Ⅴ - 人皆旅人

◆ Ⅴ - ⅴ ◆

「――――諦めはついたか?」
「……ああ、いや、うん……割と人間って足掻くよね」
「諦めろ。だっせぇぞ」
「お、おいリボーンっ!」

 場所は並盛南駅。

 時刻は、九時か、十時か、その辺り。只今オレは、悲しみに打ちひしがれながらベンチで燃え尽き中だ。ちなみに観覧席(両サイド)には並盛ズが三人座ってオレを哀れんでいる。右肩からは哀れみ通り越して、見下しの視線を向けられているぜ。

 あの後、見事に諦めの悪い人間様を体現したオレは、その場から逃げるように駅へと走り、そして半ば無意識にオレが来たであろう駅方面への切符を買い、そのまま乗り込んだ。右肩にリボーンがずっといた様だったが彼は黙ったままだった。

 とりあえず、何駅先から来たのか、程度は記憶していたのが幸いして終点に行く必要性はなかったのだが、乗ったであろう数駅先の、更に数駅先へ行ってもオレの見知った町は無く、ならば、と並盛南へと引き返しても残念な事にオレの持つ乗車券に記された駅に着く事はなかった。

 その代わり出迎えたのは、“この世界”の住人である三人の少年。沢田綱吉と獄寺隼人と山本武。なんでもツナはオレを追いかけて、他の二人は少女二人を家へと帰した後に、オレと――1番はこちらだろうが――ツナを心配してここまで来たのだそうだ。

 ほんの少しだけ涙が出るかと思った。

 勿論心配されてではない、目の前にいる三人の少年の存在が、否応なくオレが今どの“世界”にいるのかを突きつけていて、本当に、世界で生きる上での“日常”という物の大きさが身に染みて分かった。

「なんかごめんな……こんなに遅くまで付き合わせて……」
「い、いいよ! ほらやっぱ、こんな……世界を移動しちゃった、とか? 普通はちょっと受け入れがたいって言うかっ。な、なぁ山本!?」
「ん? ああ、そうだよな。漫画じゃねぇんだから、ちょっとびっくりするよな。あ、んー……でもちょっと面白そうかもな!」
「よぉ野球馬鹿。空気読むって知ってるか?」
「ん? おいおい馬鹿にすんなよ! 空気ぐらいオレだって読めるぜ! いいか……こう、こう書いて……」

 はは、そうそう、『そら』に気道の『き』で『空気』……って。

「「そうじゃないだろっっっっ!!!!」」

 あはは、見事なツナとオレのシンクロ。

「ちょっと元気出た」
「安上がりでいいじゃねぇか」
「ですよねー」

 さて、とりあえず今日は野宿止めて宿を取るか。

「ごめんな四人とも、オレの所為でこんなに遅くまでふらふらさせて、PTAに殺されちゃうよな、本当ごめんな」
「いやそんな物騒な事はないけどっ」
「オレもう諦める事にするよ。それにほら、この世界ってオレの居た世界と大して変わんないっぽいし? ギャルゲーもアニメもマンガもあるし、とりあえず携帯も持ってきてるから、いざとなったら向こうとも連絡取れるかもだし、大丈夫、大丈夫、死にゃあしなけりゃ、大丈夫」
「コイツ随分、諦め良くなりましたね十代目」
「は、半分くらい、やけくそな気もするけどね」

 あっはは……当たり。

 だって駅乗っても駄目だったし、既にツナの“第六感”によるお告げを食らってたし、そして何より“駅員のお爺さん”がいなかったのも大いに関係している。

 ツナ達が来た後に、探し周ったり聞き回ったり、を手伝って貰ったが、やはりオレの見たお爺さんは何処にもいなかった。駅のホームにも駅の会社にも勤めておらず、それどころか駅員の皆さんは、そんなお爺さんを見た事などない、と言う。果ては、オレが降りた時間の駅の防犯カメラまでをも見せて貰ったのだが、これが困った事に、お爺さんどころかオレすらも写っておらず、その所為で本格的に潰れてしまった次第だ。

「ふぅ……とにかく四人とも色々とありがとう。もう、かなり遅いからさ送ってくよ。あと最後に良かったら、安宿を教えて貰えるとありがた……あ、やっぱいいや、ネカフェで豪遊してやる。遊んでやる。と言うわけで送って行くよ。青少年を送るのは大人の務」
「えっ? ちょ、ちょっと待って! オレ達送るって……その後どうすんの!? まさか君一人でここまで帰って来るなんて言わないよな!? 流石にそれは危ないだろ!? もう深夜なんだよ!? 変な人に攫われたらどうするんだよ!?」
「え? ……だってオレがその変な人」

 まさに。

「冗談言ってる場合じゃねぇんだよ。元が二十歳だかなんだか知らねぇがな、てめぇ今どう見てオレらと“同い年”なんだよ。それで十代目は心配なさってんだ。あんまりボケかましてっと今すぐ果たすぞ」
「…………」

 あれ、その身の安全ってオレのだよね? 何この優しさを突き付けれてるのに拭い様のない危機感。いっそタコソンさんに発破されそうな感?

 いやいや、待て、そうか、オレ今、中学生くらいなのか。だったら、根本からまずいかもしれないのではないか? 第一に、中学生如きに宿貸してくれる大人なんていない。第二に、一人で生きていくとか、ちょっと無謀。確実に施設行き決定。更には下手すると、攫われて体ばらされて、意気のいい臓物をそこかしこに売られて、オレ南無阿弥陀仏。

「ヘイ、ヒットマン! 一万円くらいでオレのボディーガードやら」
「安い」
「ですよね!」

 問答無用の消音機付きのオートマチックが憎い。

 ああ、まずい。非常にまずい。どうせなら身体状態そのまま世界移動してくれりゃ良かったのに、なんといういらないオプション。まだ若返りとかいらねぇよ、オレ二十代発進した所だよ。

「如何したものか……」

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