◆ Ⅴ - ⅲ ◆
「所で、その……綱吉さん? 身長の……一五七センチって、あれ違うよね? 明らかにオレと同じ目線だし……もしかして高校生?」
そう、さっき言った身長の事が疑問でならない(優先順位ってなんだっけか、ははは)。オレの身長は一六六センチある。つまり、オレの目線と綱吉氏の目線が見事に似たような位置にあるのだから、綱吉氏の身長も自ずとその位だろう。どうでもいい? どうでもいい平凡って凄いんだよ。
「え? いやそんな事ないよ(どうでもいい平凡の凄さがではなく)。この間測ったばっかりだし……ちなみに、高校生でもないよ……?」
それに今度はオレが、え? そんなバナナ、失礼、そんな馬鹿な。じゃあオレが縮んだ? とか自分で言ってから、ないない、とまた自己完結。
「確かにオレ成長期過ぎちゃったけど、まだ縮む年齢じゃないし。……うん、まだ微妙に伸びる希望はあるけれど縮むにはまだ早いっス」
そう、二十歳になったと言えど、希望はまだある。
一七〇は欲しいんだオレ。
「お前二十歳なのか?」
右肩からの質問。
なんで分かった、こん畜生……って、ああ、ごめんなさい。銃向けないで下さい。銃口ぐりぐりしないで下さい。銃刀法違反をガチ無視しないでください。
「俺は読心術が使えるんだ。何せ最強のヒットマンだからな」
それ理由になってないけど、そうでした。
そんな桁外れな能力を秘めていましたね、旦那は。
「そうでした……で、そうです。二十歳です。お酒もタバコもいけちゃう歳ですが、下戸な上に、タバコは苦手です」
「タコソン尊敬するっス」と、冗談交じりに言えば、見ろ、タコソンがまるで茹で以下略。……と、タコソンが茹でダコになりながらオレへと物申す。おうおう、ちこう寄れ。
「お前、年齢サバ読むならもっとましな数字にしろよ。二十とか……どっから、どう見ても無理があんだろう。贔屓目に見てもありえねぇ……」
失礼な!
「それじゃ何か?! オレは二十歳以上に見えるってか!? コレでもオレは生まれてこの方、二十年、年相応に見られて生きてきたんだぞ!!」
まったく……刺身にして食ってやろうか、このタコ畜生め。
「お前身長いくつだ?」
なんですか、藪からスティックに……はい、はい、ごめんなさいもうしません。だから銃を以下略。でも平凡への逃避はさせて頂く。己の出来うる限りの平凡を撒き散らさせて頂(以下銃撃による強制中断)。
「一六六センチです……言っときますけど正確ですよ。オレもこの間測ったばっかりですし……そうそう、簡単に縮まないでしょう」
身体検査は大事なんだよ。でも、なんでか皆さん納得いかないようで、んん? と、んん? と、疑りの目を向けてきまして、時さんショック。二十歳のわりに小さいってか。何だ君ら。日本人のタッパの低さ馬鹿にすんなよ。ツナだって足短い言われてたじゃないか。同じ痛みが分かるのだから、そういう目で人を見(以下銃撃による強制中断)。
「……リ、リボーン。なんかオレ、さっぱり分かんないんだけど?」
綱吉君が周りにクエスチョンマーク大量生産してる。
オレも同じだよ、さっぱりだよ(プラスで右肩の人が怖いよ)。
しかし、そんな状況でも、やっぱりリボーン。
すかさず状況を動かそうとする。
「京子、ハル、鏡持ってねぇか? なるべくデカイのがいいな」
鏡よ鏡よ屈みます?
この状況を何とかしてくれるんではなかったのか?
『訳が分からない』ってな顔をしているオレやツナを気にしつつハルちゃんがパスポート程の大きさの鏡を取り出しリボーンに渡す。流石女の子、鏡は常時持ってるもんらしい。……てオレが言うとなんか変だ。
そしてオレに鏡を渡し、自分の顔見てみろって言う、リボーン。そんなにオレの顔は変か。けれど一応、何かと凄いちびっ子殺し屋さんなので、
その言葉に、もやもやしながらも、己の顔を確認する為に鏡を覗き込む。
そしての、沈黙。
「わ、この鏡ミステリー」
鏡の中にいるのは確かにオレだ。そりゃあ、覗き込んでるのがオレなんだから、オレ以外が映ると軽くホラーだ。だがしかし、オレであって今のオレじゃないと言うべきか。
髪の毛は黒のショート、前髪は右分け。
目も毎朝鏡でご対面する黒目の平凡目。
この辺は変わらない。
変わらないのだが、しかし、問題は別の所にある。
顔の造りだ。
かと言って、ものっ凄い美形になったとか、萌え耳猫耳が生えた、とかじゃない。若かりし頃の――そう、制服と言うものに身を包まれて、やんちゃしていた時分のオレの顔が写っている。おそらく中学生? その位の時だ。二十歳の、骨格がしっかりしてきた大人の顔じゃなくて、思春期では特有のあどけなさと、これまた特有のお肉の付き具合をしている。
「旦那……これは一体全体どういう事なんでしょか?」
なんかもう、だんだん感覚が麻痺してきた。
トンネルの向こうは不思議なギャグ世界でした、ってか?
誰しもが思うであろう事を思いながら冷静に応答すれば、そんなオレに対して、リボーンは若干の笑みを見せつつ、至極当然、と言う様に、非現実的な言葉を紡ぐ。
「お前の元の年齢は二十歳。なら理由なんて簡単だぞ。何かが作用して若返ったってだけだ。“ここ”じゃない“何処”かから来たお前なら別にそんくらい起きてもおかしくねぇだろ。……まあ、もっとも、お前の体に一体何が作用したのかは流石のオレにも分からねぇがな。世の中にだって不思議な事の一つや二つあった方が面白いだろ」
『否定したって始まらねぇぞ』……とこの状況を、いとも簡単に受け入れる、見た目ベビィのヒットマン。男前だなこのヤロウ。
ほら見たまえ、旦那があまりにも馬鹿な事言うから皆唖然としてるじゃないか。鳩が豆鉄砲食らったなんてもんじゃないぞ。雀がバズーカ食らった勢いですよ、これ。綱吉さんに抱えられてる子牛なんて見事に爆睡で現実逃避決め込んでやがるじゃないですか。
って、そういえばランボもいたんだった。
いやうん。この訳が分からない会話に入る気なんて、この小童にある訳がないんですけどね。ていうかオレも寝たい。狭苦しくて、ごちゃごちゃしてて、それでも大好きな物が山ほどある家に、今すぐ帰りたい。そしてギャルゲーやりたい。徹夜でRPG決め込むのも悪くない。
ああ、そう言えば、辺りが暗い。空も大分赤みがなくなって紺色に近くなってきてる。ちらほら小さな光も見えるな。足元の影も薄い。夜が来ているようだ。
……ああ、確かにこの現状はとても気になる。実に非現実的な状況なのでとても困る。だが京子ちゃん達もいる、何より彼らは一部物騒だがまだ中学生だ。別に夜を徘徊するのを止めはしないが、寧ろ共に楽しみたいが親御さんは心配するだろう。
つまりここはアレだ。
“微妙な成人”ではあるが、一応“成人”なのだから、それなりに青少年の、うんたらかんたら、には形だけでも貢献しとかなくては、いけないのであろうよ。そもそも、多分みんな帰る時間だろうさ(漫画読んだ限り結構みんな夕飯食べてるし)。
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