。寧ろどうしたらいいのか、全人類、もしくはオタク仲間にでも言及したい。……あとで電話で聞いてみよう。
とりあえず今は、目の前の彼らに話を聞くのが先だ。
「えっと……じゃあ、まずは、皆さんの名前を……」
最初がそれか。
いやいや、名前と言うのは大事だ。知らない状態のままだと『おい』等の不躾な呼び方になってしまう。なので聞いた次第なんだけれど、その問いに返ってきたのは“名前”と言う答えではなく、容赦ない“非日常”アタックによる大打撃だった。
「馬鹿かお前。さっき自分で言ってたじゃねぇか」
オウ、マイ、ゴッド。
天を仰ぐ米国人の気持ちが良く分かる衝撃を食らった。
獄寺さん似の馬鹿ヤロウが言う“さっき”とは、つまり漫画の『REBORN!』の登場人物の名前を、彼らに向かって言っていた時だろう。でも悲しいかな、オレの意思はあくまで『あはは、似てるね』と言う感じであって、決して本人だと思っていった訳ではないのであって……容赦ない答えが目に染みるっ。
「……あの……じゃあ……沢田綱吉?」
涙ちょちょ切れつつの、認めたくない答えを言う。
言えば、こくり、と頷く茶髪の少年。
頷いちゃうそれだけで、オレの心境天変地異。
「……山本武……?」
続けざま、沢田さんの後ろにいる、黒髪短髪の彼に同じ行為をする。そうすれば「おう!」と爽やか笑顔と共に返事を返す少年。「何で知られてるんだろうな?」とか、なんとか王子顔負けに言っているが、オレにはその爽やかさすら胸に痛い。
「……じゃあ……獄寺隼人……?」
違うと言え、と眼を飛ばせば、おう、と眼を返すタコソンさん。
仏頂面が憎い。八つ当たりたい。イケメンなんて滅んでしまえばいい。
さあ、どうするこの状況下。
諦めきれずに、冗談抜きで? と問えば、帰ってくるのは『No』ではなく『Yes』の方。こくり、と頷く彼らと、当たり前だ、の言葉を聞いて、否が応でも、この異常な状況が現実であるのを認識しなくてはいかんらしい。……ベターな行動で頬をつまんでみたが、あはは、ああそうさ、痛かったよっ。
もう嫌だ! な感じで、泣きそうな顔のまま、最後の砦たる隣の少女二人にも、少しの希望を抱きながら名前を尋ねにかかる。いや既に、言い当てる、の方が合っている気がしてきたが、認めるものかっ。
「じゃ、じゃあ、じゃあ、そっちのショートの子は、笹川京子ちゃんだったりして、そっちのポニーテールの子は、三浦ハルちゃん……だったり? いや勿論、間違ってたら間違ってるって言ってくれて構わな」
「はひっ! なんで私の名前知っているんですか!?」
「あ、はい、初めまして笹川京子です」
ああ、可愛いな。フィギュアあったら買うな。いやいや、酷い現実逃避だな我ながら。ああでもフィギュアが喋る程度だったら許容範囲内だったかもしれないな。髪伸びる人形とかいるし、それくらいなら……って、悲しい衝撃過ぎて駄目だオレ。空想ってなんだっけ……。
空を仰いで固まり数秒。
やけのやんぱち、って素晴らしいんだね。と軽く悟って、手当たり次第に『REBORN!』の知識をぶちまけて行く事にした。覚悟しろ、オタク舐めんなよ。ビシッっと、タコソンの目の前に指を付き立てれば、タコソンだけじゃなく他の皆まで突然覚醒したオレに目を見張る。
よく聞けタコソン(獄寺さん似の少年)!
「獄寺隼人。身長は自称一七二センチ、体重五十四キロ、九月九日生まれの乙女座B型。故郷はイタリアで、クォーター。趣味はピアノ。通り名はスモーキン・ボム。また子供の頃のトラウマから姉のビアンキを直視できない、と言う、ちょっと同情する要素がある!」
気持ちがいい……ふふ見ろ、タコソンがまるで茹でダコの様だ、ふふ。
ななななな、なんで身長の事まで、とか言ってどもっていやがるZE。
オレの優しさに感謝しろ、タコソン。
次の目標は山さんだ。
これまたビシッと、真実をお知らせします。
「山本武。身長一七七センチ、体重六十三キロ。四月二十四日生まれの牡牛座O型。家は寿司屋、竹寿司を営み、父親の名は剛さん。根っからの野球好きで、将来の夢はプロ野球選手。好きな食べ物は、寿司、好きな楽器は、和太鼓、好きな飲み物は、牛乳。日々の日課は、バッティングセンター通いと言う、生粋の野球少年だ!」
うっは! と、満面の笑顔で、スッゲーな! とか言ってくれる。
ありがとう少年……ふふ。
なんか見た目は子供頭脳は大人なメガネっ子の様な気分になってきた。
そしてその勢いのまま、ツナの方へと顔を向ける。
が。
『オレ何言われんの?! オレ何言われんの!?』
……って顔でびくびくしてる。
……なんか小動物苛めてる気分だ。
そして、見詰め合う事、数秒。
「……沢田綱吉、通称ツナ、十月十四日生まれの天秤A型。身長一五七センチ、体重四十六.五キロ。ボンゴレ十代目になんてなりたく……」
そこで黙るオレに、どんどん顔色が悪くなっていく綱吉さん。
「……うん、ツナはこの辺にしとくよ。うん、苦労、してるもんな……」
オレ自重、と柔らかに微笑んでやれば、涙と殺気と、悲しい突っ込みが飛んできちまいました、あはは。そして勿論、女の子達もいる訳だが、そこはやっぱ相手はレディー。言わないよ宣言をすれば、はひはひ言いながらハルちゃんが安心して……って、焦ってたんだね、ゴメンね、そうだよね、体重言ってたしね、最悪だねオレ。もうそこは無かった事にしようと思うよ。なので……残りの個人情報だだ漏らす餌食は誰だ?
牛……ランボさんと――――
「リボーンは……」
顔を向ければ「言いたかったら言っていいぞアホ牛の事はな」とまあ素敵に銃口がおでこに、地味に痛い。そして絶対に言わないと誓う。そもそもあんたの事は謎過ぎるコス…………とりあえずは、なんか皆驚いてるので、オレ満足。そして色々、心晴れ晴れ。
兎にも角にも『まあ生きてりゃ、こういう不思議な体験もあるよね』ってな感じで、もうどうでもいいか、と結構重要であろう筈の事を丸投げして、そんな事より(そんな事で済ます話ではない筈だけれど)気になる事があったのでツナへと顔を向けなおす(優先順位ってなんだっけ?)。
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